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保育アーカイブ

ダンスで多様な体の動きを楽しむ

2023/08/30

保育の質を高めるためのアプローチの一つに、外部の専門家との協働があります。近所の海老原商店はアーティストの活動拠点になっていますが、そこで出会ったコンテンポラリーダンスの第一人者、青木尚哉さんのおかげで、保育にダンスを通じた活動が増えました。子どもは基本的に、体を動かすことが好きです。子どもたちが「十分に体を動かす楽しさを気持ちよさを体験し、自ら体を動かそうとする意欲が育つように」(要領・指針の「内容の取り扱い」)してあげたいと思います。

今年も7月から青木さんのダンスグループZERO(ゼロ)のメンバーが、来てくださり、全てのクラスで「多様な動きを経験する中で、体の動きを調整するようにすること」(同上)に広がりをもたらしてくれています。何よりも、私が感じるのは、プロの体の動かし方、なめらかな美しい身のこなしは、子どもたちにも伝わっていく気がします。今日は身体的なふれあいと併せて、赤ちゃんと見つめあったり、心のふれあいも楽しみました。今日のドキュメンテーションを、以下に紹介しましょう。

ちっち組(0歳児クラス)。二人のダンサー「いづみさんとももかさんの温かな関わりに心を許した様子の子どもたち。タッチしたり、どうぞをしてあげたり、ぎゅっと手を握り返したり…触れ合いを通して、心を通わせていました。」

ぐんぐん組(1歳児クラス)。「いづみさん達のダンスは決まった形や表現があるのではなく、子ども達が音楽と触れ合い、お友達や大人との関わりの中で自然と身体から溢れ出てくる表現を周りにいる人と共感しながら・・体を動かすことの楽しさを感じていけたらと思います」。

2歳児クラスのにこにこ組。「今日はいづみ先生とももか先生が来て下さり、ダンス表現遊びを楽しみました。 グーパー体操、ペンギン歩き、トンネル遊び、飛行機、お馬さん、走って抱っこ、ゴロゴロ遊びと、いろいろなメニューを楽しみました。少し緊張気味の子も、その様子を一緒に見たりしながら参加することができました。」

3歳児クラスのわいわい組の日誌には「Sくんは朝登園すると「ダンスやだ」と言っていたが、「やらなくてもいいよ、一緒にみてよう」と誘うと前向きにダンスに向かっていた。Rくん・Sさん・Lくんは「やりたくない」と初めは階段の所で見ており、その後はお部屋の中で見ている、端の方で参加してみる、と少しずつ近くで参加していた。Yくんは初めてのダンスだったが、前でやることを希望する等、積極的に参加しており、「合体トンネル」という新しい遊びを生み出した」とあります。

4歳らんらん組・5歳すいすい組の日誌。「今日は、いずみさん、ももかさんがきてくれて、らん・すいさんでダンスを楽しむ。気持ちが高揚していたのでダンスが始まる前は、わらすみんなでイス取りゲームを楽しむ。イスの取り合いでらんすいさんたちが、ヒートアップする場面もあったがリズムに合わせて存分に身体を動かせていた。ダンスでは、二人にリクエストする、らんすいさんが「マネキンやりたいー!トンネルやりたいー!」とやれる喜びを感じていた。」

子どもたちの運動はできるだけ毎日、全身的で、偏りのないバランスのとれた動きを大切にしています。ダンサーの方々との運動は、音楽やリズムも心地よく、頭から足先まで、美的なセンスも配慮した動きになっているのが子供たちにとっても魅力的なようです。

子どもの心が満たされて安心して眠ること

2023/08/23

昨日22日は8月の睡眠講座「赤ちゃんぐっすりねんねのコツ」があったのですが、私が担当している「お手伝い保育」との同時進行でした。この睡眠講座は、誰でも参加できる無料のZOOM講座で、子育て中の方、これから子育てが始まるかた、保育関係者の方など、本当に多くの人に聞いてもらいたい内容です。

