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2020年 2月

がっかりだった安倍首相会見

2020/02/29

年に一度、オリンピック年でもある閏年だけにある今日229日、固唾をのんで見守った午後6時からの安倍首相の記者会見でしたが、私が期待して注視した乳幼児590万人については全く触れることはありませんでした。かろうじて学童保育所と小さい子どものいる家庭に対して、政府だけでは果たせない課題だからと懇願しただけでした。

ご存知でしょうか。厚生労働省は225日(火)の時点で、早くもたったA4一枚の通知を都道府県、政令指定都市および中核市の主管局課あてに流しています。その内容は驚くべきものでした。要するに新型コロナウイルスで保育士が感染の疑いなどで休職した場合に必要な保育士数が最低基準を下回っても問題としませんという内容でした。私は2重の意味で怒りが込み上げてきました。どうしてこんな通知が出せるのでしょうか。行政が最初から何もしないと宣言していいのでしょうか。大変な時だからこそ国民をサポートするのが、税金で働いる国家公務員の矜持ではなかったのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症の発生に伴う保育所等の人員基準の取扱いについて

 

一つ目の怒り。厚生労働省はこれまで、保育園に対して諸外国のような「標準基準」を示すことは決してありませんでした。全く「サイテー」でしかない最低基準を長い間一度も見直さず、「0歳の赤ちゃんなら3人、1〜2歳なら6人、3歳なら20人、4歳5歳なら合わせて30人、保育士一人で保育できるでしょ」というのが保育士数です。しかも四捨五入などで、たとえば4歳5歳は46人いないと2人になりません。もし小学校なら切り上げなので31人になれば2学級で教員が2人になります。ついでに説明しておくと「赤ちゃんがハイハイして食事してお昼寝する面積は畳2枚あれば十分だよね」というのが面積の最低基準です。

このように、あまりにも少ない保育士数であるにも関わらず、今回のような緊急事態においてさえ「下回っても構わない」と通知一本でこの事態をすり抜けようとしているようにしか見えません。一時的にそうなっても仕方ないが、待ってください、その後、別の手当てを考えます、ならわかりますが。休校中の学校の先生が学童に応援に行ったり、保育士の資格があれば保育園の支援に回るなどできるでしょうに。厚労省と文科省が連携することはないでしょうが。

第二に「違うでしょ、逆でしょ」と言いたくなります。普段はともかく、このような時こそ最低な基準を「下回ってはいけない」と踏ん張って欲しい。なぜ逆なんでしょうか。そこが全くわからない。財政的あるいは人的拡充が必要な事態なのに、何もできませんから最低基準を守れなくてもとやかく言いません、なんとか頑張ってください。これは行政の任務放棄ではないでしょうか。これが子どもの最善の利益を謳っている子どもの権利条約を批准した先進国で経済大国のすることなのでしょうか。もし、通知のような事態が生じたとき、保育園内で事故を生じさせるわけにはいきませんから、私は最低基準を守りたいと思います。

未知の課題に立ち向かうには

2020/02/28

園だより3月号 巻頭言より

◆自然の脅威に立ち向かうために

園庭がないことが大きな課題だった千代田せいが保育園が、最後の1ヶ月を迎えます。最後に控えていた課題が、海外からやってきたウイルスだなんて、誰が想像できたでしょう。園庭がないことは目に見えますが、ウイルスは目に見えません。しかも制圧するための手段はまだ開発中で、日本中、今のところ防戦一方。早くこのような状況が改善することを願わずにはいられません。

昨年の夏は気候変動で台風が巨大化、荒川の氾濫が大きなリスクであることを思い起こせば、マクロの世界からミクロの世界まで、自然の脅威は人類に新しい難題を次々と突きつけていることになります。保育園からすると、たくさんの家族が集まって成立する園生活を安定化させるだけでも、色々な配慮があるので、その上に新しい色々な問題が襲ってくると、その対応に振り回されてしまいます。

