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園長の日記

子どもと遊び、子どもに学ぶ

2021/05/27

(園だより6月号 巻頭言より)

私が好きな言葉に、絵本作家かこさとし(加古里子)さんの「子どもと遊び、子どもに学ぶ」というのがあります。子どもと遊んでいると、子どもから教えられることがたくさんあります。なかでも、私が「これがオススメ」と思って選んだ絵本よりも「そうか、こっちなんだ」と、いい意味で裏切られるときがあって、そんな時は大事なことに気付かされることが結構あります。

実は昨日5月26日も、そんなことがありました。用意していた絵本は、寝る前に読んであげるのに最適な『どんなに きみがすきだか あててごらん』(サム・マクプラットニィ)だったのですが、リクエストされたのは、4月末の「こどもの日まつり」で読んであげた絵本『かえうた かえうた こいのぼり』でした。この2つの絵本は、ほのぼの系とユーモア系という、タイプが全く異なるので、比較しようがないのですが、どっちの反応が健康か?と、ちゃんと考えると、ユーモアを求める子どもの方が健全じゃないかと感じたのです。

大人は子どもに文学的な質のよさや、上品さへの感興といったものを期待しがちなのですが、これは大人の勝手な思い込みじゃないかと感じることがあります。子どもは、おばけ、怪獣、「ざんねんな生き物」など美しくないもの、どこか常識ハズレなもの、極端なものを好みます。ただ、そこには歴然と許されるものとダメなものがあって、排他的で差別的、悪趣味なものは認めるわけにはいきません。絵本『かえうた〜』は、「♪やねより高いこいのぼり〜」の歌詞を「♪いえよりでかい鯉のぼり〜」などと、虎の子ども三兄弟が替え歌にして、悪ノリしていくお話なのですが、その「おふざけ」ぶりを、それはそれとして楽しむ力があることを、子どもたちの笑顔が証明していました。

日本の絵本には、この系譜の絵本がちゃんと根付いていて、ユーモアの質が高い気がします。漫画、コミック、ゲーム、お笑い、落語、狂言・・日本文化の「笑い」は実に多様です。平安時代から<遊びをせんとや生れけむ/戯れせんとや生れけん/遊ぶ子どもの声聞けば/わが身さへこそゆるがるれ>(梁塵秘抄)と、後白河法皇も子どもの笑い声に自身を振り返っていました。

子どもが教えてくれるものは、大人の価値観との、ある種の「差」です。時々、現実を軽々と乗り越えていく生きる力をそこに感じてしまいます。私たち大人が、自分で自分たちを縛っているものにも気づかせてくれる時さえあります。本当に、子どもから学ぶことは多いものですね。

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