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見守る保育(保育アーカイブ)

必要なことを選択できる育ち(共同主体性の育ち)

2024/03/27

来年度の保育の年間計画が、出揃い始めました。各クラスの新しい担任がこんな1年にしたい、という保育目標を言葉や写真で表現しています。その内容は4月のクラスごとの保護者会で説明させてもらいますが、今年は子供が主体的に関わる環境の有りようを、乳児の3つの関わりの視点から10の姿までを、かなり具体的なこどもの姿として、つなげて表現することができそうです。

乳児の身体的な発達と思われている視点を、自己との関わりの視点と読み変えることで、行為主体性が、共同主体性に成長していく事例を並べてみようと言うわけです。例えば、ある遊びを眺めていた子供が、その遊びに入った途端、その決まりを守る必要があり、それを守れなくなった時、例外条項を共有していることに気づきました。タイム、透明人間、トイレ、お茶を飲みに行く、などなど決まりを守らなくても良い理由を宣言していくのです。まぁ律儀だなぁと思っていたのですが、ここに共同主体性が機能していることに気づきました。

これまで選択めぐって、自分のやりたいことを選択すること、他者との関わりの中で、身につけていく社会性の両極を橋渡しするものとして、「発達に必要なことを選択できるようになる」と表現していたのですが、これこそ、共同主体性の育ちと位置づけてみようと言うわけです。

 

好きだから生まれる目標と練習

2024/02/22

好きなことを自分で見つけてその目標に向かって試したり、工夫したりしている姿を見ると、やっぱり、それぞれに始まる「遊び」がいかに大事か、と思えてきます。何日も前から練習していた子どもたちによるダンス「怪獣の花唄」が、今日の誕生会で披露されました。誕生会そのものは、わらすのホームページでのブログや、アプリのクラスドキュメンテーションを見ていただくとして、担任からこれまでのいきさつを聞き、気持ちよく踊っている子どもたちを姿を見ていると、こんなことを想像していました。

この子たちは「いいな」と思うお友達のダンスを何度も見たそうです。ダンスを始めた子たちは主にNちゃんとMちゃんの2人で去年夏ごろから。2人とも同じ小学校に姉がいて、オリジナルの振り付けをした「怪獣の花唄」に夢中になっており、その姉の影響受けた2人が保育園でもダンスをしだしたのがきっかけです。

バトントワラーを習っているKちゃんもダンスが好きなので、ちょうど同じ頃、時々、見せあったりしているうちに、周囲に広がっていったそうです。発信源2人の影響が大きいのは、周囲に「いいな」「たのしそう」「やってみたい」と思わせる力があったからでしょう。

最初の2人はそれぞれ姉がやっているダンスを身近に見たり、おそらく行事で行われた録画のビデオを何度も見たりして、その音楽やダンスの「完成形」がイメージされていて、それを再現して楽しんでいるときは、本人はいい感じになっていると思っていそう。みるからに、自信を持ってやってます。ここにも個別最適な学びと協働的学びがあるように思います。言葉による対話と言うよりは、身体的表現による対話があるからです。

それからもう一つ。個別最適な学びの発生に関わる大事なポイントだと思うことですが、最初に「いいなぁ、楽しそう、やってみたい」というのがあるかどうか。そういう出会いがあるかどうか。思わずやってみたいと思うような活動と、偶然出会う可能性の高い場が用意されているかどうか。新しい世界や時代が紡ぎ出されるようなネットワークがあるかどうか。

「みんなの前でやるのは恥ずかしいと言う感じだったのが、お楽しみ会をきっかけに、見せたいと言う気持ちが高まっていったように思います」

このように言う担任の捉えている子供の変化は、行事を通じて表現し合うことが学び合いや対話になっていると言うことなのでしょう。

そう考えてくると、よく「結果よりもプロセス」とか「努力の過程を大事に」という話があるのですが、それはそうなのですが、前提として大事なのは、やはりそれが好きだということでしょう。努力は好きだからこそ自然に生まれるといいですよね。努力の前に、その前に「楽しい」「面白い」がしっかりあって、そのちょっと先に見つかっていく目標という関係が大事な気がします。この事は、平凡な結論のように見えますが、新しい世界が開かれていく可能性に結びつくように、遊びというものが機能しているんだと考えると、遊びはとても大切なことだと思えてきませんか?

 

成長展の動画の説明(前文)ができました!