◆これからの時代はもっと厳しい

しかし、これからの時代はすでにそれが当たり前になっていくのかもしれません。新しい危機に対して正しく対処するためには、正確な状況認識が欠かせません。できるだけ早い段階から、近い将来に対して複数の事態を想定できるといいのですが、それがなかなか難しい。過去の経験から楽観的に捉えるか悲観的に捉えるか。リスクが大きい時はできるだけ「最悪の事態」を想定しなさいと言われるのですが、あまり行きすぎると「危機を煽りすぎる」「大げさだ」と批判されます。ここも難しいところです。

◆発想の転換が必要に

園庭がないなら、地域を園庭にしてしまおう。それと同じ発想の転換を迫るのが、現在進行形の課題です。でも、どのように発想を転換したらいいのでしょう。多数の人が集まれない、身近な接触が不可能というのなら、それこそICT(インターネット・コミュニケーション・テクノロジー)の力を借りましょう。すでにホームページで写真や情報をアップしているように、それをうまく使ったり、行事で見てもらう予定だった作品について、動画で解説をつけたりしてもいいかもしれません。

◆足元を固めながら

いずれにしても、緊急事態に立ち向かうには、強い意識と忍耐力と復元力(へこたれない力)が必要です。そして、その基本は健康です。うちの職員が今朝「新型コロナウイルスに打ち勝つ唯一の特効薬があるんですよ。なんだと思いますか?それは睡眠です!」と元気に言っていました。誰だかお分かりですよね。確かに大事です。自己免疫力を高めること。それには良質の睡眠も欠かせませんから。このように足元を固めるのも、大事な発想の転換かもしれません。今年度最後の1ヶ月。新しい敵に負けないように、保護者の皆さんと一緒に力を合わせて立ち向かいましょう。

保育園と学童の職員を守ってほしい

2020/02/28

政府は全ての小中高校および特別支援学校の休校を決めました。幼稚園は?保育園は?認定こども園は? 厚生労働省は「保育園は休園なし」でした。ここに決定的な矛盾が露呈します。なぜでしょうか? こういうことです。

今日、萩生田光一文部科学相は「学校で万が一のことがあると集団感染し、患者クラスター(集団)になる可能性がある」と説明しました。では保育園には集団感染のリスクはないのでしょうか?保育園の数は小学校の数よりも多く、認可外を含めると小中学校よりも多いのです。子どもの数でみれば、0歳から5歳までの子どもの数と、小学校の全ての児童数は、少子化の影響で乳幼児6年間の方がちょっと少ないだけです。乳幼児の方も大切にして欲しいと思うのですが。

さらに、保育園は保護者が連れてきます。学校は子だけが校舎に入ります。病原体の持ち込みはどっちが多いのでしょうか。確かに小中高校生の方が活動範囲が広い分、病原体に接触する率は高いとは言えるでしょう。集団感染を防ぐためなら、保育所に対して、もう少しバックアップがあってもいいのではないでしょうか。感染を防ぐためにどうするかという対策で学校を休校にするのはいいのですが、働いている親にとっては、保育所は必須ですから、保育園を休園しないのはいいのです。ただ、保育園にとっては「どう防ぐか」の次元を超えて「感染になったらどうするか」のフェーズに入っており、さらに「職員が感染したらどうするのか」の課題に一気に突入せざるを得ないのですから、その時のバックアップ体制はどうなるのかを知りたいのです。

確かに福祉は社会のセーフティネットです。日本国憲法の三大基本原理の一つ「基本的人権尊重」を実質化している仕組みの一つも福祉です。保育園は乳幼児の児童福祉を増進させている役割を担っています。学童も保育園も厚生労働省が所管なのです。学童の職員や保育士の方が、学校に比べて子どもと濃厚な接触が多いわけですから、もし保育士が感染したら、どうなるのでしょうか。どうやって事業を継続していくのでしょうか?

