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園長の日記

「優劣と競争と協力」の中の保育者の調整力

2022/12/19

 

今日19日は、都内のある保育園に第三者評価に出かけました。そこの園長先生と話していて、保育者のストレスや子どもの葛藤場面に対する職員の心構え、あるいは保育者の力量といったテーマに関して話を伺いました。

コーディネートという言葉は、一般に調整するという意味で使われることが多いと思いますが、保育や教育の場面では、具体的には、どういうことになるのでしょうか。一人ひとりを大切にすると、なおさら、この調整する力が色々求められるような気がします。そんなことを考えてたい時に、一昨日のFacebookで無藤隆先生から、こんな表現をしていただきました。ハッとすることがいろいろありました。ぜひ紹介したいと思います。私なりにこんなことを考えました。

「・・・いや、優劣と競争と協力はどんな社会にもあり,社会を構成するファクターです。それを幼児は現に経験し,児童期には明確に経験します。それがなかったら,子どもにはつまらないでしょう。

ただし,幼児の優劣感覚は自己中心的なので,正確さからは程遠いので,それがよいのでしょう。ともあれそういうファクターを健全に作用させるのが大人の役割で,それらがないのがよいとか、我が組織(園や学校)にないとするのは単に保育者や教師の幻想です。

大事なことは,あることの優劣がすべてではなく,他の優劣もあり,また優劣と関係ない活動も多いことが分かることです。幼児に聞けば、誰が運動が得意か,誰が頭がいいか,誰がイケメンまた可愛いかすぐに答えます。

それを超えて個人の価値のかけがえのなさと,協同で成し遂げられる凄さを実感して分かるようにすることが幼児教育というものです。それがあれば競争や優劣も楽しくなります。毎日、そういう遊びをしているではないですか。」

一つ焦点となるのは「そういうファクターを健全に作用させる」とは、具体的にどうすることなのかということでしょう。教える、モデルを示す、話をよく聞いてあげる、橋渡しをする、ヒントを与える、子ども同士の関係に誘う、褒める、驚く、うなづく・・まあ、いろいろあります、きりながないほどありそうです。そこにコーディネーションという役割で。その役割は実にたくさんあります。大人は、ここのありようをもっと語り合うべきなのだと私は思います。

もう一つ、そうか、と思い当たったことは、どんな社会にだって「優劣と競争と協力」というものがあって、他の要素もあるわけですが、それらの中での子どもたちも自己の相対的なボジションを理解していくことになっていく。そういう面からの資質・能力の創発的プロセスに注目した方がいいということでしょう。だからこそ、私はいろんな子どもたちがその中にいた方がいいと考えます。国籍、人種、性別、年齢・・さまざまな人々が立場を超えて協働していく社会が未来だと予想されているからです。

子どもたちは、その中で、体験しながら、自分と他者の関わりを自分のものにしていくのでしょう。エイジェンシーを当事者意識のことと理解していいのなら、幼児にもそれを大事にしてあげて、その環境を用意して、そこでの体験の作用のありようをしっかり見つめていくことが大事なのでしょう。協同性の中の自立心のかたち、そこを見つめるキーワードとしても「優劣・競争・協力」ということを心に留めておこうと思ったのです。

こういうこととも関係しそうです。例えば、若い方々が精神的に弱くなったという話をよく聞くようになってだいぶ経ちます。若い方々向けのセラピーやカウンセリングをされている専門家の方にも話を聞くこともありますが、幼児教育の協同的体験が、つまり幼児期や児童期のそうした仲間関係の経験が、その後にどのように影響を与えているのかという研究がまだまだ足りないそうです。社会情動的スキルや非認知能力のことを考えてみても、保育園時代の仲間関係の大切さを捉え直す意味でも、これまでに分かっている知見から得る示唆は大きいのだろうと想像しています。

 

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