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園長の日記

オリンピックにみる「動感」と「美」

2021/07/28

園だより8月号「巻頭言」より

日本人で最も金メダルをたくさん取った人がいます。3大会で合計8個、銀と銅を含めると12個で現在もその記録は破られていません。メキシコ、ミュンヘン、モントリオールに出場しています。その人は加藤澤男さん。

加藤さんといえば「美しい体操」で有名な選手でした引退後に国際体操連盟(FIG)の技術委員を20年務め、今は筑波大学・白鵬大学の名誉教授をされていますが、小冊子「スポーツゴジラ」(第50号)で「美の秘策」という面白い話をされています。

それは運動における「美」や「醜」の判断は、自分が動いて体験する「動感」から育つというのです。幼児教育の運動で、そのような観点はあまり語られないので、面白なあと思います。体を動かす運動の感覚の自覚から、美が生まれるというのです。

 

運動競技にはルールがつきもので、勝敗や優劣の判断には多かれ少なかれ人間の判断が関与します。審判のジャッジ一つで勝敗が左右されることがあります。体操のルールも色々な変化があったそうで、昔は「規定演技」というものがあって、全選手が事前に定められている課題をこなして、その出来栄えを競争していました。加藤さんにとっては、それが面白かったそうです。

今は、演技内容は自由です。体操には床、跳馬、鉄棒、鞍馬、吊り輪、平行棒、平均台、段違い平行棒などがありますが、採点は2007年以降、技の難しさ・組み合わせ・構成からなる「Dスコア」と、技の美しさや正確性など演技の出来栄えを示す「Eスコア」の合計に変わりました

Dスコア」は加算方式なので上限がありません。一方で「美しさ」が入っている「Eスコア」の方は、減点方式なので10点以上になりません。「美しさ」よりも「難しさ」の方が評価されるようになってきたそうです

保育は五感の体験を大切にします。見たり、聞いたり、触ったり、味わったり、嗅いだり。さらに体を動かす感覚を運動学では「動感」と呼び、その体験の積み重ねを体が記憶して学習していることになります。

ここ連日、オリンピック選手の演技に魅了されている日が続いています。日本の男子体操は惜しくも銀メダルでしたが、その差は0.1ですから、この差について加藤さんに話を聞いてみたくなります。

難しい演技の習得の差の競争。そこで積み重ねられる心身の「動感」経験。強さの中の美しさ。そんな感性も同時に育まれるといいな、と思います。そしてまた目線で競技に至るそれぞれのアスリートたちの物語や精神性にも心動かされます。そこがまた美しいと感じます。結果と同時にその過程にこそ生き方「美しさ」を感じて素敵だと思います

今年もダンサーの青木尚哉さん達に遊びにきてもらいます。気持ちよくリズムに体を動かす楽しさの中に、かっこよさや美しさを感じる体験も大切にしていくつもりです。

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