なぜ成長展を一旦中止したのか

2020/02/26

◆この2週間の「重要な時期」を重視

成長展は入園説明会や保護者会のような「関係者のみの一定数に限定された行事」か、それとも「多数が集まる行事」か?この境目をめぐる判断を迫られた結果「今(この2週間)が極めて重要な時期」であることを加味して判断しました。成長展の目的は子どもの育ちを保護者の皆さんにお伝えすることですが、どうしても、このタイミングでなければならないと思えないので一旦、中止して別の方法でお伝えすることにしました。

◆消えた「分散参観」プラン

少し裏舞台をお話しすると、政府の方針を確認して昨日25日に用意したプランは、2部制にして分散して参観してもらう方法への改善でした。その案を念頭において千代田区に相談し、藤森統括園長とも話し合い、3グループに分けて1時間ごとに入れ替わる方法を検討しました。同じ頃に千代田区教育委員会が昨日25日に決まったらしい「延期または中止の判断基準」がメールで届きました。基準が明確になったので、判断がしやすくなったのです。

◆すでに市中に潜伏しているかも

一旦、中止の判断のために「今が極めて重要な時期」であることを加味したのは、次のように考えたからです。この2週間で市中感染を遮断することが重要な時期だからです。この病原体が見つかっている場所は、人の人体からだけです。肺炎が悪化して重症化している患者さんからです。不幸にして亡くなった方は高齢で何らかの疾患を持っている方が多いのは報道されている通りです。そこで想像していただきたいのですが、このウイルスは、疾患を持っていて高齢者だけを狙っているのでしょうか?そんなことはなく、誰にでも公平に満遍なく多くの人にすでにうつっていると考えた方が自然かもしれません。

◆保育士が罹患のニュースに注目

ただ症状が風邪程度で治ってしまっている方がたくさんいるのでしょう。さらに症状も出さない不顕性の感染者が元気に生活しているのかもしれません。検査されていないので、どれくらいに広がっているのかが実際にわからないのです。保育園の保育士さんが罹患したと報道されています。保育園関係者から「陽性」が出ると、深刻な自体が進行します。保育園休園になるからです。

◆確実なのは、これから増えること

ただ、はっきりしているのは、今は入り口であり、確実に今後増えるのです。不確かなのは「急か、ゆっくりか」です。政府は増えるのは仕方がないから、せめてゆっくりと増えて時間を稼ぎ、その間に医療体制を充実させたいと言っています。気温が上がると感染力が弱まるようなウイルスであってほしいのですが。

成長展の展示の仕方はまた考えてお伝えしますが、それとは別に、いま日本中で起きている新型コロナウイルス対応は、これからの世界をサバイバルしていくときの、絶好のシミュレーション学習になります。まず、この病原体の対策の判断が2週間遅れてしまいました。いつになったら、病院が民間の会社に検査依頼できるようになるのでしょうか。

◆オフピークはいつか?

もしかすると、こうイメージしないといけないのかもしれません。数ヶ月後に特効薬が用意され、簡易検査キットが一般の病院に配備されている状態になる。予防接種も開発されるでしょう。そうなると多くの国民は一安心です。でも、それは今のインフルエンザのようになると言うことです。そして、時が経てば、誰もが抗体を持つまで蔓延することになります。そうなった時に初めて、今あるインフルエンザの方が罹患率も致死率も高いことに気づき、どうして昨年は、コロナにあんなに恐れたんだろうと振り返ることになるのかもしれません。

◆メソニエ局長は「世界的な大流行が近い」

しかし、今は違います。まだ特効薬もありません。一般の病院の医師が診断を下す手段がなく、私たちは症状が出ても4日間自宅で様子をみることになりました。アメリカの疾病対策センター(CDC)のメソニエ局長は「世界的な大流行が近づいている」と明言しました。私は211日の時点で「剣ヶ峰」だと思ったのですが、やはりその後に感染源のわからない患者が続発して今に至っています。昨日になって政府は「分水嶺」だと言っていますが、今の数字は氷山の一角、多分10倍以上の数字の人々が生活していると思った方がいいと、私は想像しています。間違っていることを願いますが。

2月29日の成長展は一旦、中止します

2020/02/26

新型コロナウイルスで昨日25日に政府が発表した対策基本方針を受けて、千代田区教育委員会が同日、行事の判断基準を示しました。その結果、29日の成長展は「多数が参加する行事」にあたること、また政府が「今が極めて重要な時期」との認識を強く示していることを踏まえ、残念ですが、一旦中止することになりました。

