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2021年 2月

カーボンニュートラルと保育

2021/02/27

久しぶりに朝日テレビの「朝まで生テレビ」を録画で観ました。日本のエネルギー政策がテーマでした。政府は2050年までにカーボンニュートラル、二酸化炭素の排出をゼロにすることを宣言していますが、その道程は険しいようです。風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの割合を約5割に持っていくために、どこまで原子力発電に頼る必要が出てくるのか、専門家の意見は別れていました。原発を新設しないと無理という見立てと、なんとか他のものでやれるという見解がぶつかっているように見えました。

科学者という専門家の間でも意見が割れているところに、素人の私たち国民がどのように議論に参加したらいいのかというテーマは昔からあって、私は専門が理学部だったので柴谷篤弘さんの「反科学論」などを自主学習会で読み合ったりしていました。今はなき柴谷さんの主張は、これも私の理解と要約ですが「一般市民がわからないから議論に参加できないのではなく、わからないからこそ参加すべきだ。そして、だからこそ、わからない、不安であるという主張は正当な国民の権利だ」というものです。難しいから専門家の判断に任せるという姿勢が危ないというのです。1970年代後半の議論です。

このような社会学的知見に立てば、コロナ問題も政府は専門家会議は、複数のプランが出るぐらいの、意見の異なる複数の議論が主張されるぐらいの議論を公にしながら、政府がその過程を公にしながら議論が深まるようにするべきなのでしょう。政治にメタ科学的政策論が足りないのでしょう。

その頃、同時にハイゼンベルクの「部分と全体」もそのころ熟読したことを覚えています。手元にその本がないので不正確ですが、趣旨は「科学者はその発見の結果が及ぼす社会的影響まで見通すことができるからこそ専門家である」という、科学者の社会的責任論についての命題でした。これは核エネルギーが原子力爆弾という大量殺戮兵器に利用されたことを悔やんでいたアインシュタインの晩年を思い出します。イギリスの哲学者バートランド・ラッセルが米ソの水爆競争に危機感を抱き、核兵器廃絶運動を推進するために草起した「ラッセル・アインシュタイン宣言」に結実します。1955年のことです。

それから65年が経ちました。同じ議論が続いています。あまりにも科学技術の進歩が専門的過ぎて、そのリスクをよく理解することが難しい時代です。感染者数をどう受け止めるのか、ワクチン接種はどうするか、有事の備えとは何のことなのかーーー。今から30年度の2050年は、卒園児が35歳。そのころ、福島はどのように復興され、再生可能エネルギーはどこまで普及しているでしょう。

これらのテーマを保育から考えると、こうなります。危ないと自分で気づき回避する力を持とう。そのためには、どのようなことが危ないことなのかをしっかり体験しながら学ぼう。わからないことは当たり前だよ。どうやったらわかるようになるのか、知る方法を一緒に考えよう。そして、「わからないから教えて」という意見がとっても大切なんだよ。

物を買って使うときは、それが何でできているのか調べてみよう。もし綿で出来ていたら、綿ができる期間は使おう。住む家が材木だったら、その木が育つ期間は使おう。その和紙が植物の材料だったら、その植物が育つ期間は使おう。プラスティック製品はできるだけ買わない、使わないようにしよう。使い捨てはできるだけ減らして、永持する道具に変えていこう。食べ物は生き物が幸せに育っている動植物にしよう。・・いろいろな「善いこと」を分かち合って生活の中に取り入れよう。私たちの生活がどこから来て、どこへ向かうのか、大人と一緒に考えていこう。・・・保育に結びつけると、こんなことになるのではないでしょうか。

卒園児にウェルカム!と言える社会に

2021/02/26

(園だより3月号 巻頭言より)

昨年の3月と今年の3月で異なるのは、保育園が開園して初めて卒園児が旅立つことです。昨年度は卒園児がいなかったので、卒園式もありませんでしたが、今年は10人が卒園します。私から一人ずつに保育証書を手渡しします。受け取ったら「大きくなったら○○になりたいです」という夢を語ってもらいます。どんな夢が語られるのか、楽しみです。

私たちはどんな子に育って欲しいかと聞かれたら、「自分らしく意欲的で思いやりのある子どもになってほしい」と願っているのですが、子どもたち本人は「あれがいいなあ、こうなりたいなあ」と具体的な夢や憧れを持ちます。抽象的に「思いやりのある人になりたいです」とは思いません。お医者さんになりたいとか、花屋さんになりたいとか、ピアニストになりたいとか、サッカー選手になりたいとか、具体的に憧れている仕事や職業を思い浮かべるでしょう。そこで「保育園の先生になりたいです」という子がいてほしいなあ、と期待してしまいますが、それは今人気の職業が反映されていたりします。

変化の激しい時代です。卒園する子どもたちが実際に働き始める頃、世の中にその仕事が残っているのかどうかわかりません。反対に5年前に「You Tuberになりたい」が小学生男子2位、女子4位になる時代になるとは想像できませんでした。その調査では保育園や幼稚園の先生は女子で5位になっていました。どんな時代になっても、保育の仕事はなくならないでしょう。生活に必須の仕事を最近はエッセンシャルワークと呼ぶことが増えましたが、私はこんなに大切で有意義な仕事は他にないと心底、思っています。まだまだ世の中の認知や社会的な地位が高くありませんが、子どもたが保育士になりたいと思った時、周りの大人がそれを誇らしく感じ、応援したくなるような魅力的な職業になるといいのに、と思います。

