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園長の日記

人権を守るための人間性

2021/12/05

もし人間性が遠い将来に向かって、今よりも少しでもよくなっていく可能性があるとしたら、私はどうなって欲しいと考えているかというと、現代人は、もっともっと他者に共感したり、優しくなってほしいと、強く思います。早く「国民国家」の発想を超えて、世界のことを力強く語る大人が増えないと困るのです。

アジアにブッダが現れた時代のその前と、その後を比べると、人間は人に対して共感する力や倫理的な力が強まっただろうと想像します。仏教が慈悲の心を広めたからです。同様にイエス・キリストが人類に奇蹟を示したものが愛の力であるように、人類は明らかに「他者への愛」の力を強める方向へ向かって、その人間性を高めているのだと、はっきりと見てとることができます。

それは宗教史だけではなく、社会学からみても、そうです。18世紀にたどり着いた自由と平等と博愛の理念は、一人ひとりの人権を守るために、20世紀には、人類はやっと「世界人権宣言」を手にしました。それでも、人類の人間性は、その理性的な力に比べて、道徳的、倫理的な力を支える「共感力」が、まだまだ足りないと思います。

現代は認知的な力が、科学や技術を大きく進展させています。しかし、人間性はどうなんでしょう。巨大な摩天楼に匹敵するだけの「温かい人間性」が、私たちにあるのでしょうか。身近な家族の中だけにとどまっている愛でいいのでしょうか。世界人権宣言を記念した世界人権デーが12月10日ですが、4日から「人権週間」が始まりました。知識としての人権ではなくて、必要なのは人間らしい包容力や優しさ、その前提になっている人への共感力が心の中を脈打っていないと、本当に必要は行動に結びつくことはないでしょう。

子どもはそれを持っているなあ、といつも思います。今日は岩波ホールで「ユダヤ人の私」を観てきました。

説明には、こう書かれています。以下、引用します。

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「終戦から74年間 悪夢を語り続けたホロコースト生存者による最後の警鐘」

ユダヤ人のマルコ・ファインゴルトは1939年に逮捕され、アウシュヴィッツを含む4つの強制収容所に収容される。終戦後は、10万人以上のユダヤ人難民をパレスチナへ逃がし、自らの体験とナチスの罪、そしてナチスに加担した自国オーストリアの責任を、70年以上訴え続けた。本作はマルコの数奇な人生を通じ、反ユダヤ主義がどのように広まりホロコーストに繋がったか世界初公開のアーカイヴ映像も交えながら映し出す貴重なドキュメントである。
“国家と人は過去の過ちを忘れていると語るマルコのインタビューは、過去と地続きにある現在に警鐘を鳴らす。”

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生存者のマルコさんの言葉を聞きながら、ナチスが400万人を殺害した事実を前にして、たった74年前に、人間というのは、こんなに酷いことをやってしまうという事実を前にして、人類の人間性というものの中身を考えた結果、キーワードは一人ひとりの「共感力」だと思ったのです。そして、ちっとも感じきれない私の感性に、私は私にとてもがっかりしたのでした。

 

 

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