2024/02/21

あさって24日(土)の園の行事「成長展」のために、先生たちがクラスごとに3〜4分ほどの動画を作成しました。テーマは戸外遊びです。私の役割はその動画のイントロダクションを作ること。全体を通して、どんなことが描かれていて、どういうあたりに注目してほしいか、またその見方の提案のようなことを述べることになっています。

そこで0歳から1歳、2歳、3歳、4〜5歳クラスまで5本の動画を通して見てみてみました。成長展はそもそも子どもの育ちと自らの保育を振り返る行事で、主に「教育の5領域」で振り返るので、まずはそのこと、そして発達の過程ではその成長のその時期ごとに必要な経験をすることが大事なこと、また活動の中には遊び性が溢れていて、その過程の中に目標の達成に向けた問題解決プロセスが含まれていて、その真剣な試行錯誤ぶりを見てもらいこと、その過程は私たち大人がやっていることの練習のようになっていませんか?という提案を述べる、ということにしました。

でも、短くないといけない。せいぜい1〜2分で聞いてわかるような文章でないといけない。この例えでいいのかな、ミスリードしてないだろうか。動画は、明日22日に流しますが、そのイントロダクション(前文)のところだけ、ここに先にご紹介します。動画は明日までのお楽しみに。

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成長展 特別展示〜戸外遊びから考える「環境の広がり」〜

私たち保育者は、子どもの育ちを「教育の5領域」から捉えています。健康、人間関係、環境、言葉、表現というものです。これは子どもの経験を分析的にみたときに含まれている要素のようなものです、料理に例えると、タンパク質や炭水化物、ビタミンやミネラルなどの栄養のようなものに似ていますね。

そう考えると、赤ちゃんの頃からなんでもよく食べるようになって、栄養が身について大きくなっていくように、教育の要素も子どもたちの心と体にとってなくてはならない栄養のようなものです。成長展では、栄養が身についていく様をいろんな切り口でご覧いただきたいと思っています。いろんな料理を美味しそうに食べている姿と言っていいでしょう。

その中で、今年の特別展示は、クラス別の動画を作ってみました。千代田せいが保育園は園庭がない保育園ですが、それをハンデと考えないで「地域を園庭のように活用しよう」と考えて、園内だけでは体験できないことを、散歩やバスでいろんな公園に出かけたり、自然の中で戸外遊びを楽しんできました。今年はその様子から、子どもたちの成長をとらえてみました。

子どもの発達には、その時期その時期に、その年齢に相応しい必要な経験というものがあります。これは適時性とか敏感期と言われたりするように、その時期だからこそ大事なものであって、それは先取りして行うものでもなく、また個人差もあるので同じ時間や場所で一斉に行うこととでもないでしょう。

さまざまな欲求が満たされて情緒が安定すると、好奇心を持って探索を始め、自ら環境に関わって、その関わり方と意味に気づいていくことを繰り返しています。それが遊びです。室内の探索でも戸外での散歩でも、遊びの中でいろんなことを身につけているのです。

遊びというものを、また環境からの呼びかけに呼応しながら面白いことを見つけると、その中に子どもなりの目標を立ち上げて、その目標を達成しようとして、いろんな問題解決にとりくんでいます。全ての遊びにそれがみられるので、そういう目で見てみてください。遊びは自分で課題を見つけて自分で解決していこうとしている真剣な取り組みなのです。それはまるで大人の私たちが仕事の中で、答えのない課題を解決しようとしていることと同じ構造になっていて、将来の課題解決の練習をしているかのようです。どのように自分で目標を定め、そのための課題を発見して解決しようとしているのかを、ぜひご覧ください。

 

 

子どもの葛藤と忍耐を経て育まれる信頼する心

2024/02/19

ぐんぐん組のブログをご紹介します。タイトルは「葛藤と忍耐と信頼と・・」です。

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お部屋で遊んでいたとき、Rくん(2歳5か月)が持っていたレゴブロックが欲しくなってしまった、Cちゃん(2歳10か月)。いつもみんなが「ケータイ」に見立てて使っているものだったので、お人形の赤ちゃんのお世話ごっこに使いたかったようです。

みどり色のブロックが2つと、青色が2つ。同じ形のものが全部で4つ、Rくんの手元にあります。
Cちゃんも欲しいけど、まだRくんが使ってるんだよねぇ…と大人に受け止めてもらいつつ、涙ながらに悔しい気持ちをこらえるCちゃん。
「Cちゃんは、何色がほしいの?」と聞いてみると、「みどり」と言います。