その内容の中に、子どもは疲れて寝るだけではなく「安心と満足で寝る」というキーワードが出てきます。心が満たされて、また安心できるから、すやすやと眠りにつくことができるという話なのですが、保育園の午睡もそうありたいと思っています。その様子がちょうど、昨日の「ちっち・ぐんぐん」のブログに描かれていましたね。

お昼ご飯が済んで、子ども同士で戯れあって遊び、安心毛布を介した心の交流があり、外を眺めたりするのんびりした時間が流れていました。まさにくつろぎの時間。

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午睡前に、お友だちとふれあい、心も満たされた Sくんは、その後すぐにお布団に横になって、スーッと眠りに入っていきました。

お腹いっぱいになって、お友だちや大人と触れ合って、 心も身体も満たされて…それぞれの子が “心地よく眠りにつく” ための過ごし方や環境も大切にしていきたいです。

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子どもたちにとって「心が満足する」こと「心が安心すること」の姿を思い浮かべると、私たち大人も幸せになりますね。

朝から心身のテンションをあげよう

2023/08/21

このテーマは、世間ではあまりはっきりと言われてないかもしれませんが、かなり重要な事柄です。とにかく朝、スカッと目覚めて「よーし、今日も一日暴れまわるぞ〜」ぐらいであってほしい。これは大人も子どもも、です。とくに若くて元気なら、居ても立っても居られないぐらいでないと。子どもにも、そう思わせるような「面白いこと」が、朝からあるようにしてあげたい。テレビやゲームじゃなくて「心地よく体を動かすこと」になるように。

放っておいてもそういうふうになっていた時代や地域がどれくらいあったのかどうか。外遊びの三間(時間、空間、仲間)が減ったという話はよく聞きます。それはおそらく本当なのでしょうが、聞き取り調査だとすると、その大人が幼少の頃の記憶との比較だったりするので、本当のところはよくわかりません。でも食物を得るために、大人も子どもも、生きていくために必死で体を、動かしていたのは事実でしょう。それでも子どもの姿を見ていると、朝から体を動かすと、その後の姿が違ってくるというのは事実です。

運動で満足した後の次の行動への移り方、朝のお集まりの落ち着いた様子。話し合いも集中していて、姿勢や顔つきが違ってきます。

こんなに暑いと、ただでさえ汗が出てくるくらいですから、朝からあえて汗をかいてまで運動をしたいと思わないかもしれません。でもそれが大事なんですよね。暑くて汗が出るからといって、運動しないでいいということではありません。室内の温度は下げておいて、気持ちよく体を動かすこと。もし「暑い暑い」と言いながら、熱中症警戒アラートが発令されたからといって、散歩もなし、外での運動もなし、室内では机上遊び中心、なっていうことになっていたら、大事なことが見過ごされてしまうかも。

 

この夏、確か20数回目になる警戒アラートが発令された今日も、朝から運動しました。ワニに食べたれないように川の飛石を飛んで渡る遊びです。うまく渡ったらバルンポリン(バランスボールをトランポリンに載せて、それにまたがってピョンピョンと跳ぶ運動)を10回。その後、私がワニの口を開けたり閉めたりしている隙間を、食べられないように、タイミングを見計らってピョンと飛び越えます。

「ガブ、ガブ、ヒュー」など三拍子にしたり、四拍子にしたりしながら、ワニの口を開け閉めしていると、タイミングを覚えた子どもたちが、なかなか飛べない子に、そのタイミングを教えるようと、「今!・・・今!・・・今!」と、声を掛け合うようになります。こんな協力行動が自然と起きるのも、遊んでいて面白いです。

屋上でのプール遊びも同じ要素が盛り込まれます。ワニさん歩きを始めた子どもたちが、股のトンネルをくぐったり、ウレタンポールにまたがってお馬さんの「カッポカッポ」をしたり。

家でも運動はできます。まあ、ちょっとしたことなんですが、じゃれ遊びの類いと思ってください。難しいことは何もないでしょう。大人が子どもに体をよじ登らせたり、高い高いと持ち上げたり、腕や足をもってぐるぐる回したり、寝転がって膝の上で「ヒコーキ」をしたり、お馬さんや肩車をしたり、股や腕のトンネルを潜らせたり。幼児になると、体も重くてそうもいかないかもしれません。この辺り、ちょっと運動が家では少ないなあ、という方は朝9時ごろまでには登園させて、保育園で朝のエンジンを始動させててあげましょう。

