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園長の日記

表現④子どもの絵をどう「みる」か

2020/02/23

今週末の「成長展」では、子どもの育ち(成長、発達)を見ていただきますが、それを見るためには、「どのように見たら見えるのか」、二つの大切な視点をお話ししておきたいと思います。一つは発達です。もう一つは内面世界です。この二つはお互いに補い合う関係です。内面世界とは子どもの心の動きのことです。それも発達ですから、大きく捉えれば「育ち」を見てほしいということなのですが、二つに分けておいて、あとで一緒にしてみましょう。子どもの育ちは、目を開ければ「見える」というものではありません。目に見えるものを「見えるようにする」ことが必要なのです。では5領域の中から「表現」のところを説明しておきましょう。

◆自由画

成長展では、3種類の絵が展示されます。この1年間、1歳児クラス(ぐんぐん組)から幼児まで一人ひとりが「自由画」「人物画」「ぬりえ」を楽しんできました。その中で、まず「自由画」について取り上げます。子どもの「発達」と「内面世界」から自由画をどのように見てほしいと考えているか、ということです。

◆子どもの絵の意味について

大人が「私は絵を描いています」というと「趣味か仕事」と思われるでしょうが、子どもにとっての絵は、遊びであり、やりたいからやる何かです。子どもは絵をかくことが楽しいからかくのです。またほとんどの場合、見せるために描いていません。1歳児クラスのぐんぐんの子どもたちが、クレヨンやスタンプ、画用紙が目に入ると「やる〜」とやりたがります。楽しいからです。2歳児クラスのにこにこの子どもたちもそうです。お絵かきは大好きです。3歳児クラスのわいわい、4歳児クラスのらんらんの子どもたちも、いつも置いてあるイーゼルにいつも何かが描かれています。描いた絵は楽しかったこと、これから体験するであろうこと、色々な表象が絵になっています。いつ何を描いてもいいのですが、いつ行っても何かが描かれています。これが自由画です。なんでもいいのです。その時々に描きたくなってかく。他の遊びや運動と同じように、やりたいからやるのです。

◆発達を表す絵

では、成長展でみていただきたいのは、子どもの絵はまず「発達を表す」面があるということです。「発達を表す」というのは、どういうことでしょうか。子どもが、何か(クレヨンとかサインペンとか)を握られるようになって、手を動かして紙にその軌跡を残すことができるようになったら、その軌跡には発達(年齢)に応じた特徴が現れるという意味です。心の成長と身体の成長が合わさった過程と結果が、その子の絵です。成長展では、その発達に応じた特徴を、まず感じとっていただきたいのです。

◆具体的な何かを描いたわけではない絵

子どもの絵は、その時に何かをかこうと考えて描いたとは限りません。思い描いていることがあって描いたとも限りません。腕を動かしたら線が出た、色が見えた「あれ、なんだろう、面白い! もっとやってみよう」ということから、何度も何度もクレヨンがぐるぐる、ぐるぐる、ジグザグ、ジグザクと動いて、そうやって動かすことが楽しいのかもしれません。

何度も同じところをぐるぐると描いていたら、色は混ざって黒い色に近くなっていきます。見た目はきれいではなくなります。でも、それだけ、何度も何度も繰り返した時間を想像してみてください。それだけの筆圧をもって、動かした手の軌跡があることを考えてみてください。大人になって、そんなにのめり込む時間がありますか? それをやっている時の子どもの時間をイメージしてみてほしいのです。こうしたい、と思ってやっても、ちっともそうならないと思って、どうしたらそうなるだろうと思ってやった子がいるかもしれません。

これを絵の具でもやります。すると大抵は紙が破れてしまいます。画用紙ならまだいいのですが、大きな模造紙で何人もがやると、水分が多くなって破れてしまったりします。それも面白い作品として飾ることもあります。

◆身体的は発達から可能になっていく線

「あ、横の線から縦の線が増えきたから、手首と腕を上下に動かせるようになってきたな」とか、「細い線が動いてきて、最初のところに戻ってきて、つながっている。円ができている」とか、「長い線を横に一本引いた水平線や地平線がある」とか、「丸に点々が見えるから顔を描いたのかな」、あるいは「丸い顔のから手や足の線が出ているから頭足人(頭足画)だな」・・・こうした見方を、私たち保育士は学んできています。子どもの運動と心理の面から描画に特徴があるのです。それが現れたということが、育ちの喜びになるのです。例えば、子どもが長い線を横にひくことは、とても難しいことを私たちは知っているからです。

偶然にそのような形になる段階から、だんだんそれらしい写実性を感じるようになってくると、家の中は見えないはずだけど中を描いているレントゲン画(透明画)、街の家と道路が自分が見てきたように並ぶ擬展開図など、いろいろな名称と共に、子どもの空間認知の特徴も現れてきます。

絵の研究者や心理学者が、子どもの絵の発達の特徴として「〇〇期」と名前をつけて説明していることがあります。例えば「なぐりがき」のように見えるから「なぐりがき期」のように、です。でも、そういう風にだけ見てしまったら、その絵をかいて楽しんでいた瞬間の子どもの心の動きを想像しようと思わなくなってしまうかもしれません。ですから、私はピアジェが命名したような、そのような〇〇期といった発達心理学的な分類を知っていても悪くはないのですが、それに引っ張られてしまって、その特徴を見出そうとして絵を見てしまう、という弊害を心配します。

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