さて、ここからは大人の腕の見せどころ?です。
Cちゃんの代わりに、Rくんにもお話を聞いてみます。どうすれば『貸してあげようかな』と思ってくれるかなぁ…うまく交渉できるでしょうか? 力ずくで取ってしまうわけにはいきません。伝え方やお願いの仕方、距離感…大人なりの交渉術を、実践してみます。
「Cちゃんはみどりが欲しいんだって。(・・・) Rくんが使い終わったら、貸してくれる…?」などと少しの間 Rくんに語りかけていると、最初はヒートアップしていた名残りなのか「ダメー」と言っていたRくんも、そのうち 「うん(終わったら貸すよ)」とうなずいてくれました。
子どもたち、言葉はだんだん巧みに使えるようになってきているけれど、お互いの気持ちがぶつかり合っていたりすれ違っていたりする場面となると、やっぱりまだ大人のフォローが必要なことも多いですね。
でも、Rくんとのやりとりを一緒に聞きながら、Cちゃんも落ち着きを取り戻し、Rくんが貸してくれるのを大人と一緒に待っています。
「Rくん、終わったら貸してくれるって。それまで(お人形の)赤ちゃんのごはんでも作って待っていようか」とCちゃんに伝えると、すこしホッとしたのか、Cちゃんも気持ちが切り替わります。

「やりたい!」「ほしい!」「わたしの!ぼくの!」と、最初こそ 気持ちと行動が先に行ってしまう瞬間もあるけれど、涙ながらでも、大人に寄り添ってもらいつつ、ぐっ!と悔しい気持ちを堪えて、自分なりにクールダウンしていく姿がそれぞれに多くなってきています。また、そうして気持ちを切り替えるまでの時間も短くなってきて、言葉でやりとりしてみようという姿も増えてきているように感じます。

少し経って、Rくんが、「ハイ」と持っていたレゴブロックをCちゃんに渡しにきてくれました。


Cちゃん、Rくんがブロックを持ってきてくれると「Sちゃんにも」と、まずSちゃん(2歳9か月)に手渡します。一緒に赤ちゃんのお世話ごっこで使いたかったようです。

なるほど…『こういうふうに遊びたいな』というごっこ遊びのイメージやストーリーをしっかり思い描いていただけに、どうしてもそのアイテムが欲しかったんだなぁ、とCちゃんの思いもわかった気がしたのでした。
Rくんが、ブロックを貸してくれようとしつつも うまく取り外せずに苦戦していると、「これ、取ろっか?」と、Rくんに聞いて外してあげようとするCちゃん。

Rくんも うん、と素直に渡して、うまく取れるかなぁ?というようすで眺めています。

さっきまでの攻防がウソのようです。(笑)

そのあと実は、CちゃんとSちゃんに2つずつブロックが渡って、今度はRくんの手持ちのブロックがなくなってしまって、一悶着あったのですが笑、同じようなやりとりをして、しばら〜くしたのち、最後はみんなで分け合って、遊んでいました!最後はちゃんと、誰かが譲ってあげる気持ちを見せたり、納得し合ったりして遊べるのが素敵です。

こうして、ケンカもたくさんするけれど、「待っていたらそのうちちゃんと貸してくれるんだな」「ちゃんと分かってくれるんだな」という体験が、けっこう、その後の子ども同士の関係によくあらわれてくるような気がしています。モノの貸し借りのやりとりを見ているとよくわかります。
何度ぶつかっても、大人の力を借りながらやりとりして、一度、そのお友だちと気持ちが通じ合う体験をすると、「この子はそのうち分かってくれる」と子どもなりに安心するのでしょうか。そうしたことの積み重ねで、それぞれの信頼関係が結ばれていくようにも見えます(もちろん、それだけではないと思いますが)。

(↑茶色の「麺」が欲しいYくん(2歳3か月)。取られちゃうのはイヤだけれど、それなら、お皿に取り分けるから待ってね、とYくんのぶんを取り分けるCちゃん。Yくんも、自分のぶんをお皿によそってもらうのを待っています。)