木場公園で気持ちよく体を動かす

2023/05/24

今年度2回目のバス遠足は、江東区にある木場公園で前回と同じ。ただ前回は芝生が広がる原っぱで遊びましたが、今日は遊具のある「冒険ひろば」。この4月からの新入園児ら、ここの遊具が初めてのお友達もいるので、私も同行してその様子を見たり、実際に一緒に遊んできました。ここの公園は3〜6歳からの大型遊具の他に、2〜3歳も遊べるものもあるので、発達にあった遊びを選ぶことができます。

当園が初めての方のために、これまで繰り返しお話ししてきたことではありますが、少し当園の運動の考え方を説明します。すでにご存知の方も多いと思いますが、そうだった!ということがあるかもしれません。

当園の3階にある「運動ジム」は幼児期に身につけたい基本動作のうち、ふわふわした床で立つ、ハイハイする、転がる、寝転ぶ、棒状に転がる、逆立ちする、クライミングの壁に上る、よじのぼる、常設のネットにぶら下がる、綱にぶら下がる、ブランコで揺れる、トランポリンで跳ぶなどが日常的にできるので、皆さんには入園の見学などの時に「体のバランスがよくなります」とか「身のこなしが滑らかになります」と説明していますね。体幹がしっかりして、柔軟性や平衡性などがよく育ちます。基本動作だと言いながら、日本の住宅の中では、少し意識しないとやらない動きです。

今日のような公園では、それがさらに空間的にも広がり、走る、跳ぶ、飛び乗る、かけ上がるなどができます。滑り台で滑る、ツリー状のネットに登る、ターザンロープにつかまって滑空するなどを、何度も何度も楽しんでいました。前回の広場では、かけっこや鬼ごっこなど、それは身体的な大きな動き、加速する、ステップを踏む、身をかわす、しゃがみ込む、反転して走る、などの要素が盛り込まれていました。

外遊びは、晴れれば毎日行います。もうすぐ、プルも屋上で組み立て、浮く、泳ぐなどの動きも楽しみます。この頃にいっぱい体を動かして、身体的な運動による喜び、充実感を味わってもらいたい。体を動かすことが楽しいと思い、朝の睡眠からの気持ちののいい目覚めとつながってもらいたいと思っています。

わらべうたと音楽、リズムのある歌やダンスなどは乳児でも毎日でも、身体とのかっこよさやポーズをとること、体の仕組みへの意識づけ、身体的な表現などは6月からのコンテンポラリーダンスなどで楽しんでいく予定です。

そういえば随分前のことですが、NHKのお母さんといっしょの番組作りに、身体的な運動遊びに中村和彦さんが関わって36種類の動きが必要であることを知り、その表をクラスに貼って「こんな動きがあるかどうか」をチェックしていた時期がありました。その36種類は、早寝早起き朝ごはん運動にも取り入れられました。

今の園では、園庭がないこともあり、設計段階から室内でできる運動と、屋外でできる運動を分けて、乳幼児期に必要な基本運動は全てカバーするようにしています。そこで遊具がない児童遊園が多いので、何もなくても運動量が増える「鬼ごっこ」を積極的に取り入れてきました。それが「鬼ごっこのある街ちよだ」プロジェクトです。

ただ、その種類の運動をする絶対的な時間はまだまだ足りないでしょう。また三輪車に乗ったり、ボールを投げたり、バットを振ったりサッカーをしたり、ドッチボールのような道具や遊具を使った運動は、児童遊園ではできません。そこで旧今川中の校庭利用や近隣の園との交流をコロナ後は活性化させます。

そういう意味でも園庭があれば、朝夕にも遊べますが、当園のような環境では午前の限られた時間になってしまいます。そのためにも室内の運動ジムや屋上、ベランダ、川向かいの児童遊園などをこまめに使っていくようにしているのはそのためです。園舎全体を、地域全体を園庭にします!というのは、そういうことでした

