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園長の日記

脳の「感覚→脳→身体→感覚」の回転

2022/05/26

今日はお留守番。よく晴れた今日のような日は、みんな風の子、外へ遊びに出かけます。9時過ぎに、はやばやと園の前に停まっている大型バス。わいらんすい(3〜5歳)の子どもたちは浜町公園まで出かけます。登園してきた子が「今日はどうして早いの」と、すかさず突っ込みが入ります。その子が3階に登って「もう、バスが来てるよ」と子どもたちに伝えます。その時、すでに先生がギターを鳴らし、お片付けの時間になっていて、それぞれの子どもたちが自分なりに「おしまい」のタイミングを探していました。まだ積み木やパズルや制作で遊んでいた子たちも、「そうだ、バス遠足だ」と思い出したのか、お片付けへの切り替えのスピードが早まります。

ところが、私の目の前でパズルで遊んでいた子が、そのまま、しまわずに下へ降りて行こうと、その場を離れたので、私が「あれ、お片付けは? このままでいいの?」と聞くと、びっくりしたことに、そこでは遊んでいなかったKRくんが、戻ってきてお片付けを手伝ってくれました。私は「すごい!Rくん、ありがとう!」と言いました。どんな「思い」でそうしてくれたのかは、わかりません。そのことを担任に伝えたら、先生はお集まりでその子をみんなの前で褒めてあげました。

そして、みんなバスに乗り込み、見送ろうとしたら、ある子が先生と戻ってきました。忘れ物?と聞くと「カタツムリの虫かご、持っていくの忘れて・・」と先生。子どもたちは今、虫などの自然がマイブームなんです。朝から、登園の途中で見つけたというカタツムリが話題になっていました。・・・他のクラスも公園などへ出かけ、午前中の園内はがらんとしていました。その間に、私は藤森先生が代表で立ち上げた「STEM保育研究会」の総会にZOOMで参加していました。

さて、外遊びから、戻ってきた子たちは、何やら手に「獲物」や「宝物」をゲットしてゴキゲンな顔つき。ある女の子はちっちゃな木の実を一粒のせて、私に「これ」と見せてくれました。後で聞いた話によると、浜町公園のじゃぶじゃぶ池の近くで、Mちゃんと一緒に見つけたものらしい。大事そうに手のひらに載せています。でもこれからお昼ご飯なので、さてこれをどうするか? そこで困っていたようなので、とりあえず「ポケットに入れておこうか」と教えてあげました。後でビニール袋に入れて自宅へ持って帰りました。

私からの、園の中からチラチラ見えた、細切れの小さなエピソードです。こんな午前中の活動に、どんな意味があるのでしょうか。おうちの方も気になりますよね。ここからは、私の想像です。実際には見ていませんから。今日のような外遊びや虫探し、植物採集のような遊びと、最近ずっとお伝えしてきた非認知的能力や、「確かな認識」などとの関係はどうなっているんでしょう。今日に限らず、屋形船に乗ったり、花を植えたり、また乳児クラスのブログにあるように、上手にハイハイをしたり、上手にお座りができるようになったり、発達の段階は違っていても、どの子にも共通するものがあります。それは大人も同じですが、乳幼児期にこそ、大事にしたいことです。それは「脳」と「身体」と「環境」の関係を思い出してもらうと、少しわかりやすいかもしれません。

ここは、虫探し名人の養老孟司さんの解説を借りながら、基本を押さえてみましょう。発達に必要な体験を「脳」から眺めてみます。私たちの脳は、外からの刺激を受けて、脳の中で何かが起きて、それを体に返していきます。あ、チョウチョだ、という外部からの情報が脳に入り、そこで「捕まえたい」という処理が起こって、「それ、はしれ!」という指令が、脳から身体へ出されます。そして手足が動き「蝶を追いかけて遊ぶ」ということが発生します。はいはいして移動すると見えてくる景色が変わるので、面白い。お座りして手を自由に使って対象に働きかけると、新しい刺激が脳に入ってきて、舐めてみる、投げてみる・・という行動が起きる。こんな繰り返しを「脳」は、やっています。

養老孟司さんによると、「外界からの情報が感覚を通して脳の中に入ってきますよね。これがインプット。脳の中で計算して、考えて、その結果が肉体の運動として出ていく、これがアウトプットです」。「感覚→脳→身体→感覚、という具合に、情報をぐるぐると回していくことがとても大事なんです」「脳は総合であり、回転なんです」「でも、そういうふうに次々に変化していくものを全部覚えこもうとすれば、脳が壊れちゃうんです。情報量が多すぎる。それでどうするかというと、自分が移動することで違った世界がどんどん現れるけど、その世界は根本的には一つの同じ世界で、違うように見えているだけだというふうに脳がまとめていく、概念にまとめあげていく」・・・

だいたい、おわかりいただけますか。実体験が「確かな認識」に結びついていくプロセスです。概念を「ことば」などの表象の記号の世界に結びつけていく基礎ができます。これを保育では「環境を通して行う保育」と言います。解説書にはこうあります。

「乳幼児期は、生活の中で興味や欲求に基づいて自ら周囲の環境に関わるという直接的な体験を通して、心身が大きく育っていく時期である、子どもは身近な人やものなどのあらゆる環境からの刺激を受け、経験の中で様々なことを感じたり新たな気づきを得たりする。そして、充実感や満足感を味わうことで、好奇心や自分から関わろうとする意欲をもってより主体的に環境に関わるようになる。こうした日々の経験の積み重ねによって、健全な心身が育まれていく」(保育所保育指針解説書15ページ)

ただ、経験で得たイメージを「ことば」だけ置き換えていくことは、いっぱいズレが起きるのですが、ことばで置き換えてしまったからこそ、漏れてしまう情報や気持ちを伝えたり共有するために、音楽などの身体表現が重要になってきます。その話は<発達障がい>の話にも通じるので、またの機会に。

 

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