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2022年 6月

すいすい組が初めて「しながわ水族館」へ

2022/06/17

本物に触れるというのは、やっぱりいいものです。そばでよく見る、しかも普段はまず見ることができないものの姿をよく見ることができるだけで、いい体験になることを実感しました。

今日17日は、年長組(すいすい組)と一緒に、しながわ水族館へ行ってきました。今の年長さんはここへ行くのは初めてなので、どれもこれも新鮮で楽しかったようです。川や海に棲んでいる、いろいろな生き物を見ることができました。

実際のところ、地上で暮らす私たちは川の中、海の中にそう簡単に生き物を見に行くことはできません。その点、博物館の一つである「水族館」は海と森林に囲まれて暮らす私たち日本人がもっと力を入れていい文化教育施設でしょう。

年長さんは今回が「水族館デビュー」なので、オーソドックスな巡回ルートを回ってきました。この水族館は地上1階、地下2階だて。

1階が「海面フロア」で、玄関から入るとすぐ左手の観覧通路中央にミズナラの巨木が配され「木は森をつくり、森は川をつくり、川は豊かな海をつくる」という本来の自然が再現されています。

東京湾に注ぐ川に住むイワナなどの川魚やカニなどが気持ちよく泳いでいます。3月にきたときはいなかったカルガモも2羽仲良く「水掻き」を見せてくれます。けがをしていた自然のカルガモが保護されたそうです。

海辺や磯にすむ生き物がいかに多様なのか、大人も楽しめる展示になっています。イソギンチャクやクラゲなども展示されています。

奥の方へ移動すると、そこは大人気のイルカとペンギンがいます。3年前に生まれたイルカの「バニラちゃん」は、もうすっかり大人になっているはず。今日は2頭がステージに飛び乗ったり水中に潜ったりを繰り返していました。演技の練習だったのでしょうか? それがバニラだったかどうか分かりませんでしたが、二頭はとても元気そうでした。アクリリボード越しに目の前を通り過ぎるイルカは大迫力です。

イルカショーは時間が変わっていたので、見ることができませんでしたが、この水族館は老朽化で2027年度に建て替えが決まっていて、それを機にイルカはいなくなりますから、それまでにできるだけ見ておきたいと思います。

その隣のエリアには南アフリカに住むマゼランペンギンが群れをなしています。子どもたちが近寄ると、ペンギンたちも餌でももらえると思うからなのか、どっと群がってきます。いつもダラリとしていた(失礼)、ペンギンたちが興奮しているので「どうしてだろう」と思っていたら、すぐにわかりました。ちょうど給餌の時間だったのです。

「丸呑みしているね」「歯がないの?」「もぐもぐしないんだね」「魚の頭から食べているよ」「海の中を飛んでいるみたい」などと会話を楽しみながら、そこでしばらくペンギンたちをみたあとルートを戻り、大海原を上から見下ろすことができる場所へ移動。いろんな種類のタイの仲間やウミガメなどにしばらく目を奪われます。

そして、いよいよ海の中へ、エレベーターで降りて行きます。深海200メートルということになっているのですが、実際は地下1〜2階が「深海フロア」になっています。

30年前にできたとき、海の中に入って魚やウミガメを見ることができる「トンネル水槽」が大きな話題になったそうです。

その後、似たような作りの水族館が増えて珍しくなくなりました。そして、子どもたちは、魚やカメの腹側(はらがわ)や海の底で寝そべっているカメに、窓越しにトントンしたりして、釘付けになっていました。

このような体験をするときに、私たちが忘れてはならないのは、AI時代だからこそ心得ておきたい「五感を通した実体験」、それが「確かな認識」に至るという子育ての鉄則です。疑似体験、追体験でしかないテレビや図鑑で済ませずに、ホンモノを実際に体験することです。きっと子どもたちの体全体に染み込んでいくことでしょう。

【ウミガメ】

【タイ】

【熱帯魚】

【くらげ】

【タコ】

【カワウソ】

季節を敏感に感じる園生活に

2022/06/16

保育園の生活で特徴的なことの一つに「季節」に敏感になるということがあります。保育のねらいや内容の中にも「季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く」(環境の「内容」③)というものがあるのですが、都会の中で生活していると、意外と気づかないままに過ごしてしまいがちです。ちょうど今日、北海道を除く全国が梅雨に入り終えましたが、他の季節はそんなにはっきりと「いつから」ということは分かりません。いつの間にか春がきて、いつの間にか秋になっていたという感じです。ところが季節の変化にもっとも敏感なのは、草花や植物や動物たちで、人間がもっとも鈍感になっているのではないでしょうか。