ぐんぐん組(1歳児クラス)の時期は、何かやりたいことや欲しいものがあるとき、まだ自分の気持ちを自分でコントロールするのが難しくて、ついお友だちのものを取ってしまったり、手を出したくなってしまったり…ということもたくさんあります。でも、子どもたちの姿を見ていると、やってはいけないこととか、どうすべきか、ということは、ほんとうは子ども自身がよく分かっているのだと思います。

分かってはいるけど、気持ちがまだうまくおさえられずに咄嗟にやってしまう…という感じでしょうか。大人でも、イラッ!とした気持ちを自分でコントロールして落ち着けるのは一苦労することもありますね。そんな 大人でも難しい「感情のコントロール」を、こんな小さな子たちが、子どもたちなりに一生懸命、体験して練習しているのだと思うと、涙ぐましい努力だなぁという気分になってしまいます。

だから、そんなふうに子どもの気持ちが爆発しているとき、一度ぐっと立ち止まって相手とやりとりしてみたり、ちょっと待ってみよう、と思えるために、大人がお手伝いします。
子ども同士の気持ちがぶつかったとき、何かが”正しい”とか”間違っている”とか”良い、悪い”とかを教えるのでなく、子どもの気持ちに寄り添って 一度クールダウンさせてあげながら、”子ども同士の関係を結んでいく”お手伝いをしているというイメージがあります。
やってほしくないことはしっかりと伝えたり、こうしたら?というアドバイスはしたりもしますが、あくまで、子ども同士の関係の つなぎ役 という気持ちです。
そして、子どものケンカは 案外、それぞれの子の思いの行き違いのようなこともよくあります。例えば、カバンを取り合っているとき、一方の子はこのカバンが欲しいけど、もう一方の子はこのカバンの中に入っている中身が欲しかったんだね…!など。言葉足らずだった部分を、大人がよく聞き取ってお互いに伝えてあげることで、解ることもあります。

子どもたちが忍耐強く、友だちとの間の葛藤やその先の喜びを体験しているのと同じように、大人にもまた根気と忍耐が必要です。子どもの気持ちに寄り添いながら、というのは、すごく時間がかかるもので、目に見えにくいものであるけれど、ふと気付いた時に、『こんなやりとりができるようになったんだ』とか『そんなふうに貸したり待ってあげたり譲ってあげたりするようになったんだね』とか感じる瞬間は、すごく嬉しくなります。子どもたちの体験してきたことの積み重ねは、そうしてふとした瞬間に感じることができるものなのでしょうか。

いま、小さなみんなが自分の身で全力で体験しながら学んでいる、葛藤や忍耐、相手と通じ合ったときの喜びや人への信頼感…というものは、きっとこの先ずっと、生きていくための力になっていくのではないかなぁ、そうであったら嬉しいなぁ、と願いながら、過ごしています。だからこそ、一つひとつのやりとりや出来事を、できる限り丁寧に読み取って、見守っていきたいと思っています。
1年後、5年後、10年後…そして、みんなが大人になったとき、どんな風になっているのかな。と、ときどき楽しみな気持ちで想像してしまうのです・・・が、気が早すぎるでしょうか😅

保護者主催の「子どもが幸せに生きていくヒントを見つけよう」

2024/02/17

今日17日午前中は姉妹園の「新宿せいが子ども園」で、その保護者と卒園家庭からなる「落四小学校区域の学童クラブを考える会」(代表・渡辺仁子)が開いたイベント「子どもが幸せに生きていくヒントを見つけよう」に参加しました。

まず「保育園を考える保護者の会」代表の渡辺寛子さんから、こども家庭庁の「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」が紹介されました。渡辺さんはその会合の委員でもあり「これから出されてくる色々な政策の大元はこの5つのビジョンに基づいているのになるでしょう」と。

続いて紹介された、この会に参加している方に事前にとったアンケート「子どもが大人に言われて・されて嫌だったこと」と「大人が子どもの時に言われて・されて嫌だったこと」の結果からは、本人からすると大人が過干渉になっている傾向が見られました。

それらを受けて、いわゆる「見守る保育」については、藤森平司園長から乳児保育における保護者の関わり方の話が、また元ソニー開発マネージャーで『パパだからデキる子育て術』の著者である鬼木一直・東京富士大学教授からは、見守る保育の意味についてのミニ講演がなされました(録画)。

