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園長の日記

音環境について考える

2019/11/25

日本の保育の世界で「常識」だと思っていることが、ちっとも「良いこと」じゃないことが色々あります。それを思い出させる出来事が今日25日にありました。保育室の音環境についてです。千代田せいが保育園は、みなさんご存知の通り、外からの音がほとんど聞こえません。目の前が昭和通りで、しかも高速道路が走っているとは思えない静けさです。図書館と同じ静けさを確保してあります。それだけ防音が行き届いているわけです。

今日いらっしゃった方は、短大の保育士養成校の学科長で、自ら幼稚園も経営されています。話題になったのは、日本の保育園の「うるささ」です。もう数年前のことですが、日本の幼稚園や保育園の音環境を調べたら工事現場と同じ騒音だと問題になりました。子どもの声が大きくて、普通の話し声が聞こえないので、子どもが叫ぶように話すようになってしまっている、というのです。悪循環です。

「千代田せいがの保育室は、いい吸音材を使っているので、基本的に静かですよね。保育室の音環境に気づいてもらうために、千代田せいがを紹介していますが、良いでしょうか」

そんな依頼を受けました。ただ私は、子どもたちの声がまだまだ大きすぎると感じています。千代田せいがの幼児の子どもたちも、うるささに慣れてしまっています。保育環境がうるさかったから、より大きな声を出していたのかもしれません。あるいは、大きな声で主張しないと、聞いてもらえない、という経験がずっと続いているのかもしれません。敏感な子は「うるさい」と感じています。

保育室はこれくらいうるさいのが当たり前、という常識が日本にはあるようです。先生も大きな声じゃないと務まらないとか、声帯が丈夫でないと先生になれないとか、キャーとか大きな声を出すのが子どもらしいとか、全く誤った考えが常識のようになってしまっているのです。

保育も一斉に多くの子どもたちに語りかけることが「常識」だと思わされているので、先生も「みんな」という言葉をよく使います。本来なら一人ひとりのそばに行って話せばいいだけのことです。多くの子どもたちに同じ内容を伝えたいときは子どもに「伝えるの手伝ってくれる?」と、子どもが子どもに伝え合うようにするといいのです。そうした方が、意識の共有や連帯感もコミュニケーション力も育ちます。もちろん、そうでない時もあります。でもそれは、どうしても効率を優先しがちな場面などに限る方がいいと考えています。

子どもの会話がうるさいから、静かにさせる方法として「壁ぺったん」という方法があるようです。私たちの園では、一度もやったことはありません。食事の時にも「壁ぺったん」で、壁を向いて食事をさせている園があります。食事は会話を楽しむ方がいいのですが、子どもに話をさせないように、刺激を与えないように、子どもに入ってくる情報を少なくして、静かにさせているというのです。

その方から「そんな園が結構ありますよ」という話を聞きました。養成校の先生は、実習生をたくさんの園に送り出しているから、いろんな園の実状に詳しいのです。

私は保育室に限らず、家庭でも会社でも学校でもどこでも、適切な音環境を考える必要があると思います。総じて、音が多すぎる気がします。海外に行くと気づかれると思うのですが、例えばレストランや喫茶店などに入ってもBGMはかかっていません。それに引き換え、どこに行ってもかかっているのが日本です。有線放送が始まってからの文化現象ですが、これも世界的に見れば常識ではありません。

日本の音環境。どうなんでしょうか。例えば家庭でもいつもテレビがついている。ラジオがかけっぱなし。音楽が常になっている。若い人はいつもイヤホンで音楽を聴いている、・・・そんな常識でいいのかどうか。耳が疲れていい音が聴こえなくなると心配されている研究者は、少なからずいます。

物事をちゃんと考える時間が欲しいと思った瞬間、私などは静かな場所でないと考えることができませんが、そんな頭は古いのでしょうか?

全く、話は変わりますが、21日に蝶々を公園で放したときの、子どもたちの表情、感動的です。いい顔してますね。いい経験の積み重ねがないと、あんな顔にはならないです。みなさん、自慢していい顔ですよー^_^。

 

 

 

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