やりたいことができることは幸せなことです。しかしそれが難しい。やりたいことは変化し、それが仕事になるとは限りません。市場経済で買われる市場価値を産まないと職業になりません。しかもその仕事が豊かな働き方になっているかどうかも別問題です。豊かな働き方とは自分で構想して実行できるような仕事です。誰かが全体を計画して、その一部を歯車のように部分的にやらされる仕事は意欲を失います。ひどい時は拷問のようになります。人間は働く意図や目的が社会的な意味を持つことを望み、それにコミットしているとき生きがいを感じるからです。

私たちが今実践している保育は、子どもたちが「現在を最もよく生きる」ことができるように工夫しています。それともう1つ育てているものがあります。それは「望ましい未来をつくり出す力の基礎」です。大人と一緒に望ましい未来をつくるメンバーの仲間入りを果たすことー。それが大人になるということです。年長さんがもうすぐ卒園します。私たち大人は「ようこそ!」と言える社会を用意しましょう。

睡眠講座で気づいた「おやすみなさい」の意味

2021/02/22

今日は16回目の睡眠講座が開かれたのですが、私は乳児の「記憶力」の発達にあった援助について学ぶことができました。6ヶ月ぐらいの赤ちゃんは、数日しか記憶がないそうで、1歳を過ぎていくと1ヶ月前のことも覚えているようになっていきます。すると「寝ているから気づかれないようにそっと寝かしてあげる」方法が通用するのは6ヶ月ぐらいまでで、それ以降になると記憶力が発達して、目が覚めた時に起きている時のことを思い出して「寝るつもりじゃないかった」子にとっては、目覚めると「起きようとしてしまいがち」だそうです。ですから、寝る前のことを覚えているようになる頃からは、寝るときに「おやすみなさい」とちゃんと声をかけてあげて、これから寝るんだよ、というメッセージを伝えた方がいいそうです。

睡眠講座は毎回「そうか、なるほどなあ」と気づくことがあるのですが、そんなことを考えていたので、次のようなことにも気づきました。

昼食を食べ終えて本や紙芝居を読んでもらうと、ちっち・ぐんぐんの部屋から、「父さん眠れ、母さんも、兄さん、姉さん、赤ちゃんも、ねんねしな、ねんねしな、ねんねしな」の歌が聞こえてきます。すると、歌い始めると、すぐに布団の方に移動するYちゃんや、最後まで聞き終えてから、立ち上がって布団に移動する子など、自分たちで自然と眠りに行きます。それこそ自発的なゴーツーベッドです。

これは毎日繰り返している習慣になっているからでしょうが、よく考えると、絵本や紙芝居という遊びから、歌を挟んで睡眠へ自ら気持ちが動いていく様子は、睡眠講座でも永持さんがポイントにあげていたことと同じです。それは「これから寝るよ」というメッセージを子どもにちゃんと伝えることです。保育園の場合は童歌ですが、それと同じような区切りのサイン、これから寝るよ、のサインをご家庭でも用いてみるのもいいかもしれませんね。

食事の後は絵本を読み、歌を聞いて眠りにつく。それぞれを声かけでやらせようとするよりも、それぞれが子どもにとって「好きなこと」を順番に並べてあげるという感覚で、毎日、同じ順番や流れを作ってあげるといいのかもしれません。

睡眠の質を良くする安心感と満足感

2021/02/18

月に2回のペースで開いてる睡眠講座「マムズサロン」は今日で15回目になります。今日は4月の入園が決まった保護者の方の参加がありました。子どもは成長していくにつれて、睡眠に関する課題も変わってきます。特に保育園での生活が始まると、家庭とは違った環境での過ごし方になります。家庭とは違う環境での「午睡」もあります。子どもの睡眠の質を良くするには「安心・満足」な気持ちで睡眠を迎えることができるといいでしょう。それは保育園の午睡も同じかもしれません。

保育園生活に「慣れる」には、次の3ステップが必要になります。まず、起きている時間に「遊び」を通してお友達や先生と仲良くなること。次に保育園の「食事」に慣れること。授乳や食事の味や食べ方も家庭と違うかもしれません。

そして、3つ目が「午睡」です。家庭と異なる場所で親御さんと離れて寝ることができること。こうやって、遊び、食事、睡眠のぞれぞれに違った「慣れ」が必要なことを感じていただけると思います。それぞれが「安心・満足」なら素敵です。そうなるとき、遊びも食事も午睡も、質が高い営みになることでしょう。睡眠講座では、毎回、睡眠インストラクターの永持伸子さんが、この睡眠の質を高めるためのコツを、詳しくやさしく説明してくださいます。

今日は夕方に雛人形を飾りました。子どもたちも綺麗な赤い布を敷いたり、人形を並べたりすることが楽しくて、せっせと手伝ってくれました。場所は昨年と同じ3階から屋上へ向かうところで、階段をひな壇代わりにしました。ただ、まだ完成していません。というのは、お手伝いをしてくれていた子がお迎えの時間がきて「やりたかったお人形を並べ終わること」ができなかったので、あえて五人囃子の楽器を手にするお供えを明日に残してあります。明日19日がお雛様を飾るのに、ふさわしい日でもあります。

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