保育園にいると、意外なものが季節を告げてくれます。春の訪れは「アゲハ」の卵の発見で始まり、夏の訪れは「カブトムシ」が土の中から這い出てきて、知らせてくれました。これは子どもたちにとって幸せな季節の出会い方かもしれません。私も今年初めてだったのが「スズムシ」の誕生です。鈴虫といえば秋のイメージだと思いますが、虫を売っているお店の方に「鈴虫は夏の虫なんですよ」と教えてもらったことがあります。とても意外でしたが、こうやってこの時期に卵から産まれて、だんだん秋に向けて大きくなっていくわけですね。今年はその成長の様子を観察することができます。メダカもある温度にならないと卵を産みませんから季節は暖かくなったことを教えてくれているのでしょう。

屋上の菜園には、きゅうりの花が咲いています。これも夏野菜ですから、もうこの時期から夏が始まっていると言えます。

屋上のバケツの田んぼには、田植えがすんだ稲も、しっかりと土に根をはり、緑が鮮やかに輝いています。

柳原通りの紫陽花は5月から咲いていました。

梅雨のイメージが強いですが、意外と1ヶ月ほど早いんですよね。子どもがうたう歌も5月の「こいのぼり」から「かたつむり」や「あめのこくまさん」に変わってきています。

私の家の近所の軒下では、ツバメが巣を作り始めています。ほぼ完成したのでもうすぐ卵を温め始めることでしょう。

給食には春にイチゴがよく出ていましたが、今はスイカです。旬の食べ物も季節を教えてくれます。また来週になると七夕に備えて、笹を取りに行く計画をしています。日本の伝統行事は季節の変化と切り離せません。夏には子どもたちに日本らしい「涼の取り方」を体験してもらいます。エアコンは欠かせないものとなりましたが、打ち水や風鈴といった風物詩も忘れたくないものです。

豊かにしたいヒューマン・コンタクト

2022/06/15

新型コロナウイルス感染症で自粛をお願いした先週とはうってかわって、今日は一気に活気あふれる触れ合いが戻ってきて、嬉しくなった1日でした。

午前中は歯科健診。子どもに人気の山本先生に全園児が歯を見てもらいました。同じ時間に私は幼児の部屋で絵本を読んであげていたのですが「園長先生、泣かなかったよ」と自慢しにくる子もいて、こんな経験も自信になっていくんだなあ、と実感します。歯の健康、同時に育つ自信かな・・・。これも大事なヒューマン・コンタクトの賜物です。

今日は雨なので全員が園内で過ごしましたが、それでも、混み合っている感じはありません。絵本、ごっこ、運動、積み木、パズル、生き物、制作など、思い思いにやりたい場所を選んで遊んでいます。各クラスの先生たちが、空間のゾーニングや配置する遊具、リラックスできる場所の確保など、実に細かな配慮をしてくれています。

象徴的なものが「スズムシ」や「カブトムシ」が、当園で卵から生まれた仲間だということです。こんな人工的な都会の真ん中で、虫かごや水槽一つで、年を超えた命の連鎖を作り出すことは、実はそう簡単なことではありません。子どもたちのために、という先生の思いがこのような環境を作り出してくれています。

このように先生たちが先手先手を打ちながら、2ヶ月先のバスの手配、秋の行事の準備、ポスト・コロナ禍の見通しの中に、保育の重点課題を見出してくれています。ありがたいことです。そうした先生たちの発想から計画したものが、納涼会の内容の一部を保護者の皆さんと作り出していく試みです。今日はその第一弾が開かれました。

第1回納涼会保護者ミーティングです。やってみてよかったです。保護者の方同士の懇談を兼ねて開きましたが、いろんなアイデアや「こうだったらいいな」を語っていただきました。今日の成果を次回のミーティングに活かしていけそうです。