成長展に代わる日時と展示・参観の方法は改めてお伝えします。

20200226成長展は中止します

上記のお知らせを本日、配布します。

 

第4回 マムズ・サロンより

2020/02/25

「これからの保育園入園を控えているため、それに向けての生活リズムの心構えができた。夜泣きのタイミングやその改善方法が知れてよかった。常夜灯NGがわかったのは、とてもよかった」

今日の参加者の感想です。保育園生活が始まるというのは、育児休業中の保護者の方も仕事が始まることになるので、子どもの生活リズムも変わってきます。今よりも朝起きるのが早くなり、仕事から帰ってきて晩御飯を食べさせてお風呂に入って、8時半にはお布団に入って電気を消して・・そうした生活リズムを作っていくために必要な準備がとっても大切な時期です。それをどのようなことから始めたらいいのか。今回はその「逆算マネジメント」のコツを中心に、ポイントをまとめるような会になりました。

理想の睡眠サイクルになるまでのポイントを、私なりに、まとめてみました。

(1)夜の睡眠は10時間から11時間が必要。

これは0歳から小学生になるまで同じです。夜の睡眠時間を10時間確保しようとしたら、朝7時に起きても夜9時には寝ないと確保できません。小学校は朝8時15分に着席していることをイメージすると、歩いていく通学時間を考えれば7時何分に家をでる、すると何時にトイレを済ませ、何時に食事を済ませ、何時に起きないと間に合わないか。小学生になるまでを見通して、今から生活リズムを整えるようにしましょう。

(2)逆算マネジメントで生活リズムを作ろう。

朝起きる時間が決まれば、そこから11時間の睡眠を確保するには何時に寝る必要があるか。夜8時か8時半か9時か?そこから逆算すると、何時に布団に入るか。ツンツン・ごろこごろ・心のスキンシップの時間を考えて何時に食事を済ませるか。何時に夕食の準備を始めるか。何時に保育園にお迎えに行くか。

(3)お昼寝の時間を補って11時間にするのではない。

夜の睡眠は特別であり、それ自体として確保しないといけない。足して11時間になればいいというものではない。夜の睡眠が確保できるように、お昼寝は調整すること。

(4)お昼寝を短くして夜が良く寝るならそれでいい。

3歳ぐらいまではお昼寝をしても夜ちゃんと11時間寝ることができる。4歳以降から昼寝が長過ぎると夜の睡眠が短くなってしまうリズムの崩れがあるなら、お昼寝は短く、あるいは無くしたほうがいい。そこには個人差があるから、一概に何歳だからとか何時間だからということはできない。

(5)日本人は世界の中でも睡眠時間が短い。

子どもも短い。子どもがよく寝ている国は北欧とニュージーランド。北欧は学力も高い。睡眠と生活リズムと学力の高さにも相関関係が見出せる。中学生も夜9時には寝ている。単に勉強時間が長ければ学力が良くなるという関係は疑わしい。

(6)夜の睡眠の質が高いと、昼間の活動や学びの質も良くなる。

学校での学習の質が高くなり、脳の集中力とか、主体的に考えることなどの質と影響する。

(7)睡眠には質の違いがある。

最初の深い眠り(ノンレム睡眠)の時に、成長ホルモンなどが出る。明かりの影響が最初の眠りの質を貶める。睡眠は単なる休憩ではない。脳を育て、知識を定着させ、神経細胞を整えるなど、多様な役割がある。

(8)夜の睡眠をよくするには24時間の生活リズムが大事。

午前中に活発に活動する。脳は10時から12時にもっとも活動できる。夕方から脳は眠りたいタイミングに入る。

(9)寝る部屋は基本、真っ暗にすること。

常夜灯は不要。夜起きて何かするときだけ。エアコンや空気清浄機の電源の点灯や、加湿器のほの赤い灯などもタオルをかけて口のところだけ開けて使う。

(10)眠るホルモンの分泌を妨げる青白の光

昔のブラウン管テレビと今のとは光の性質が異なり、青色や白色が多いので子どもの脳は、それに依存するようになり、覚醒させてしまう。その光の影響はテレビよりもスマホ、スマホよりもタブレットの方が影響は大きい。

