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園長の日記

関係の中で育つ個人と公人

2022/07/13

子どもたちが見せてくれる姿は、ちょうどその発達にあった「人との関わり」を伝えてくれています。0歳児クラスのちっち組、1歳児クラスのぐんぐん組、2歳児クラスのにこにこ組と、まるで「子ども同士の関わりは、このように発達していくのです」という説明になっているかのように、その「発達の連続性」が描かれています。

私たちの保育で大事にしていることは、「その子らしさ」と「人間関係」なのですが、そのことを保育目標として「自分らしく、・・思いやりのある子ども」と表現しています。この二つのことは、小学校以降でも大事にしようと、国がめざしている「個別最適な学び」と「協働的な学び」と重なっています。

一人ひとりが、その子らしく生きていることと、他者との中で市民の一員としてその力を身につけていくことは、私たちが持っているそもそもの人権であり、権利なのですが、日本ではその二つのことが教育制度の中に、あまり明確に位置付けられていませんでした。しかし、2016年の教育機会確保法が成立していく頃の議論から、フリースクールや家庭学習の子どもたちの教育機会を学校での学びと同様に保障していこうという動きが明確になってきました。それは「自分らしく学ぶ」という方向性を、国も大切にしようとしている表れです。

言い換えると、その子が世界が広かっていくことは、どの子どもにも保障していくことなので、その世界の中で多様な個性が共生していく方法を学ぶことが市民性です。個人が公人になっていく、と言ってもいいでしょう。でも、ここで間違ってはいけない理念の岐路(別れ道)があります。公人が向かうのは個人の尊厳と自由を尊重する方法で、国を超えた地球市民としてなのか、それとも国家の形成者としての市民性に留まる方法でなのか、という別れ道です。

その岐路は、ずっと遠いところにあるのではありません。身近なところで私たちが行っている「人との関わり」の中で起きていることです。子どもはとにかく多様です。個性的です。私は入園案内の時に、「大切にしていることが3つあります」と言って、この理念の説明をしています。みなさん、お聞きになったことがありますよね。「まず大事にしていることは、子どもは一人ずつ違う、その違いを大切にしています」と。月齢、年齢、男女差、個性、興味関心、生活リズムなど、とにかく色々です。そんな子どもたちと家族が、共に生活を作り上げていく場所である保育園は、一人ずつが大切にされなければなりません、と。

そして、意欲と環境の選択制の関係をお伝えして、3番目に社会性、つまりしつけやコミュニケーション、協同性の話をしてきました。自分らしさと、思いやり、というキーワードがそれらを象徴しているという話です。この発達の姿がクラスの子どもたちの様子を並べて読んでいただけると、わかっていただけるのではないかと思います。小学校へのつながりは、連続性や連携というテーマが中心であり、この子ども一人ひとりの発達を、その子ならではの歩みの道筋の中で保障していくことでなければなりません。

 

 

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