そして今日は一日雨だったので、全員が園内で過ごしましたが、私が絵本を読んであげる時間があり、その時、子どもの心の躍動感が伝わってくるのが面白くて仕方がありません。「これ読んで」と子どもたちが絵本をもってきます。子どもの関心が向いているものを見つけて、それに関連しそうなものを私が見つけてくる場合もあるのですが、例えば、カブトムシが空に飛び立つシーンが子どもたちに強い印象を与えるもの、セミが地上にでてきて昆虫たちがパーティを開いてくれるお話、ユーフラテスの「こんガらガっちシリーズ」の迷路遊びなど。次々と「これ読んで」と列ができるほどです。

そんな時によくわかることは、子ども一人ひとりの発達と個性です。これが体験できることが保育の楽しさです。この子どもたちの多様性とエネルギーを、ぜひ親御さんにも体験してもらいたいと切に思います。ぜひ、いろんな子どもたちがいることを体験してもらいたいと思います。自分の子どもとだけの関わりしか知らないと、実はお子さんが多様な面をもっていることに気づけていないかもしれません。それほど個性は多様です。コロナが落ち着いたら、ぜひ「パパ先生」「ママ先生」も体験してみてください。きっと子育てに役立つと思います。

再会が嬉しそうな子どもたち

2022/06/14

コロナ禍での長いお休みが終わり、昨日13日(月)から園生活が再開しました。全園児数は51名ですが、昨日は45人(6人のお休み)が登園しました。急にはじまった5日間の登園自粛は、とても長かった気がしますが、2年前の春の、2ヶ月近い休園は、今思うとよくできたものだと驚きます。この5日間が長かったのか短かかったのかは、それぞれだと思いますが、登園してきた子どもたちの様子をみると、再会を喜ぶ姿が随所にみられました。今日14日(火)は48人(3人のお休み)の登園で、いつもの活気がすっかり戻ってきた感じです。

先生たちに子どもの様子について感想を聞くと「わあ〜っ」と集まってきて「◯◯ちゃ〜ん」と、集うような姿が見られましたよ、とぐんぐんの先生。朝のごあいさつの歌でさえ、なぜか新鮮に聞こえるのは、にこにこの先生の気合いからでしょうか? 「♪せんせいと おともだち〜」と、指差す仕草も、楽しそうなのです。お昼ご飯も「見て、ピカピカだよ。これだとあやいやすい?」と、頬張っているごはんで、ほっぺたがふくらんで、美味しそう。

やりたかった遊びができたのか「見て〜」と出来上がったものを見せてくれると、その子らしさが表れていて「やっぱりそれなんだなあ」と安心したり、感心したり。すっかり、いつもの子どもたちです。昨日はさっそく新しい公園へ出かけたり、今日は午後から雨だというので、急いで旧今川中校庭へ、出かけてました。医療的ケアの保育も昨日から始まり、区からは看護師さんも巡回に来てくださり、区内の感染症の状況などを教えてくださいました。また保健所からも梅雨の時期でもあるので、食中毒防止の観点から、調理室の衛生環境を調べてくださりました。安心して生活できるように、環境をしっかりと確認して進めていきたいと思います。

13日(月曜日)からの登園に向けて

2022/06/10

新型コロナ感染症の感染を広げないように、登園を控えていただき、心より感謝申し上げます。おかげさまで今週6日(月曜日)から本日10日(金曜日)まで、新たに罹患した園児や職員はいませんでした。本日朝、早退したお子さんの検査結果も陰性でした。これらの結果を千代田区と共に状況を確認してもらった上で、すでに連絡アプリでもお知らせしましたが、来週13日(月曜日)からは平常通りの保育を再開する予定です。

昨日9日(木)は18名、本日10日(金)は25名の登園がありました。明日土曜日、日曜日の健康観察は引き続きよろしくお願いします。発熱などの体調が悪い方がご家庭にいらっしゃるとき、検査をしている場合などは、結果が判明するまで登園を控えてくださるようにお願いします。

その一方で、家庭内での感染を防ぐのはとても難しいので、残念ながらお子さんから保護者の方へうつってしまうケースが見られました。症状があると心身ともにとても辛いものです。くれぐれも、どうぞお身体お大事になさってください。元気で再会できる日をお待ちしています。

登園を控えてくださった乳児の保育料は免除に

2022/06/08

今週から登園を控えてくださった方の保育料は、千代田区の運用により免除となります。3歳児以上の幼児は最初から保育料が無料です。「休園届」を6月末までにご提出ください。用紙は事務所にあります。またホームページ「各種申請書類」からダウンロードできます。令和4年4月〜6月用をご利用ください。

