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保育アーカイブ

にこにこ組「おおきなかぶ」

2021/12/20

にこにこ組(2歳児クラス)の動画のイントロダクションは、みごとな「関係の発達」のポイントが表れたものになっています。どういうことでしょうか? よく読んでみましょう・・・

会話がとても上手になり、友だちとの関わりも深まり、さらに笑顔が増えたように感じる今日この頃。

にこにこさんらしい「集団」での姿が多く見られるようになり、成長を感じる日々です。

みんなで声を揃える絵本が大好きで、「おおきなかぶ」以外にも、「おおかみと7ひきのこやぎ」や「3びきのこぶた」のおはなしも普段の遊びの中で盛り上がっていました。

・・・にこにこさんらしい「集団」での姿が、今回のお楽しみ会で伝わるといいのですが、それは一言でいうと「一緒に何かすることが楽しい」という姿になります。会話が上手くなるというのは、自分の思いや考えを言葉で表現し、また相手のいうことを聞こうとする姿が増えたと言うことです。これは相互に理解し合うことから生まれることが「楽しい」という関係に育ってきた、ということになります。そこが楽しいという笑顔も増えるのでしょうね。

一緒に何かすることが楽しいという姿は、役ぎめの時にもみられます。

配役ぎめの会議中・・・先生の声を拾ってみると・・・「おばあさんやりたいひと?」「まごがいいひと?」「犬がやりたいひといる?」「 Mちゃん、ねずみ」「きりんやりたい?」「〇〇ちゃん、何がいい?ん? わんわん? じゃあ、〇〇ちゃんはわんわんね」「・・じゃあ、わんわん2匹にしようか」「Uちゃん、ねずみだって」「ティラノザウルスがいい?!、よ〜し、ティラノザウルスね」・・と、こんな具合。楽しそうですね。

自分が何になりたいのかを、はっきりと言葉で伝えています。言葉による意思疎通が達者になるにつれて、自分の思いや気持ちを受け止めてもらうことができて、情緒は安定していくのですね。言葉で自分の気持ちや考えに道筋ができて、それまで、モヤモヤとした葛藤を抱え込んでいたものが、沈殿して意識は透明度を増していく、そんな感じがしますね。

こういう風に、満2歳から満3歳ごろに起きる子どもたちの特性を、昔のアメリカ由来の児童心理学は、「第一次反抗期」だとか「いやいや期」だとか、大人目線のもっともらしい表現で括ってみたのですが、これにはたくさんの異論が出ていて、「関係の発達」の視点から見直してみたら、子どもを取り巻く人的環境によっては、そんな特性がない国や地域もあることがわかっています。

なので、せめて日本でも、私は大人目線ではなく、子ども目線から<はがもの時代><主語時代>と呼びたいと思います。

誰もが「〇〇ちゃんは」「〇〇ちゃんが」「〇〇ちゃんも」「〇〇ちゃんの」と「は」「が」「も」「の」で主張するからです。小学生の高学年になると、日本語の文法を学びますが、その時、主語には、この「はがものや」がつくことを教わります。この助詞がついていたら、その単語や語群が文の主語です。つまり、主語とは英語でサブジェクト、別の日本語訳では主体です。子どもの主体性が、この助詞の活用とともに育っていく時期なのです。どの子どもも、精神世界の主人公(主体)に自分がなっていくのです。

とうわけで、役を決めたり、お面を作ったり、これはまさしく「自分が主役です!宣言」なのです。ぐんぐん組やにこにこ組の子どもたちは、劇遊びという架空でありながら、実はリアルな「自分の人生」という物語の主人公、ヒーローやヒロインとしてデビューするのです。

もう一つ、ここで注目してほしいのは、この時期の「関係の発達」で見逃せないのものでもあるのですが、自由に使える「身体の育ち」も著しいので(例えば、絵を描いたり、排泄が自立したり、走って移動ができたり・・・)、自分の意志で随意筋を動かして、ものや道具を使いこなすことが上手になっていることがわかりますよね。自分でできる身体的な世界も広がるのです。

それは「みんなで小道具づくり」の場面で、よくわかります。動画では「お面づくり」や「かぶ」を作る場面が紹介されていますね。紙をくしゃくしゃにまるめて・・この嬉しそうな笑顔ったら・・たまりませんね。自分の嬉しいという感情を人に伝えているカメラ目線も、いい顔ですね。

そして、かぶを作っていくとき「どうやっていくのかな?」「それがどうなるんだろう?」と、ものづくりに興味津々の眼差しで、先生のやっていることを、じ〜っと見つめていますよね。手先を器用に使えるようになって、身体的自由が以前よりも、ずいぶんと成長しているので、「もの」との関わり方に厚みや広がりが出てきているのです。かぶを抜く、と言う動作。ロープを持って引っ張るという動作。こういうことは、ぐんぐんさんではまだちょっと、むぞかしそう、ですよね。

そう考えると、「おおかみと7人のこやぎ」とか、「さんびきのこぶた」も、家やら籠やら粉やら、色々な道具が出てきて、それをうまく使いこなすことで、何かを得たり、守ったり、闘ったり、だましたり、成し遂げたりしていきます。心と身体の成長が「ものを作って使う」と言う、人間らしい営みに参加し始めていることも見えてきます。フランスの『創造的進化』で有名な生の哲学者ベルグソンは、こうした人間のことを「ホモ・ファーベル」(ものを使う人)といったのでした。

ものを使いながら、人生の主人公になっていくにこにこさん。生活の広がりの中に、育てたり、お願いしたり、力を合わせたり、強くなったりして、自分と世界の関係が広がっていくのです。これが、にこにこさんの「おおきなかぶ」の関係論的な意味です。さあ、人生の主人公としてデビューする姿をどうぞご覧ください。

「うんとこしょ〜どっこいしょ〜♪」だいすきなうたと共に、にこにこさんらしい笑顔溢れる「おおきなかぶ」どうぞ!おたのしみに!

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