「社会と共に子どもの睡眠を守る会」で再出発

2023/05/18

当園の園医さん、瀬川小児神経学クリニックの星野恭子医院長から、次のようなお知らせがあります。「子どもの早起きをすすめる会」が、「社会と共に子どもの睡眠を守る会」に7月に変わるそうです。その新しいホームページでの趣旨説明を以下に、またそれを記念して開かれるキックオフイベントの案内も併せて紹介します。

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http://www.hayaoki.jp/


20年前、私が瀬川小児神経学クリニックに勤務始めた時、世界的に著名な瀬川昌也先生が、21時までに寝るように、子どもと保護者に話しているのを聞き、「目が飛び出るほど」驚いたのを覚えています。「そんなことできるわけがない!」と。私が特別に小児科医として無知だったのかも知れません。
そんな私が、子ども達の睡眠の重要性に目覚め、以前から睡眠医療に尽力されていた神山潤先生、鈴木みゆき先生と一緒に2001年「社会と共に子どもの睡眠を守る会」を結成し「子どもの睡眠啓発」を始めました。文科省の「早寝早起き朝ごはん」国民運動が始まり、この20年で、子どもの睡眠の重要性に対する意識は格段に進歩したような印象を持ちます。
「子どもは21時には寝る」に「目が飛び出るほど驚く小児科医」は少ないと思います。今や誰もが専門家のように「子どもの睡眠」を語り、数多の情報が出ています。よく内容をみると、情報源は私達のこともあり、早起きサイトの主旨は浸透したのだな、と実感します。

「子どもの睡眠」は脳神経のみの問題でなく「子ども全てにかかわる」「大人の生活にも深くかかわる」こと、すなわち「大人の社会」の問題にも立ち向かって考えることなのです。

新たな会を立ち上げる理由は3つあります。

1.この約20年間で積み上げてきたエビデンスと培ってきたノウハウを後世に伝えたい、今まで同じ志を持って歩んできた大切な多くの仲間の絆を再度確認し、さらに新しい若い仲間につながりたい。「睡眠」を通して子どもの育ちを真剣に考えるあらゆる分野の先生方、医学、教育、保育、心理、社会学等、そして世代を超えて、時には国を超えて繋がりたい。
2.今子育てをしている世代、今子育てを支援している、子ども達に携わっている先生方に信頼性のある情報を提供したい。私達の会を通して、色々な専門家に出会ってほしい。「睡眠」を通して子どもの育ちの学ぶ機会を提供したい。
3.子ども達の眠りが疎かにされがちな昨今「子どもの眠りを守る」ための「同志」とともに、社会に働きかけたい
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(文責 星野恭子)

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キックオフイベント

http://www.hayaoki.jp/event.pdf

子どもに最も大切な「睡眠」をプレゼントをしよう

2023/02/24

最近、急激に変わった環境(夜も電気がついて明るく、テレビやスマホで、寝る直前まで光を浴び続けている生活など)に、私たちの睡眠サイクルの異変を含む生活リズムに変調をきたし、子どもたちの心身に大きな影響を与えているようです。オキシトシン、セレトニン、メラトニンなどホルモンの産生バランスも崩れて、午前中に元気よく遊びに入れない状態になりやすくなります。遊び込めないですぐに空きてしまう、理由もなく機嫌が悪い、ちょっとしたことでイライラしてしまう、午前中にぼーっとしてやる気が出ない、夜ふかしになってしまう。そうした傾向は、生まれた後の経験の結果かもしれません。そうした傾向は、毎日の生活習慣を変えることで、軽減される結果が明らかになっていることなので、私たちはそこを警戒しています。