(11)小児科学会は、いつであろうと2歳まではテレビはNG。

これは世界の常識になっている。日本はいつの間にか忘れられているかも。もし見るなら親子で双方向性を保つように見ること。子どもが受動的に受け身で見るだけはよくない。

表現⑤ 子どもの内面世界を想像する楽しさ

2020/02/24

(写真は新宿せいが子ども園の成長展から )

◆もっと大切にしたい内面の表出

子どもの絵について、発達の段階を知っていることは、結果として見える描画発達のパターンを知っているに過ぎません。首が座り、頭をもたげることができ、寝返りができ、ずいばりかハイハイができ、人見知りが始まって、初語が出る頃に指差しがあって・・このような発達の特徴を学ぶことは大切でも、それで終わったら、一人ひとりの心の動きに迫るものではありません。例えば「おすわりができたら、視線が高くなって見通しが良くなって、お座りをせがむようになる」という発達の特徴を知ると「どんな風に見えていて、それがいいと感じているんだろう」と、その子が見えている風景、その時の喜びを知りたい、共感したいと思うきっかけを得ることができるのです。人見知りで泣いたら、可哀想ではなく「おうちの人と他の人の区別がつくようになったんだな」と喜ぶことができます。それと同じことが子どもの絵にも言えます。

◆かかれた産物(作品)からだけではわからない

子どもの絵は、小さい時ほど何を描いているのかわかりません。ぐちゃぐちゃに見える線や点や色が「ママ」だったり「パパ」だったり、します。あるいは自動車やイチゴかもしれません。子どもが頭の中で思い描いていたものが、絵から想像できるとは限らないので、言葉が話せるようになっていて、側で先生が見たり聞いたりしていたら、それが何を描いていた「つもり」なのかを知ることができるかもしれません。そこが面白いと思いませんか。

そういう意味で、大人が描いた絵には、子どものような特徴は現れません。1歳から2歳ぐらいの子どもの線は出ません。一見子どもが描いたように見せて描いた絵であっても、子どもの絵のような無邪気さは出ません。ですから大人の絵はその文化の発達、文明の発達に位置づくのです。現代のメガネをかけている私たちは、そこから束縛を受けているのです。平安時代の絵巻や地図が遠近法になっていないから、今見ると不思議な感じがしたり、パウル・クレイの絵が子どもの描画のように描くために念密な計算と高度なスキルを必要としていることを想像してみてみましょう。

◆子どもの絵(結果)から見える過程

子どもの絵を出来栄えで見ないでください、とか他の子どもの絵と比較しないでくださいというのは、正確に言えば、子どもに絵を、そのように見ることは、そもそものできないことだということがお分かりいただけたでしょうか。何を描いているのかわからない、それが当たり前で、でもそこに歴然とある発達の特徴から想像できる子どもの身体的、精神的、社会的育ちを見て取ることができ、さらにその時に、子どもが何をどう感じて楽しんで描いたのか、そこに共感の眼差しを注いでいただきたいと願っています。子どもの絵はそこに至る成長の過程を雄弁に物語っているのです。

表現④子どもの絵をどう「みる」か

2020/02/23

今週末の「成長展」では、子どもの育ち(成長、発達)を見ていただきますが、それを見るためには、「どのように見たら見えるのか」、二つの大切な視点をお話ししておきたいと思います。一つは発達です。もう一つは内面世界です。この二つはお互いに補い合う関係です。内面世界とは子どもの心の動きのことです。それも発達ですから、大きく捉えれば「育ち」を見てほしいということなのですが、二つに分けておいて、あとで一緒にしてみましょう。子どもの育ちは、目を開ければ「見える」というものではありません。目に見えるものを「見えるようにする」ことが必要なのです。では5領域の中から「表現」のところを説明しておきましょう。

