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園長の日記

体験と体験の関係から探究の質を考える

2022/10/21

最近、園内研修をした「プロジェクト型の活動」にしても「つながる保育」にしても、子どもの興味や関心から継続的に発展してく活動事例は、その多くが年中から年長にかけてのものが多いので、その個別のドキュメンテーションを保育マッピングしていく手法は、対象が限られてしまいがちです。では赤ちゃんから2歳〜3歳ぐらいまでの活動としては、どんな自由遊びの環境や保育記録媒体がいいのでしょうか。子どもの体験がどのように発達に影響しているのかという、キーワード「総合的な保育」の視点から、昨日までの話を続けてみます。

今日夕方の時間、園の3階では4歳5ヶ月の男の子YRくんが画用紙を切って丸めて十字形の剣のようなものを作っていました。その隣ではこの11月に満6歳になる男の子Y Sくんが、ダンボールをハサミで切り、養生テープやガムテープを上手に手で切って、物を入れる箱を作っていました。二人とも手つきが上手です。

特に年長のY Sくんはガムテープを右手で「ビリビリ」と伸ばし、ちょうどいい長さになると左手の親指の爪の先を、テープを切りとる始点のところに持っていくと、右手をねじるように捻って「ピリッ」と引き裂くように切り取ります。慣れています。早業です。ハサミは使いません。「ビリビリ」「ピリッ」、「ビリビリ」「ピリッ」、と繰り返しています。

その様子を見て、たった1年の違いなのに、こんなに手先が発達するものなのか、と感心します。いったい、この発達を促す体験はどこからきているのでしょう? 答えは繰り返される自発的な遊び(つまり探求)からです。

当園では、2歳児クラスから制作遊びの場所がゾーニング化されています。3階の幼児の場合は満3歳から満6歳までの子どもたちが一緒に使うので、その習熟度が違う子どもたちが見合ったり、手伝ったり、教えあったりします。

基本的に子ども同士が見よう見まねで学び合うことが多いため、人間のもつ模倣力や利他性など、つまり協同性(は0歳からある)を活かし合う人的環境デザインになっていると言っていいでしょう。

この習熟のプロセスは、毎日のようにどこかの時間で遊んでいる子もいれば、週に数回、あるいは週に1回など差があります。ゾーンには製作(アトリエ)以外に絵本、ごっこ、積み木、パズル、観察、運動などに分かれているので、どこも満遍なく遊ぶというよりも、何をするかで使う頻度に濃淡があります。しかし、好きな遊びほどそこで過ごす時間や活動が多いので、知識もスキルも蓄えられ、制作遊びならその表現力も大きく伸長します。

もしゾーンに置いてある活用リソース(資源)を用いた自由遊びの活用頻度を子どもごとにデータ化し、縦軸に習熟度を表す3次元マップにその発達の軌跡を描くことができれば、スパイラルアップしていく様子を見てとることができるでしょう。筒の作成から箱作りまで、そこに必要とされる知識やスキルや思考力や表現力の習熟の軌跡を可視化できます。学びに向かう力(つまり探究心)を描くことになるのかもしれません。そういうことなら、これで「資質・能力」の一面を描くことになるでしょう。

もちろん発達は園だけの「経験」ではないので、家庭などの場所での体験も加味しないといけないのですが、平日のゴールテンタイム(睡眠サイクルからみた活動にふさわしい時間は午前9時ごろからお昼ごろまで)は、ほとんどが保育園で時間ですから、大きな影響をもつのは否定できません。

熱中した遊びはあまり間隔を置かずに継続的に行われていれば、それは「プロジェクト型」や「つながる保育」と同じように、習熟していくことになります。発達の連続性を保障するものは、このように何かの方式や方法というよりも、探求=遊びそのものの性質のつながり、体験のつながりを冷静にみていくことが不可欠です。残るものは学びに向かう力が発揮されるような「望ましい未来を作り出す力」が、実は今を生きる生活コンセプトにあるということを、つないで考えることしにないと、良質な教材、つまり思わず遊びたくなるような環境構成にならないからです。

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