さらに脳科学者でもある一人の保護者からの話題提供もあり、盛りだくさんの内容を踏まえてのグループディスカッションは熱のこもったものとなりました。

このイベントは、主催している会の名前から想像できるように、卒園したあとの学童のあり方を考える会ではあるのですが、子どもが幸せであるために、学校の在り方や学びのあり方も考えていこうという趣旨の内容になっています。就学前の学びと就学後の学びをつなぐ活動のあり方として、保育と学童の連続性を考えるための、いい機会になりました。

 

GT全国実践研究大会 初日

2024/02/03

保育環境研究所ギビングツリー(藤森平司代表)が主催する全国大会のために長崎市に来ています。初日の今日3日(土)は、午前中は施設見学(8ヶ所の保育園・こども園から選択)で、午後は藤森代表の基調講演と、菌ちゃん農法で有名な吉田俊道さんの記念講演でした。

基調講演では、いわゆる「見守る保育・藤森メソッド」の4つの特徴について、改めて説明されたのですが、新しいトピックスとしては「子ども同士のかかわりを大切にした保育」の中で、社会が狩猟採集社会から現代の情報社会に至るまでの変化(Society5.0へ向かう議論の中で)の中に、変わらないものがあって、それが「助け合う力」であることが紹介されました。また、5つ目の特徴として新たに「園庭」について取り上げられました。

九大農学部大学院修士課程を修了後、長崎県庁の農業改良普及員をしてきた吉田さんは、1996年に退職して佐世保市で「株式会社菌ちゃんふぁーむ」を経営しながら有機農業を始めます。最新刊の「微生物の力だけで奇跡の野菜づくり 図解でよくわかる菌ちゃん農法」によると、1999年に「大地といのちの会」を立ち上げ、生ごみや枯葉などで菌のいる土地を作って、野菜を育てる方法について、理事長として全国で講演をしています。

一番驚いたのは、肥料も農薬も一切使わないのに虫がつかないことです。本当に元気な野菜には抗酸化物質やビタミンCなどが豊富で、虫も食べることができないのだそうで、そういう野菜になる秘訣は「菌ちゃん」が豊富な土作りにあるとのこと。ぜひ、保育園でもやってみたいと思います。

 

ちっち組(0歳児クラス)保護者会~イヤイヤは行為主体の「自己コントロール宣言」

2024/01/26

マイケル・トマセロの最新刊「行為主体性の進化」を読み始めています。まだ第3章に入ったところだったのですが、ちょうど今日25日(木)の夕方、ちっち組(0歳児クラス)の保護者会で、あのイヤイヤ期を説明することになりました。0歳児クラスと言っても、4月や5月生まれの子は、入園したと思ったらすぐに満1歳になっているわけで、この1月の時期には春にはもうすぐ2歳になるという時期なのです。

そこで最近、無藤先生に学んた「遊びの定義」が私にとっては、とてもすっきりと合点がいっているので、私なりに遊び性として整理して活用(12月26日の「園長の日記」など)しています。いかにもう一度ご紹介します。

「遊びは思いつきをする楽しさと,そこから少し先の目標を立てて実現しようとする課題解決の充実感からなる。それは物事の可能性を知ること。私(無藤先生)の言い方では環境からの呼びかけに応えて、世界性へと開かれること。そして、そこでの目標を立てての課題解決の練習となる」

この遊び性(プレイフルネス)については、先日のお楽しみ会(幼児)の冒頭の挨拶の中でも、お伝えしましたね。この遊びの中で見つかる目標の中に、自分のやっていることを「見てほしい」ということが入ってきて、その目標を実現しようとして、もっと「合奏」をよくしたいとか、うまく人形劇を見せたいとかの「協同性」も育ってきたという年長さんの姿をお伝えしました。

それと同じように、赤ちゃんが「自分で!」なんでもしたがる時期をどう理解するかというときに「コントロール=制御」という、自分でしたがっている能動性の発露だと見てみたらどうだろう、という話をしました。

イヤイヤ期については2020年の1月中旬に(ちょうどコロナ禍が始まる直前ごろ)、保護者の方々とコーヒータイムで語り合ったことを思い出します。そのことを、何日かかけてこの「園長の日記」で、井桁さんや大豆生田さんや汐見さんの見解も色々と紹介しながら振り返ってありますので、参考にしてもらいたいのですが、これに無藤先生の遊び性の分析を加味して理解すると、私なりによく納得がいくのです。思いつくことも表象、再現、自己模倣と捉えることで、自己イメージの再現欲求を「遊びの中に生まれる達成したい目標」と考えれば、話が繋がるように思えるからです。

