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園長の日記

子どもの力が使われて育っていく2つの時間

2022/05/30

(園だより6月号 巻頭言より)

先月は社会情動的スキルに焦点を当てて、見通しを持った生活をしていこうと書きましたが、今月(6月)も引き続き、そうした非認知的能力が存分に発揮できるような生活を創り出していきたいと思います。その時に、私たちが共有しておきたい言葉は、OECDが提唱している社会情動的スキルを表す次のフレーズです。子どもたちに「目標を達成し、他者と協力して効果的に働き、自分の感情をコントロールする能力」【A】をつけてあげたい。このことです。

そもそも、子どもたちはもともと持って生まれてきた力(生得的な力)を使って成長していくところと、体験することで身につけていく(学習する力)ところが組み合わさって成長しています。遊んで、食べて、寝て、それぞれの体験の中で、この二つの力が働いて、その子らしい人格とスキルが形成されていきます。室内で遊んだり、戸外で思いっきり体を動かしたり、いろんな体験が毎日行われていますが、この二つの力がよく働く場面はどんな時なのでしょう?

 

私たちには一日24時間が公平に与えられているのですが、どんな時間の過ごし方をするかによって、それは全く異なったものになります。よりよい過ごし方、というものがあります。それは、次のような大きく2種類の時間に分けることができます。一つは毎日繰り返される同じ流れ、手順の活動の塊です。①登園してから遊び始めるまで②8時30分ごろからのクラスへの移動③ゾーン決め④お片付け⑤お集まり⑥自由遊び⑦散歩のルート⑧昼食の時間⑨絵本の時間⑩お昼寝や休憩・・その後もお着替えやおやつの時間、お帰りの会、などそれぞれの活動のまとまりがあります。生活の活動要素と言ってもいいでしょう。

どれでもいいのですが、例えば⑧の「さあ、お昼ご飯にしようか」ということになれば、遊んでいるものをお終いにして、元あった場所に戻し(お片付けは別の人がまた使えるように元に戻すという活動で、何もなくしてきれいにするということではありません)、手を洗い、配膳の場所へ移動し、順番を待ちながら「あれはこれくらい食べたい」という見通しを考え、量を言ってよそってもらい、好きな場所へトレイを運んで座って待つ・・・このような手順をスクリプトというのですが、この中に、小さな【A】がたくさん詰まっています。言葉も使って知識と技術も身につけていきます。

もう一つの種類の時間は、遊びの時間です。とくに子ども同士が作り出す遊びの中に、子どもの自身の興味や関心から、あるいは心動かされた心情や感覚から、もっとこうしたいという意欲によって作り出されていく創造的な時間です。この中にもたくさんの【A】が起きています。子どもの持って生まれた力は、この2種類の時間を通して、膨大な体験がつながっていき、繰り返し使われる力が豊かに育っていくのです。

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