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園長の日記

2年前には戻れない「気づき」

2022/01/03

ケイト・ラワーズ著『ドーナツ経済』(河出文庫)より

 

明日から仕事始めです。年末年始の大移動が終わりました。年に一度の大きな節目を跨いで、私たちは何をしているのでしょうか。1億2千万人のうち何割が移動したのか知りませんが、移動しなかった人も含めて、私たちはどこへ出かけてどこへ戻ってきたのでしょうか。

 

一体何をしてきたのでしょうか。もちろん、大切な人、場所、家族と過ごした人たちが大勢いたことでしょう。私たちのおこなっているこの表面上の移動や出会いは、いつもの仲間の中での往還です。その裏側に「往還の意味」がきっと見出されるはずなのですが、それは、一人ひとりがこれからもずっと問い続けることになる人生のテーマでもあります。何処かから私たちはやってきて、どこからかへ還っていく。その往還のテーマです。

昨日はコロナ禍の話をしましたが、それはコロナ前とコロナ後の間の往還の物語でもあります。私たちは、2020年の春の始点と2022年の春とでは、もはや同じではないことに気づきました。もう元の世界には戻れません。いろんなことに気づいてしまったからです。

(1)私たちが地球規模の生態系に織り込まれていること。私たちの生活や経済や身体が、あくまでも地球規模の自然の一部であること。ウイルスと私たちは何万年も共生していたこと。それはワクチン接種の副反応でも、よくわかりました。

(2)被害を被った人たちとそうでない人たちの差も明らかになりました。家計への影響です。また大儲けした人と苦境に追い込まれた人の差も明白になりました。市場メカニズムの歪さ。資本主義経済の脆弱さと残酷さ。生活基盤としての公共財の不足。

(3)経済的先進国とそうでない国や地域の人たちとの格差の問題もコロナ以前からある問題。国家としてのグローバル経済のリ・デザインの必要性

(4)「人新世」として引き起こされたコロナ禍。地球規模の危機の序章あるいはリハーサルとしてのコロナ禍。最後のリハーサルかもしれないという見方もあります。

私たちは、こんなことを、くっきりと見てしまった、知ってしまった以上、もう同じ地点には戻れない、そういう意味の往還もあります。戻ることのできない旅立ちだったのかもしれません。

それは私たちの先祖も繰り返してきました。10万年前にアフリカ中央部から旅立ち、地球上に拡散しました。これをグレートジャーニーと言いますが、その間に地球はとても寒い時期があって、私たちはそれを乗り越えて、奇跡的に太陽と地球の熱代謝のバランスがとれている、非常に温かな地質年代「完新世」に恵まれました。この時代は1万2000年ほど続いています。あと5万年ほど続く予定でした。

こんな奇跡的に快適な地質年代は、40万年ぐらい後にならないと再現しません。それくらい珍しい奇跡的なラッキーな状態なのです。ところが「予定でした」というのは、もうあと10数年で「終わってしまいそう」だからです。地球上を薄く覆う大気の中の二酸化炭素などの温暖化ガスが増え過ぎてしまいました。人の経済活動が地球環境を破壊している新しい地質年代「人新世」に入っているかもしれないというのです。

その中で起きたコロナ禍です。これが何かの序章だとしたら、これから起きるかもしれない問題の影響を小さくするための、減災のような心構えを逞しくしていく必要がありそうです。これも戻れない往還です。あと数十年で引き返せない地点に到達してしまうかもしれない往路です。復路はないのかもしれません。私たちは、どこへ行こうとしているのでしょう。そしてどこへ行ったから、こうなってしまっているのでしょう。

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