MENU CLOSE
TEL

2020年 10月

親子運動遊びの会

2020/10/24

本日24日の親子運動遊びの会、いかがだったでしょうか。感染症対策上の、いろいろな制約がある中でしたが、ひとまずは開催できてよかったと、ほっとしています。時間も短く2部制という形でしたが、これまで園生活に取り入れてきたコンテンポラリーダンスのセンスを活かした<運動>の面白さを、少しでも親子、家族で共有できる機会になったとしたら嬉しいです。

会の中で青木尚哉さんもおっしゃっていましたが、頭の中でイメージしたものが身体表現になっていったとき、それは子ども一人ひとり異なっていました。自発的に生まれるその形は個性的で、その子らしいものになっていました。そこには意欲、楽しさ、恥ずかしさ、勇気、想像力などが混ざり合っていました。そうした心情は、やるたびに変わっていく姿も見られました。乳児にとっても、そばにそうした動きがあることは、とてもいい効果を生み出しそうです。

今日の運動を食事に例えるなら、今回のは高カロリーの「ガッツリ系」ではなく、体に良い「自然食」のような美食のように思われたかもしれません。子どもには「思い通りに自分の体を動かせるようにしてあげたい」と常々考えているのですが、それは「身体機能の発達」の話だけではないことにお気づきになったかもしれません。幼児の「ソロダンスステップ」には「美しく」「かっこよく」などの願いが表現されていましたよね。思い通りの「思い」には、美しく体を動かしたい、も含まれていました。

というわけで、身体の育ちの中には、強く、速く、遠くできる、などだけではなく「美しく」も加えておきましょう。その美は、意識=イメージから作り出されていくものだということも納得されます。そして、このような運動がどのように発達していくのかというと、その到達点のモデルを披露してくださいました。それが会の最後に、いずみさんとももかさんが踊ってくださったダンスです。

その美しさに私は感動しました。見ている大人も子どもも強く惹き込まれていました。今日のような運動を積み重ねていくと、このような身体につながっていくのだということがよくわかりました。子どもたちの身体表現のイメージも豊かになり「こんな風に表現してみたい」という目指す姿も豊かになっていくのでしょう。ダイエットでもファッションでもない身体そのものの美であり、動きを生み出すイメージの美でした。みごでしたね。

行事は全てそうですが、親子運動遊びの会も結果ではなく通過点です。保育園生活では今後も「身体にとっての美とは何か」の探究を続けていくつもりです。

感覚の洗濯〜柳家花緑の見方・生き方

2020/10/18

◆感覚の洗濯

昨日は朝から雨で、参加者も少なかったのですが今日18日(日)は晴れて、海老原商店にはアート作品としての洗濯物がたくさん並びました。東京ビエンナーレのプレイベントとして開かれた「感覚の洗濯」です。企画したアーティストの西尾美也さんは奈良県立大学地域創造学部准教授で、専門は先端芸術表現。「状況を内破するコミュニケーション行為としての装いに関する研究」で博士号を取得されています。

http://yoshinarinishio.net/biography/profile.html

東京ビエンナーレ2020の事務局はアーツ千代田3331にあり、そのジェネラルマネージャーの宍戸遊美さんがビエンナーレの事務局長を担当されています。当園と3331は、いずれコラボレーションすることになると思います。保育は原理的にアートを内包しているからです。

◆柳家花緑の努力の仕方

今日はその後、有楽町ホールでの「さくらんぼ教室開設30周年記念イベント」に招かれました。この教室は代表の伊庭葉子さんがマンションの一室から始めた発達障害をもつ子どもたちの学習塾で、現在は11教室2500人が通うまでになりました。イベントのテーマは「一人ひとりちがうからこそ、人生はおもしろい!」です。その記念講演として柳家花緑が落語「寿限無」と「つる」を披露しました。彼は自らが識字障害(ディスレクシア)で、その体験談を明るく愉快に語ってくれました。好きなことだったので努力ができたそうです。

花緑師匠は「掃除、笑い、感謝」を大事にしているそうで、その軽妙なトークで「なるほど」と思ったのは「感謝は今あるものに向かうからありがたいと感じるもの。だけど努力は無いものにエネルギーを使う。方向が正反対でしょ。あまり頑張らなくていい。頑張るは我を張るにつながるから」。この感謝の反対は頑張ること、という捉え方は新鮮でした。これは自己を保つ、自信を失わない生き方にとって大事です。「得意なことをちょっとずつ伸ばしていく」「苦手なことは自分なりに工夫する」「大丈夫は魔法の呪文」「みんな違ってみんなふつう」・・こんな花鹿語録が満載の時間でした。

「月白風清」青山で尺八とダンスのぶたい

2020/10/03

「満月の夜に、尺八とダンスのしらべ」。こんなタイトルのイベントに2日(金)に参加してきました。

ダンスはご存知、青木尚哉さん。日本のコンテンポラリーダンスの第一人者です。保育園の24日の運動会をいま構成してくださっています。この夜は尺八とのコラボレーションです。

舞台となったのは、表参道駅から5分ほどの公園内にできた小さな野外ステージ「ぶたい」。都営団地の再開発「北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト」でできた高層マンションの裏手。遊歩道に作られた小さな雑木林にせせらぎが流れ、虫の音と秋風が気持ちいい夜でした。夏井敬史さんによるエレクトロニクスの環境音楽が、尺八とダンスを引き立てます。

 

尺八は黒田鈴尊(れいぞん)さん(37歳)で今、注目のアーティストです。人間国宝の二代鈴木鈴慕と三代青木鈴慕に師事、国際尺八コンクール2018in Londonで優勝しています。プログラムによると、幼少よりピアノを学び、武満徹の「November Steps」を聴いた事が契機になり20歳で尺八に転向したそうです。青木さんが今回の企画に共演を誘ったそうです。

(この写真は黒田鈴尊さんのホームページより)

人の体は、それ自体美しいと思うのですが、動きがさらに美を生み出すためには、それにふさわしい環境が必要だという事に、このイベントで実感しました。これは当たり前のようでありながら、忘れがちです。秋の満月の夜の野外。風と光のなかに響き渡る音楽を、身体が即興で「それ」を見えるようにしてくれます。もちろん、青木さんがダンサーだからできることなのですが。環境と会話しながら体を自在に動かすことの美しさ。

尺八の音はまさしく「和」なので、月や雑木林にふさわしいのですが、青木さんのダンスは、その和に溶け込むような舞いでした。舞台で見る西洋的なダンスではなく、日本の舞踊やアジアのエスニックテイスト、モダンなステップなどを感じた方もいたでしょう。私が一番「ぞくっ」としたのは、やっぱり「間」や「呼吸」でした。高揚と静寂を沈黙がつないでいくのです。見事でした。

青木さんは、舞台演出もされる方だということも強く再認識しました。光や照明も大切な装置です。

このようなイベントは毎月、満月の夜にイベントを開催するそうです。主宰する「ののあおやま」(2020年5月オープン)の水野さんは記念すべき第1回を青木さんに依頼しました。その理由は「なぜ、ののあおやま、という名前にしたのか」という解説でわかりました。

「のの、という言葉は、日本で伝統的に使われてきた言葉です。自然の尊さに包まれ、その有り難さを感じられる場所になること、そして感性を磨いて共感する仲間たちを集め街に新しい魅力を育てていくことを願っています」

月が毎晩、少しずつ姿を変えるように、自然と人生に同じ日はありません。その日しかいない風や姿に日本と美しさを感じることのできたひと時でした。

 

 

top