◆自由画

成長展では、3種類の絵が展示されます。この1年間、1歳児クラス(ぐんぐん組)から幼児まで一人ひとりが「自由画」「人物画」「ぬりえ」を楽しんできました。その中で、まず「自由画」について取り上げます。子どもの「発達」と「内面世界」から自由画をどのように見てほしいと考えているか、ということです。

◆子どもの絵の意味について

大人が「私は絵を描いています」というと「趣味か仕事」と思われるでしょうが、子どもにとっての絵は、遊びであり、やりたいからやる何かです。子どもは絵をかくことが楽しいからかくのです。またほとんどの場合、見せるために描いていません。1歳児クラスのぐんぐんの子どもたちが、クレヨンやスタンプ、画用紙が目に入ると「やる〜」とやりたがります。楽しいからです。2歳児クラスのにこにこの子どもたちもそうです。お絵かきは大好きです。3歳児クラスのわいわい、4歳児クラスのらんらんの子どもたちも、いつも置いてあるイーゼルにいつも何かが描かれています。描いた絵は楽しかったこと、これから体験するであろうこと、色々な表象が絵になっています。いつ何を描いてもいいのですが、いつ行っても何かが描かれています。これが自由画です。なんでもいいのです。その時々に描きたくなってかく。他の遊びや運動と同じように、やりたいからやるのです。

◆発達を表す絵

では、成長展でみていただきたいのは、子どもの絵はまず「発達を表す」面があるということです。「発達を表す」というのは、どういうことでしょうか。子どもが、何か(クレヨンとかサインペンとか)を握られるようになって、手を動かして紙にその軌跡を残すことができるようになったら、その軌跡には発達(年齢)に応じた特徴が現れるという意味です。心の成長と身体の成長が合わさった過程と結果が、その子の絵です。成長展では、その発達に応じた特徴を、まず感じとっていただきたいのです。

◆具体的な何かを描いたわけではない絵

子どもの絵は、その時に何かをかこうと考えて描いたとは限りません。思い描いていることがあって描いたとも限りません。腕を動かしたら線が出た、色が見えた「あれ、なんだろう、面白い! もっとやってみよう」ということから、何度も何度もクレヨンがぐるぐる、ぐるぐる、ジグザグ、ジグザクと動いて、そうやって動かすことが楽しいのかもしれません。

何度も同じところをぐるぐると描いていたら、色は混ざって黒い色に近くなっていきます。見た目はきれいではなくなります。でも、それだけ、何度も何度も繰り返した時間を想像してみてください。それだけの筆圧をもって、動かした手の軌跡があることを考えてみてください。大人になって、そんなにのめり込む時間がありますか? それをやっている時の子どもの時間をイメージしてみてほしいのです。こうしたい、と思ってやっても、ちっともそうならないと思って、どうしたらそうなるだろうと思ってやった子がいるかもしれません。

これを絵の具でもやります。すると大抵は紙が破れてしまいます。画用紙ならまだいいのですが、大きな模造紙で何人もがやると、水分が多くなって破れてしまったりします。それも面白い作品として飾ることもあります。

◆身体的は発達から可能になっていく線

「あ、横の線から縦の線が増えきたから、手首と腕を上下に動かせるようになってきたな」とか、「細い線が動いてきて、最初のところに戻ってきて、つながっている。円ができている」とか、「長い線を横に一本引いた水平線や地平線がある」とか、「丸に点々が見えるから顔を描いたのかな」、あるいは「丸い顔のから手や足の線が出ているから頭足人(頭足画)だな」・・・こうした見方を、私たち保育士は学んできています。子どもの運動と心理の面から描画に特徴があるのです。それが現れたということが、育ちの喜びになるのです。例えば、子どもが長い線を横にひくことは、とても難しいことを私たちは知っているからです。

偶然にそのような形になる段階から、だんだんそれらしい写実性を感じるようになってくると、家の中は見えないはずだけど中を描いているレントゲン画(透明画)、街の家と道路が自分が見てきたように並ぶ擬展開図など、いろいろな名称と共に、子どもの空間認知の特徴も現れてきます。