家庭での子育てはいかがでしょうか

2022/06/07

保育園を休んでいただいている代わりに、始まったら思いっきり楽しいことができるように、今日は展示会へ出かけて子ども用実験器具を購入したり、今年度揃えたい絵本のリストアップをしたりして、”再開後”に備える準備をしました。再開と言っても休園している訳でもないのですが、多くの皆さんに登園を控える協力をしていただいて、申し訳ない気持ちが強いです。きっと「保育園、まだあ〜?」とお子さんにせがまれている様子が目に浮かびます。また職場から「そんなに長く仕事を休まれては困るんだけどな」とプレッシャーを感じている方もいらっしゃると思います。保育園が家庭と同じホームでありたいと思っているので、1日も早く多くの子どもたちに、いつものように戻ってきてもらいたいと願っています。本来は今日から保育参観だったのですが、延期させてもらいました。また今週からコンテンポラリーダンサーの青木さんたちにも来てもらって、今年度のダンス遊びもスタートさせたかったのですが、こちらも延期になりました。今日は関東も梅雨入りで、雨の日が多くなりますが、室内で体を動かす遊びには、新しい遊具も加えて新鮮さをアップしていく予定です。職員も簡易検査ですが陰性であることを確かめながら保育に入っています。あともう少し、家庭での保育、よろしくお願いします。

新型コロナ感染症対策へのご協力、感謝申し上げます

2022/06/06

本日は多くの方に登園を控えてくださり、ありがとうございました。園の関係者(*)2名が続けて新型コロナウイルス感染症の陽性になったことから、千代田区と相談して今回のような対応を取らせていただきました。新型コロナは変異を繰り返しており、感染力や症状が変化しているそうです。発症した日を起点に考えると、その前の2日間と、その後の7日間が感染しやすいと想定されています。つまり発症した日から2日遡るあたりが感染した日だと想定していますので、もし発症した日あたりから二日間は、症状がでやすい、ということが言えます。そこで今回の場合は、土日を挟んで月火を感染しやすいピークだと想定し、この間に接触を経つことで感染拡大を防ぐ効果が高いと判断しました。今日はお休みいただいたから、新たに新型コロナになったという報告はなく、このまま何もなく推移していくことを願うばかりです。東京都の感染者数が1日1000人程度になってきましたが、まだ感染リスクはあります。子どもたちが集う場である保育が、集団であることからもたらされるメリットは大きのですが、こと感染症となると、どうしても移しやすい、移されやすいという課題があります。どうぞお子さんとご家族のみな様の健康状態を把握していただき、早く安全な保育園生活が戻ってくるように力を合わせていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 

集団的思考「みんなで育てたい枝豆」からの私の学び

2022/06/05

今週を振り返ってみて私が印象に残っているエピソードは(私に届いているエピソードの中では)、枝豆をみんなで育てたいと先生に言ってきた子どものことです。年長さんらしい「共に」の心が美しい話です。集団でこそ育つものが現代では失われてしまったという強い危惧を抱いて、この仕事の世界に30代で入った私は、それから四半世紀が過ぎても、その状況が好転しているのか停滞しているのか、少しでも改善しているのか、思案することが続いています。

そんな中で、友達のいる保育園の仲間と枝豆を育てたい、分かち合いたいと思う気持ちほど、素敵な育ちはないように思えて仕方がなく、なんだか私が救われたような気になります。ちょっとした「いいな」に気づき、それを伝える勇気を育み、共感の輪を広げていく。そこに彼女の思いが素敵だなと思った次第です。また担任がそれを受け止めて目に見える形にしてくれています。玄関の昭和通り側にあるプランターに、その枝豆の「赤ちゃん」がいます。種を撒いてから数日後、それこそ枝豆のように、ふっくらと頭をもたげて芽を出し、双葉を広げて日差しを浴びようと大きな背伸びをしています。

話は変わりますが、生きている上で大事なものを大事にする順番がこんなに違う。そう思うことが多くて、世の中の常識を疑ってみないといけないことがたくさんあります。ただこれまでそうだった、ということを根拠に物事を判断できない時代が、1980年代以降(ポスト近代)始まっているのですが、突然にロシアが世の中を近代に連れ戻してしまいました。半世紀以上も世界時計が戻ってしまいました。悲劇の絵本の世界に、現実を描いて見せたのではなく、悲劇の絵本がまるで現実になってしまった。うそだろ、を本当にしてしまった。

