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保育アーカイブ

どのクラスの子どもも園全体が生活の場です

2023/07/13

保育園という生活空間は、家庭がそうであるように、そこにいてはいけない場所というものはありません。どこにいてもいいし、保育園のすべての場所が子どもにとっての居場所となります。

たとえば、保育園の中に内と外の区別はありません。それも家庭と同じですね。家庭の中に、ここからは内でここからは外、というものはないと思います。それと同じです。

あるいは、その子にふさわしい場所は所属するクラスのなかだけとは限りません。その年齢の発達にあったものは、多くはそのクラスにあるようにしていますが、入園してすぐの時期や進級するまえの移行の時期などは、その幅をひろくとる必要がでてきます。

当園はそんな「外」にあたるような場所をなくしたくて、子どもがいてはいけない場所がどこにもないようにしています。園内を全てコーナーやゾーン化して、つまり遊びや生活に必要なリソース(資源)を分類して、子どもにアクセスしやすいように配列して可視化してあります。すると、子どもはきちんと自分にあった(必要だったり好きだったり)選択をします。

そのゾーンと同じ意味で、廊下も階段も、それぞれに子どもが居ていい居場所としての意味があります。例えば階段は上り下りの運動になりますし、歩行の確立期にある乳児には格好の運動遊具です。階段の蹴上の部分には数字のステッカーが貼ってありますが、登る時に1,2,3,4とカウンティングしたり、数字への関心や感覚に親しんだり、リズムのある上り下りができたりします。

月の満ち欠けの写真が貼ってあるのも、そういう意図があります。またちっちぐんぐん(0〜1歳)の前の赤いスペースにも、絵本の棚をおき、ザラザラ、チクチク、スベスベなどの触覚遊びができる手作りボードが掲げてあります。

実は1階の扉の前の空間は、赤いマットを敷いて赤い机と椅子をおき、絵本を貸し出せる「千代田せいが文庫」の空間にしていた時期があります。親子で絵本を読んで帰っていい場所にしたのですが、食事のワゴンを運んだりして、物理的に狭いことから「文庫」は2階に引っ越すことになったのです。

つまり、あまり廊下っぽくしたくなくて、手触り遊びのボードを置いたり、そこで絵本を選んだりできる空間にしてあるのです。今年度からロッカーが並び、お支度のスペースにもなっています。実際に保育中は廊下から階段に至るスペースも、生活や遊び使えるようにしています。したがって内と外になってしまうような仕切りは、できるだけつけていないのです。

さらにクラスという空間の考え方も、柔軟に考えています。確かに01歳児クラスがここで、2歳児クラスはここ、345歳児クラスがここ、というのはあるのですが、実際の生活の空間は、玄関から屋上まで保育園内の全ての場所が生活空間になっています。

実際に他のクラスで過ごすことがあるし、子どもがその場所を好んでいたいからいるということも大いにあります。各クラスには、基本的にはその年齢に合ったものが置かれていて、発達に合った遊びができるように色々な遊具や絵本や運動用具などが配置されています。それでも、子どもはその標準的な幅を超えて過ごしたりします。他の遊具を望んでそこへ行くこともありますし、他の場所はどうなっているんだろうという興味から、探索したり、遊びに行ったりすることもあります。

また、物や空間だけではなく、人的環境としても乳児から幼児まで、全ての子どもが全ての子どもと接することができるようにしています。例えば乳児が幼児クラスを訪ねていくと、幼児の子がすぐに「Sちゃん、かわいい」と声をかけてくれます。子どもたちは、クラスを超えてよく知っている間柄なのです。乳児に年長がお世話をしにくることもあります。新しく入園した子どもが、クラスの仲間関係ができるまで、朝夕はきょうだいのいる部屋で過ごしたり、午睡の時間に幼児のクラスで寝るよりも乳児の部屋で寝る方を好むこともあるのです。

子どもの主体性を尊重することは、それぞれの子どもの幸せな過ごし方を実現させ、自己が発揮できるようにすることに通じると思います。また、それらのことは、それぞれの子どもの人権を守ることにもなります。所属するクラスの集団が、そのクラスの中だけで過ごさなければならないというのは、一見常識のように思っていますが、じつは偏った考え方かもしれません。豊かな体験のためにも生活空間を広く考えることは大切なことだと思います。

ちなみに職員の態勢にも触れておくと、各クラスの担任がいて、そのクラスの子どものことは担任が一番よく理解しているわけですが、ご存知のように朝の早い時間や夕方の遅い時間は、シフト勤務のために担任以外の先生が保育することもあります。そこで全職員が全ての子どものことを、ある程度知っており、全体でチーム保育をしていることになります。クラス以外の子どもがそこで遊んだり生活していても、その対応に困ることはありません。職員間での意思疎通と情報共有はできているので、子どもの生活や保育計画の連続性に支障をきたすこともはありません。

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