絵の研究者や心理学者が、子どもの絵の発達の特徴として「〇〇期」と名前をつけて説明していることがあります。例えば「なぐりがき」のように見えるから「なぐりがき期」のように、です。でも、そういう風にだけ見てしまったら、その絵をかいて楽しんでいた瞬間の子どもの心の動きを想像しようと思わなくなってしまうかもしれません。ですから、私はピアジェが命名したような、そのような〇〇期といった発達心理学的な分類を知っていても悪くはないのですが、それに引っ張られてしまって、その特徴を見出そうとして絵を見てしまう、という弊害を心配します。

子どもの経験の意味を考えた1週間

2020/02/22

今週を振り返ってみると、来園者の多かった1週間でした。そして来園者があったことで、いろいろなことに気づくことがありました。保健福祉オンブスパーソンの来園があった月曜日は、子どもが遊び込んでいる状態について再確認できました。アーティストの青木尚哉さんらが来園した火曜日は、身体表現としてのアートのもつ力を目の当たりにしました。入園説明会があった水曜日は新しいご家族と新しい生活を始めるスタートの日になりました。実習生の指導担当者が来園した木曜日は、実習生が子どもとの出会う意味を再確認しました。バス遠足だった金曜日は、上野動物園では動物の多様性(ダイバーシティ)を通じて長い進化の時間に思いを馳せました。そして今日22日土曜日は、午前中に園内のカーペットと換気扇の清掃に立ち会い、午後から新宿せいが子ども園の成長展へ出かけました。

私たちは同じ子どもなのに、環境が変わると見せてくれる姿が異なるという経験を共有しています。たとえば園と家庭では子どもの様子が違うことが結構あるのでした。今週はその「見える姿」の違いをめぐり、子どもの発達経験について色々な角度から語り合ったような気がします。オンブスパーソンの方とは子どもが「寄って来ない姿」をどう解釈するかについて、青木さんとは「3歳児でもやりたがる」という発見について、園医さんとは「健康診断の結果」を通して子どもの発達状態について、実習生とは印象に残った子どもの「エピソード」を通して、昨日は動物に見入っていた「子どもの様子」について、そして今日は「成長展の展示でわかる子どもの育ちのプロセス」について。

子どもにとっての身近な環境によって、こんなに姿が違ってくるなら、その姿の意味がとても大切になります。違うことが重要なのではなく、その違いをひっくるめた全体の経験が、一人ひとりの子どもの発達にどのように影響し、どんな意味や価値があるかということが大切なのです。平成元年以降、国は全国の幼稚園や保育園で「環境を通した保育」を充実させるように働きかけてきました。そのことと、今週の気づきがつながってくるのです。

さらに、ちょっと話が複雑になる事情があります。確かに子どもの姿は環境の違いによって引き出されてくる姿が異なるのですが、もう一つ違って見える理由があるからです。それは人によって異なる「子ども観」や「発達観」です。この○○観という見えないメガネを、私たちはかけていて、その「観」を通じて子どもを見てしまっているのです。私たちはその「観」というメガネを外すことがなかなかできません。ですから、せめて曇りのないピントのあったメガネになるようにしないといけないのでしょう。

遊び込んでいる熱中度、アート感覚、パーソナリティ、間主観的世界観、人類の進化観、保育のプロセス・・どれをとっても新しい「見方・考え方」で刷新され続けてきたことを忘れてはならないのです。ちなみに、この「見方・考え方」は中教審答申で登場した言葉ですが、実生活の中で誰もが使っている〇〇観に近いものです。

動物たちの迫力に感動して・・

2020/02/21

素敵な動物園の遠足でした。まず、こんなに素晴らしい動物園がそばにあるなんて、保育園はなんと恵まれている立地なんでしょう。バス遠足で上野動物園へ行ってきました。新型コロナウイルスの感染拡大が心配されていますが、平日の午前中は人も少なく、幼稚園、保育園、小学校の団体がいくつも来ていました。基本的に外を歩き、人混みもなく、感染の心配は要りません。

