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園長の日記

子どもと木登り

2021/10/15

日本教育新聞で記者をしていたとき、園庭で木登りをさせている幼稚園を紹介したことがあります。昭和時代の話なのですが、幼児が木登りをするというのは、その頃でもすでに珍しいことになっていました。私が平成9年から22年いた八王子市の「せいがの森こども園」には、広い園庭に藤森先生が植えた「こぶし」の木があって、それは木登り専用でした。園庭のない千代田せいが保育園では、木登りができるなどと思ってもいなかったのですが、今日15日、偶然にも年長のすいすいさんが木登りを始めると、僕も私もと列ができて、木登りに子どもたちの熱い視線が注がれました。

「馬の水飲み広場」でのこと。ここは、5日に遊んだ時は、草ぼうぼうだったのですが、翌日6日にはすっかり雑草が刈り取られた原っぱになっています。草ぼうぼう状態は、それはそれで虫がいたりして面白かったのですが、草が刈られて平になると、走り回ったり、別の虫を探したり、アゲハを追いかけたり、長縄跳びをしたり、だるまさんがころんだをしたり、氷鬼をしたり、楽しい遊びを見つけ出していました。

そして、その一つに「木登り」が急浮上しました。KSくんが自分の力だけで登り始めて登れたので、安全な降り方も教えてあげると、何度も繰り返し始めました。それをみていた他の子たちも刺激を受けて、群れができるほどでした。

安全に木登りができるようになるには、大切な決まりがあります。それは「全部自分一人でやる」というルールです。手が届かないからと、持ち上げてあげたり、手伝ってあげたりしてはいけません。自分一人で登ることが鉄則です。下手に手伝うと、手順を飛ばしてしまうので危ないのです。手順とは「まず右足をここにかけて、左手でこっちの枝をこう握り、次に左足をここに持っていって、体をこう起こして、次に右足をここに移動させて・・・」という手順のことです。このルーティンを覚えていくことが、安全な木登りのこつなのです。

最初の枝に登れないうちは、その木に登る資格はないのです。自分なりに登れる木を見つけるしかありません。それを飛び越えて高い枝に乗せてあげると、自分で降りることができず「助けて〜」「抱っこお〜」となります。これをやってあげると、自分で登れなくなり、試行錯誤しながら手順を覚えないので、危ないのです。試行錯誤するときに、こっちの向きになると怖いとか、そっちに足を持っていくとバランスが悪いとか、自分の体や重心を感じながら、最もいい手順を見つけることができるのです。

これはボルダリングの競技に似ています。手足をどんな風に動かしていくか。みていると上手でした。運動ゾーンでクライミングやネット遊びをしてきたので、木登りにも応用できたようです。あまり怖がる感じもありませんでした。

実は、運動ゾーンに「目の荒いネットの方がいい」と判断したのは、前の園での木登り遊びの経験があったからです。自分の手足をバランスをとりながら、意識しながら動かしていくという動作が、必ず集中力と体幹を育てると確信していたからです。この広場へ行くと、一旦は木登りをする、というパターンが定着するかもしれません。そういう意味では、後で今日は木登り遊びの記念日になるかもしれません。

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