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園長の日記

美しく和む時代を願って

2019/05/01

5月1日
令和の初日。ゴールデンウィークの最中に、お正月が来たような気分を味わえると言うのは、全く想像していませんでした。働いている方には申し訳ありませんが。
そこで、改めて「令和」の典拠とされている歌集『万葉集』の解説を手にとってみました。「梅花の歌」は三十二首集められていて、その「序文」にそれはあるそうです。
『万葉集』は、ご存知の通り漢字だけが並んだ文章ですが、漢字本来の意味とは離れた表音文字を「万葉仮名」と呼ぶようになったのは、万葉集が主にその漢字で構成されているから。私はそう理解していました。
ところが、読み下し文になっている「序文」を見てみると、意味を表さない表音文字どころか、漢字本来の意味を持つ表意文字の方が多いことに気づきました。
この事は、また別の機会に探求することとして、今日は令和が「清らかで美しく和むこと」であることが表れているとされている歌の解釈を楽しみました。外務省は令和を「ビューティフル・ハーモニー」と訳しています。

太宰府の坂本八幡神社は、岩波書店の新日本古典文学大系の訳をパンフレットに採用しています。

初春の月にして(しょしゅんのれいげつにして)、
気淑く風ぎ(きよくかぜやわらぎ)、
梅は鏡前の粉を披き(うめはきょうぜんのこをひらき)、
蘭は珮後の香を薫ず(らんははいごのこうをくんず)。
どのように漢字を訓読みするかは、その人の想像力に基づくセンスが問われるところがあって、そこに日本語の面白さがあります。
たとえば「薫」は、「くんず」と読んだり、「かおらす」と読んだりされています。それぞれの良さがあって、その多様性が保たれているところに、言葉におけるダイバシティーといったハーモニーも感じるところです。
漢和辞典で「令月」をみると、旧暦で2月のことを指します。しかし「梅花の宴」は、天平2年正月13日と日付が入っていますから、2月の事ではなく、清く美しい月、麗しい月、何をするにしてもめでたい月、の意味となるのでしょう。
白梅は白くおしろいをした美しい女性の顔が鏡に映っているというのですから、一体どんな状況でしょう。また、珮後とは、香袋のことだそうです。蘭の香りは、実を飾った衣に香りを移したような匂いがしているのだと。
いろいろな想像しながら、謎解きのように解釈できるから楽しいと言うことがわかります。絵画を見る楽しさと似てますね。
大伴旅人が開いたと言う宴の様子を、博多人形で再現した模型が、太宰府展示館にあります。これは見ないほうが、いいかもしれません。見てしまうと、言葉だけで妄想たくましくシメージできなくなるかもしれません。
 
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