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園長の日記

乳幼児はアクティブラーナーである

2021/03/06

人は一生、何かを感じ、考え、学び続けています。赤ちゃんから大人まで例外はありません。ただし学んでそれを身につけるとき、それがよく身につくためには、それを実際にやってみることが一番です。小学校以降の学習には、国が定めた学習指導要領があって、そこに学ぶ内容が教科と特別活動ごとに系統的に整理されています。文字を読めるようになったり書けるようになったり、九九を言えるようになったり、足し算や引き算ができるようになったり、いろいろな基礎・基本の学習が待っています。

その時、授業で教えてもらったことがよく身につくようにするには、知識だったらその知識を他の人に説明できるまで理解すること、技能だったら使ってみること、どうしてだろうという疑問だったら誰かと一緒に話し合ったり考えをわかり合ったりするといいのです。このような学習の方法を、「対話的で深い学び」と言われているのですが、いわゆるアクティブラーニングのことです。

年長のすいすい組10人は、あと1か月すると、小学校の学習で今いったような学習が始まります。保育園で行ってきた学びと何が違うのかというと、実はこの「対話的で深い学び」こそ、保育園で行っている遊びの中の学びそのものなのです。しかも、それは赤ちゃんからやっているのです。例を挙げてみましょう。

つい先日、すいすいタイムの様子がわらすのブログで紹介されています。みかんの缶詰ができるまでについて、子どもが「どうやって大きさの違いを分けているんだろう」と考えてみたり、きっとこうじゃないか、ああじゃないかと、語り合ったに違いありません。これは小学校でのグループ討議のようなものです。そして「そうか!」とわかったことを、子どもたちは誰かに話したがります。おうちの人に「ねえねえ、あのね、みかんの缶詰ってね」と話してくれたのではないでしょうか。学んだことを言葉で人に教えることは、人類が延々と営んできた最も得意な知識共有の手段でした。

学んだことを人に教えることは、知識の定着度が最も高いと言われています。その次に高いものが「自分でやる」というものです。これも赤ちゃんの頃から、乳幼児の独壇場です。なんでも自分でやりたがります。先生がちょっとでも面白そうなことをやった見せたりすると、僕もやる!と大騒ぎになります。私のすいすいタイムでも「わくわく実験」でもそうです。つい先日も、こんな光景をみました。

玄関先で自分の靴が靴箱から出ないので、お母さんが出してあげると、その子は<自分でやりたかったのに〜>と抗議の声を上げたのです。お母さんは、すぐにその気持ちがわかって「ああ、自分でやりたかったのね、ごめんごめん」と靴を戻してあげていました。子どものことをよくご覧になっているお母さんの、その応答的な対応は、まさしく子どもの自発性を損なわないで見守っていらっしゃいました。子どものことだからと、軽くみてはならないのであって、靴箱から自分の靴を自分で出して自分ではく、と言う意欲と態度は、学校での学習場面に置き換えるなら、自発的学習そのものです。

ヒトの脳は、何万年もの間、なすことを通じて学んできました。これはジョン・デューイが提唱した教育方法に極めて近いものなのです。彼の代表作『民主主義と教育』で「教育は、経験の意味を増加させ、引き続く経験の進路を方向づける能力を高めるような形での、経験の再構成または再組織化なのである」と述べていますが、この箇所は保育士試験に引用されています。

グループ討議、自分でやってみる、人に教える。この3つは学びの定着度が高い3方法だと言われています。私も聞いたり読んだり考えたりしたことを、こうして自分の書き言葉に置き換えるとき、知識の再構成や再文脈化が起きています。

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