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園長の日記

ザリガニがやってきた

2019/09/14

◆ニホンザリガニがやってきた

大きなザリガニが園にやってきました。お腹に子どもを抱えている「お母さんザリガニ」です。じっとみていたら、その健気な「母性」にいても立ってもいられなくなり、空気ポンプを探しに「ライフ」へ出かけましたがありませんでした。どうして、居ても立っても居られなくなったのかというと、お腹に抱えている卵に新鮮な水を与えようと、母ザリガニが卵を前後にずっと揺すっているのです。卵には新鮮な清流、つまり酸素をいっぱい含んだ水が必要なのです。少しでもストレスを減らしてあげようと、牛乳パックで「ザリガニくんのお家」を作ってあげました。

◆こうしてメダカはいなくなった

このザリガニ、実は事務長の神宮司さんが13日に茨城の田んぼから連れてきてくれたのです。その田んぼから収穫されたお米が玄関のところにある「むかしのお米」です。その田んぼは、一年中、水をたたえていて乾くことがありません。耕さない田んぼ、ということで「不耕起栽培の田んぼ」という言い方をすることもあります。日本の伝統的な田んぼは、みんな「不耕起栽培」でした。それが機械化されるようになって、特に稲を刈る時に、田んぼに水が溜まっていると稲刈り機が前に進まないので、田んぼの水を抜きます。その時、田んぼの水に棲む生き物は、死んでしまいます。その結果、日本からメダカがいなくなりました。メダカがいなくなると、それを食べていたザリガニもいなくなります。そしてザリガニを食べていたサギなどの鳥もいなくなります。水をたたえた田んぼが日本から消えていった時、日本のコウノトリやシラサギなどの姿も消えていったのです。ここに述べた生き物たちは、だんだん絶滅危惧種になっています。

◆ 神宮司さんから教えてもらった大切なこと

(せいがの森のビオトープ)

実は、この話は神宮司さんから教えてもらったのです。それも20年ぐらい前に。その時は、その田んぼは「めだかの学校」という名前で知られていた有名な田んぼでした。その田んぼから「クロメダカ」をペットボトルに入れてもらって、せいがの森保育園(当時)の庭に造った「小川のビオトープ」に放しました。「めだかの学校分校」という名前を頂戴して、その田んぼとは連携を図りながら、そのお米で収穫祭のおにぎりを食べたり、小川の水を綺麗に保つ活動をしていた時期があるのです。そのビオトープを園庭に造ってくれたのが、神宮司さんなのです。生態系の面白さを教えてもらいました。もっとも印象深く残っている言葉は「地面がなくなると、鳥がいなくなる」という生態系のピラミッドの話でした。

◆一目でわかる「自然」の意味

その不耕起栽培の田んぼの隣には、耕して農薬を使う普通の田んぼがありました。車がやっと通るくらいの道一本で区切られていました。初めてそこに立ったとき、2つの田んぼの違いが一目でわかりました。どうしてだと思いますか。日差しの強い夏の日でした。多分、みなさんをお連れして、その場に立ってみれば誰でも「なるほど!」と、その差がすぐにわかるはずです。

不耕起栽培の田んぼの上には、サギが何羽も歩いていて、その上をツバメがビュンビュンと舞っています。その光景をみれば、一目瞭然、生態系とはこういうことだということが、はっきりとわかります。農薬も使わないから、虫もいて、それをツバメがとっているのです。私はその場所に、日本のすべての小学生を一度、連れて行きたいぐらいです。「自然と守る」という意味が、これほどわかりやすく伝わる風景はないのではないでしょうか。

この田んぼに、家族揃ってバス遠足で出かけて稲刈りをするという「敬老の日」のイベントを9月14日にできないかと計画していたのですが、茨城県なのでちょっと遠すぎることと、田んぼを経営している団体のスケジュールと合わずに実現しませんでした。その代わり、神宮司さんが園からは昨日1人、その田んぼの稲刈りに参加してくれました。

◆生態系の中で育まれる命の連鎖

田んぼには、人影が映ると逃げるメダカがピチピチと泳いでいて、緑色の藻が酸素をだしていました。その中に水生動物が色々います。カエルやタガメやヤゴが棲んでいました。それらを捕食するザリガニもいます。さらにそれを狙ってサギも長い足を上げ下げして歩いているのです。そこに棲んでいたザリガニに「千代田せいが」にきてもらったわけですが、多分、神宮司さんは「ザリガニくんには可哀想だな」と思ったに違いありません。無理に頼んだのは私です。子どもたちに見せてあげたくて。

このザリガニのお母さんのためにも、子どもたちを孵(かえ)してあげましょう。稚魚ならぬ稚ザリガニになるとき、卵が透明になっていきます。新鮮な水を与え続けながら、赤ちゃんザリガニが誕生するように飼ってあげましょう。

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