今日のルートは科学博物館のシロナガスクジラの前でバスを降り、野口英世像の前を通って動物園(表門)へ。最初に東園を回りました。

入口近くのパンダは混雑しているので避けて、アジアゾウ、ニホンザル、ホッキョクグマ、ツキノワグマ、トラ、テナガザル、ゴリラ、カワウソ、シロフクロウなどを見て、五重の塔が見える近くでお弁当を食べました。

では、いかに見てきた動物のワンショットを一緒にお楽しみください。

 

ニホンザル

ホッキョクグマ

くま

スマトラのトラ

 

テナガザル

孔雀

見るところがたくさんの動物園散策。

まだ小さいゴリラの子ども

本当のゴリラを見たあとで、ゴリラの銅像で遊ぶ。

実物大なので、その筋骨隆々とした体に感動です。

シロフクロウ

五重の塔が見える場所で、お昼ご飯。

おかずは、お重に入れて。

お重の塔。

保育園で用意したキュウリと唐揚げ。お代わりもして、みんなでよく食べました。

ちょうど昼食が終わったのが12時ごろ。そのあとプレーリードッグやバイソンを見て「いそっぷ橋」を渡って西園へ。

 

アメリカバイソン

その時点でかなり疲れが見えたので、アフリカの動物までは行かないことに。

カンガルーを見た後は、両性爬虫類館に入って、ワニやカメを見てきました。

ここから両性爬虫類館へ

カンガルーの親子

大きなウミガメ

ガラパゴス諸島にいるガラパゴスゾウガメ

爬虫類の迫力!

コドモドラゴンに乗って記念撮影!

その後フラミンゴやペンギン、ペリカンを眺めながら弁天門まで歩きました。

 

フラミンゴは、暖かな日差しに気持ち良さそうでした。

生き物大好きなSくんとKさん

いろんな動物を実際に見るというのは、やはりテレビや絵本や写真で見るのとは違って、その動きや大きさ、迫力、匂いなどが迫ってくるので、子どもが感じ取るものは全く違います。帰りのバスの中で、見た動物を順番に思い出していましたが、私の隣に座ったYSさんはクマ山のインパクトが大きかったようで「サルの次に何を見た?」というクイズに、すぐに「ホッキョクグマ!」と手を挙げていました。

20200221上野動物園の地図

動物園の地図には、動物のイラストと名前が描いてあり、何人もの子どもが、それを欲しがりました。こんなに地図を欲しがるのには理由があります。それは先生たちの上手な仕掛けがあったからです。わいらんの保護者の方はご存知だと思うのですが、動物園に行くことが決まってから、子どもたちの生活シーンに動物の写真が貼ってあったり、上野動物園の地図が床に貼ってあったりします。動物の話をたくさん聞いたり調べたり、今日を迎えるまでに色々な準備がされていたのでした。

4歳児クラスの子どもたちが地図を手にして動物園を回るという光景は、かなり高度な見学方法です。園に戻ってきてから、地図が足りなくなってカラーコピーして渡してあげたら「園長先生、これ違う」というので、どうしてだろうと思ったら、最後の折り方が違うというのです。「こっちが後ろだよ」と教えてもらいました。「あ、そうか、ごめんね、Sさん」。本当によく見ているなあ、感心です。

それにしても、まだ2月だというのに、桜が満開なのには驚きました。早咲き桜とはいえ、びっくりしました。

明日からの遊びがどうなるか。また楽しみです。

今日は実習生も一緒に行ったんですが、本日の実習記録に担任が書いた助言が、保育のつながりをうまく表現していました。

「今回のおにぎり遠足など行事に関しては、行って楽しかったね、と「点」で終わらせてしまうのではなく、保育中に見ていただいたように、事前に子どもたちが行事に対して楽しく期待や関心を持てるよう働きかけます。そして重要なのは行事後に、感じたことや経験を子どもたちが普段の遊びに取り入れて表現したり、発展させていけるよう、製作の材料、絵本、お集まりでの遊びなど、様々な環境を整え、行事を「線」としてつなげて保育していけるように心がけています」(坪井)

 

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