枝豆の芽を大切に育てたい。その気持ちとウクライナの人々への想い、ロシアでの不幸に巻き込まれてしまった人々の苦悩。この二つが近づくのに決して重ならない。やっぱり数と勝敗と武力で語られる戦争の愚かさ。いいな、こうしてみたい・・・そんな子どもの小さな願いを叶えていくことができる平和な時間が、今ここにあると言いたいのではなく、それこそ井の中の蛙だと自覚しながらも、それを守ることぐらいもやれないなら、目の前の子どもたちのために何がやれるというのでしょう。戦争は動いているように見える世の中で私の心を動かなくさせてしまう。でも枝豆は葉を広げる。

 

集団的思考の結果としての3歳児のあいさつ

2022/06/04

今の時代に保育園に期待されていることは何だろう? いつもそんなことを考えながら保育園の運営をしてきました。育ってほしい資質や能力という、眼差しで子どものことを考えると、昨日もお話ししたように、コミュニケーション能力、集団思考、実行能力という3つのことを、これからのAI時代に必要なものだと、藤森統括園長は考えています(5月13日ブロク)。

(1)「対話する能力」コミュニケーション能力

(2)「他と協力する能力」コラボレーション力・集団的思考

(3)「実行機能」自己調節能力

このことは家庭や地域ではあまりできないけれども、保育園だからこそできるものということでもあります。家庭のしつけだけでは、子ども同士の刺激やモデル、模倣、集団力などで育つ力が発揮できません。多様な人間関係があって初めて、さまざまな<児童文化の世界>が成り立っているからです。

わらべうた、絵本、素話、紙芝居、人形劇、子ども同士のごっこ遊び、鬼ごっこ・・・このような児童文化財の質の選択には、学識経験者や研究者たちによる知見が生きています。それが私たちの仕事の質を支えていると言ってもいいでしょう。

その児童文化の中に入っていって、コニュニケーションをはかりながら、そこに展開されている子どもたちの体験は一人ひとりのことでだけではなく、人と人の関係の中にあります。それがコニュニケーションが発生し、集団的思考が働いたりしています。

集団的思考というのは、当事者にとってはどんなことなのか、私の体験から説明します。子どもの側にもそれと似たようなことが起きているんだと想像してみてください。この体験は家庭でも起きているのですが、保育園の集団の中でしか起きないものがたくさんあるということを想像していただきたいのです。

その具体的な出来事を、昨日の「園長ライオン」の終わりに私は体験しました。わいわい組のKRくんが、お母さんがお迎えに来たので自分で遊びをお終いにして(運動遊びのときは裸足なので)靴下を履き、上履きを履いて、鞄を持って私のところにわざわざやってきて、私の目をしっかり見て「せんせい、ばいばい」と挨拶して行ったのです。

その「せんせい、ばいばい」の中には、“たのしかったよ、またやろうね”がはっきりと含まれていました。あの表情は忘れられません。まるで映画のシーンのように、彼の目が焼き付いています。その瞬間の表情をよ〜く吟味したいので、映画作品などで、その瞬間を止めて、しばらく数秒間そのままにするという手法がありますよね、あれを思い浮かべてください。(例えば、ちょっと古いですが映画「つぐみ」(吉本ばなな原作)の片瀬里穂が黙って真田広之のことばを聞いている時の表情のようでした)

この挨拶こそ、挨拶の本質だな、と思いました。自分から自分のうれしい気持ちを伝えたくなって伝えに来てくれたのです。二語文ですが、多義的な、というよりも、自分が体験した時間は充実していたよ、うれしかったという気持ちを分かち合いたかったのだと思えます。学生には精神間機能から精神内機能へ(ヴィゴツキー)の事例として説明することもできるでしょう。社会的な知性というものは、人と人の精神の間にあるものを、個人の内面に「略奪」して獲得していくんだ、という意味です。

確かに心の中で起きていることは見えません。誰にもわからないものです。しかし、KRくんと私の間には、確かに通わせたいものが同時にそこに発生したとしか言いようがないのであって、その豊かな<表象>をもっと正確に再現させるとしたら、それはいろんな表現方法があるんでしょうが、3歳の彼には「せんせい、ばいばい」という言葉に代用させたのです。体験からえた感覚が表象となり、それが言葉に結実した瞬間がそこにはありました。

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