つまり、保護者会で説明したのは、こんな内容でした。

この時期になると記憶力もずいぶんありますから、世界から呼びかけられて、思いつくことは自分の中で湧き起こる過去の楽しい経験や感情もあるでしょうから、それをもう一度味わいたくて、「あれだ!」と思いついて、「自分で!」と思うんだけど、だから周りからの提案は「イヤ」なんでしょう。でもどうやったらその目標を実現したらいいのか、まだよくわからない。達成するための課題が見えていない。あれを味わいたい!自分でやりたいんだ!だけど、何をどうやればそうなれるのか、自分で発見できない!というジレンマ感、課題解決の筋道と結びつかない感覚、のようなものかもしれません。

その自分で、自分を制御したいという自律の欲求は、生態学的機制(バイオロジー)が、個体の心理学的機制(サイコロジー)で補完されていくのでしょうから、そこに自分で自分を制御したいという行為主体性(エイジェンシー)が見えています。イヤイヤ期はとても大事な主体性の第一歩ということでしょう。あの「イヤ〜!!」というのは、赤ちゃんの自己コントロール宣言なのでしょう。そう思ってあげてみませんか?

子どもにとっての同僚性という環境

2023/11/14

研修会の二日目(14日)は、高田馬場の研修会場で藤森代表の講義、実践発表、質疑応答です。テーマは「チーム保育」です。今年3回目の保育環境セミナーの総まとめになります。藤森代表の講義は「ヒトという環境 子どもにとっての環境 同僚性としての環境」という内容でした。チーム保育というのは、かなり前から提案されているものなのですが、私たちの保育グループでは次のように考えています。この考え方は、保育学用語辞典にも載っているので、そのまま引用してみましょう。

「習熟した保育者が、初任期の保育者とともに複数でチームを形成して保育にあたる体制。(省略) 藤森はチーム保育について、役割分担をしてともに保育することと定義し、メリットとして、子ども理解を複数の視点で行える点を第一に挙げている。近年は、チーム保育の基礎として組織文化が存在し、組織の在り方が保育の質に対して強い影響を与えることが示され、組織の一員としての保育者の成長を促すことを目指して園内研修の新たな試みが進めれている。」(中央法規『保育学用語辞典』(秋田喜代美監修169ページ)

今日の研修会では、実践発表として2園から報告されましたが、学級担任をやめ複数担任で保育をしている事例もありました。千代田せいが保育園では、年齢別のクラスとそれぞれに年齢別の担任がいます。ただ子どもの生活する空間は、それぞれのフロアを自由にどこでも行っていい、遊んでいいということになっています。子どもの発達や興味関心から活動が生まれうやすいようにしているからです。子どもが行った先に先生がいて、クラス担任を超えたところで対応することもあります。

チームワークを良くするために

2023/11/13

見学者に保育を説明することは、保育を振り返るきっかけになります。今日13日(月)はさいたま市と江戸川区から保育リーダーの方が見学に来られました。他人に説明していると、自分が知らないこと、分かっていないことに気づくことがあります。そして後で調べてみよう、という気になります。そして保育の場合「そもそも、どうしてそうしているのか?」「どうして、そう言えるのか?」が、よくわからないことがあるのです。今日は見学者の方と話合いになったのは、チームワークの在り方でした。

千代田せいが保育園は、社会福祉法人省我会が都内(八王子市・新宿区・千代田区)に4つ運営している認可保育園(うち2つはこども園)の一つです。その省我会の理事長が私の上司にあたる藤森平司統括園長です。その藤森理事長が作った保育研修団体「ビギングツリー」が、毎年4回ほど研修会を開いています。今年は7月9月11月の年3回「保育環境セミナー」になり、コロナ禍が終わって、全国からたくさんの保育者が高田馬場の研修会場に集まりました。その一環として、お互いに見学もしあっているのです。

毎回テーマが異なり、7月は「子ども同士・異年齢」、9月は「子ども主体」、そして今回の11月は「チーム保育」です。見学者の方と同僚性のあり方を、具体的に語り合えるのはお互いに貴重な機会になります。私はリーダーシップがあるならフォロアーシップも必要だし、そもそもメンバーシップを意識しているか、ということが大事だろうと思っています。省我会の保育理念は「共生と貢献」。それが子どもの成長にふさわしい経験になるようにチームワークを働かせたいと思います。

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