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保育アーカイブ

ちっち組(0歳児クラス)保護者会~イヤイヤは行為主体の「自己コントロール宣言」

2024/01/26

マイケル・トマセロの最新刊「行為主体性の進化」を読み始めています。まだ第3章に入ったところだったのですが、ちょうど今日25日(木)の夕方、ちっち組(0歳児クラス)の保護者会で、あのイヤイヤ期を説明することになりました。0歳児クラスと言っても、4月や5月生まれの子は、入園したと思ったらすぐに満1歳になっているわけで、この1月の時期には春にはもうすぐ2歳になるという時期なのです。

そこで最近、無藤先生に学んた「遊びの定義」が私にとっては、とてもすっきりと合点がいっているので、私なりに遊び性として整理して活用(12月26日の「園長の日記」など)しています。いかにもう一度ご紹介します。

「遊びは思いつきをする楽しさと,そこから少し先の目標を立てて実現しようとする課題解決の充実感からなる。それは物事の可能性を知ること。私(無藤先生)の言い方では環境からの呼びかけに応えて、世界性へと開かれること。そして、そこでの目標を立てての課題解決の練習となる」

この遊び性(プレイフルネス)については、先日のお楽しみ会(幼児)の冒頭の挨拶の中でも、お伝えしましたね。この遊びの中で見つかる目標の中に、自分のやっていることを「見てほしい」ということが入ってきて、その目標を実現しようとして、もっと「合奏」をよくしたいとか、うまく人形劇を見せたいとかの「協同性」も育ってきたという年長さんの姿をお伝えしました。

それと同じように、赤ちゃんが「自分で!」なんでもしたがる時期をどう理解するかというときに「コントロール=制御」という、自分でしたがっている能動性の発露だと見てみたらどうだろう、という話をしました。

イヤイヤ期については2020年の1月中旬に(ちょうどコロナ禍が始まる直前ごろ)、保護者の方々とコーヒータイムで語り合ったことを思い出します。そのことを、何日かかけてこの「園長の日記」で、井桁さんや大豆生田さんや汐見さんの見解も色々と紹介しながら振り返ってありますので、参考にしてもらいたいのですが、これに無藤先生の遊び性の分析を加味して理解すると、私なりによく納得がいくのです。思いつくことも表象、再現、自己模倣と捉えることで、自己イメージの再現欲求を「遊びの中に生まれる達成したい目標」と考えれば、話が繋がるように思えるからです。

つまり、保護者会で説明したのは、こんな内容でした。

この時期になると記憶力もずいぶんありますから、世界から呼びかけられて、思いつくことは自分の中で湧き起こる過去の楽しい経験や感情もあるでしょうから、それをもう一度味わいたくて、「あれだ!」と思いついて、「自分で!」と思うんだけど、だから周りからの提案は「イヤ」なんでしょう。でもどうやったらその目標を実現したらいいのか、まだよくわからない。達成するための課題が見えていない。あれを味わいたい!自分でやりたいんだ!だけど、何をどうやればそうなれるのか、自分で発見できない!というジレンマ感、課題解決の筋道と結びつかない感覚、のようなものかもしれません。

その自分で、自分を制御したいという自律の欲求は、生態学的機制(バイオロジー)が、個体の心理学的機制(サイコロジー)で補完されていくのでしょうから、そこに自分で自分を制御したいという行為主体性(エイジェンシー)が見えています。イヤイヤ期はとても大事な主体性の第一歩ということでしょう。あの「イヤ〜!!」というのは、赤ちゃんの自己コントロール宣言なのでしょう。そう思ってあげてみませんか?

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