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園長の日記

人ときちんと向かい合うこと

2022/08/15

「じゃあ、あなたは、私のこと、ちゃんと向かい合ってくれたの?」。もし大事な人から、こんな言葉を言われたら、どうしますか? 重い言葉だし、真剣さを求められる言葉ですが、人と関わる上で大切ことであることは間違いないでしょう。

特に好きな人との関係において「向かい合う」という意味は、広くて深いものです。小説や映画には、恋愛関係をめぐって、このような対話が登場する場面がよくあります。相手に正面から向かい合うということは、誠実さや親切さ、真心を持って接するといったこととも響き合うものだと思います。特に愛の証として、心の態度を示す言葉がちゃんと向かい合うと言う表現になることがよくあります。

会話と対話の違いについて考えることが最近増えました。誰かと会えば、挨拶にしても雑談にしても、すぐに会話が始まります。言葉は人との人の間の潤滑油のように使われることも多いのですが、そういうものではなくて、大事している思いや切実なことなどを伝えたい、分かち合いたいというときに紡ぎ出される言葉のやりとりは「対話」と言った方がいいものになるでしょう。

親子で交わす話は会話でしょうか、それとも対話でしょうか。親子の会話?、それとも親子の対話? たぶん、想像ですが、親子の会話といった方がいいことが多いのではないでしょうか。では子どもたちにもそんな違いがあるだろうかと、遊んでいる様子を見ていると、その違いが見えてきました。

たとえば、何かの話し合いが始まる時です。今日15日はこんな場面がありました。運動ゾーンは人数が多いと遊びにくいので、その時間はすいすいタイム(年長さんだけの時間)として人数が制限されていました。

ところが、らんらん(4歳児クラス)のIHさんが「入れて」と頼んでいます。最初は「だめだよ、今はすいすいタイムだから」と拒んでいた年長さんでしたが、どうしてもやりたいと交渉して、ネットではなく下の空間なら遊んでいい、ということになりました。そのやりとりを見ていると、子どもたちは何かを決める時、とても真剣です。だからこそ、時にはケンカにもなるのですが、その「対話」の積み重ねは、集団で生活していると、いろんな場面で発生します。

それをさらに「対話」がじっくりと、できるように場所を設定したものがピーステーブルという空間です。そこでは、その都度、起きる会話にしても対話にしても、その場では深まらない時、相手の意見や考えをきちんと聞き、また自分の意見や思いをしっかり述べていいという体験を保障するための空間です。

「対話」専門ゾーンといってもいいでしょう。このようなちょっと改まった空間を設けることは、大事なことです。そして対話が複数で行われるとき、輪になって行えば「サークル対話で」すし、大人なら座談会やシンポジウムということでしょうか。その時の空間のデザイン次第で、引き出される対話の内容も質も方向性も変わってくるように思えます。

生活の中に対話のある生活を意識すると、それはちゃんと向かい合う関係を作り出し、大切にする心も引き出されてくるのかもしれません。向かい合う対話を積み重ねて初めて、信頼というものが芽生えると私は思っています。そうなので、私は園長になった年から、先生たちには必ず「信頼と対話」ということをモットーに掲げ、大切にしています。会話ではなくて対話のある生活が、生きていく情熱も生み出していくような気がしますが、いかがでしょうか?

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