そんな話はどこかで聞いたことはある、でも現実はそうも行かないから、あまり大したことはないだろう、という大人の意識が、子どもたちの心身に悪影響を与えているかもしれません。「その危機感の希薄さがとても気になります」というのが、当園の園医さん「瀬川小児神経学クリニック」の院長、星野恭子先生です。

http://www.hayaoki.jp/index.cfm

星野先生は「子どもの早起きをすすめる会」の代表でもあります。日本人の睡眠の質の悪さは有名だそうで、国際比較でもそうなっているようなのですが、それが子どもの生活リズムにも影響しているといいます。これは結構、由々しき事態かもしれないのです。小児神経学の世界では、睡眠と発達(障がい)の関係を詳しく調べています。しかしいくら政府(文部科学省)が「早寝早起き朝ごはん」運動を通じて、睡眠の質の大切さを訴え続けていても、夜遅くまでの塾通いや子どもの睡眠不足が大幅に改善されているようには見えません。それよりも、寝る時間を削ってでも勉強したほうがいいという考えが強くて、多くの大人は子どもが夜10時以降も起きている状態が脳に良くないことに、あまりピンと来ていないように、私には見えます。

保育園にいるときに、その誤った考え方を修正しませんか。早寝早起きをしたほうが、統計的には学力もいいという相関があるようです。睡眠の質は、学校の勉強や自分の探究心、粘り強さなどに影響するのですから、そうだろうと思います。自覚的に学びに向かう意欲や、内発的なエネルギーが出やすい状態になるのですから、その意欲的なコンディションづくりと習慣を小さいうちに作ってあげましょう。

今の私たちの脳や身体は、何百万年ものあいだ、変化する環境に結果的に適応したものが生き残った結果です。長い時間をかけて変化してきた私たち人類の心身。10万年ぐらいの長さでも、寒い地域から暑い地域まで地球環境の違いに応じて、その自然環境に応じた皮膚がこれほど変化したのですから、チンパンジーとの共通先祖から約800万年の長い時間をかけて変異して環境に適応した私たちの特徴は、それだけの根深いものなのでしょう。確かに大きく生活環境が変わっても、私たちの身体は、その影響を大きく受けるものと、さほど受けないものがあるでしょう。

しかし、大きく影響を受けた結果の一つが、睡眠サイクルだと精神科医の専門家たちがいいます。夜も電気で明るいという生活は、つい最近のことなので、脳や身体はそれに慣れていないようです。テレビやスマホやタブレットから出ている人工的な光は、それまで人間が経験したことのないもので、長時間の利用や寝る直前までの視聴が、光への依存と覚醒を促し、睡眠サイクルを歪めています。日没と共に「夜は真っ暗」だった何百万年もの時間。その悠久の時間をかけて進化してきた(環境の適応してきた)私たちの身体と脳。それが急激に変わった生活環境の影響で、身体が異変のアラームを発しているというのです。

その危機感から、当園は開園した令和元年秋から、「睡眠講座」を開いてきました。今日は今年度20回目のズーム講座で、お二人のご家族が参加してくださいました。そして「瀬川小児神経学クリニック」にお勤めの睡眠衛生指導担当の永持伸子先生から「ぐっすりねんねのコツ」をたくさんお伝えしました。

「睡眠は借金や負債は溜まるのに、貯金(寝貯め)はできない!」「オキシトシンが出やすい、ダラダラした時間を5分でもいいから寝る前にもとう」「子どもは疲れて寝るのではなく安心と満足から寝る」「昼寝を含めて11時間になればいいというのは大きな間違い」「昼寝をするから夜寝ないということはない。昼寝をしても夜は寝る、役割が違うからです」「8時半には布団に入って朝7時にはカーテンを開けよう」「帰宅から就寝までの逆算マネジメントを」「晩御飯を凝りすぎない。軽く済ませて大丈夫」など。

子どもが9時までに寝てくれる生活づくりは実現可能です。保育園の保護者の多くの方が、それを手にしています。大人は子どもが寝た後に自分の時間を持てます。これも大きなことです。夕方6時までにお迎えができれば2時間あれば、十分に睡眠にまで誘うことができます。それはヨーロッパの睡眠先進国がやっていることです。日本だけができない理由はないのです。それを信じてやってみましょう。子どもは健康になり、貴重な午前中のゴールデンタイムが毎日、充実する1日を子どもにプレゼントしましょう。怪我も少なくなり、充実した時間になります。自分からいろんなことができるようにイキイキとした活動的な振る舞いに変わっていきます。親が乳幼児期の子どもにやってあげることの中で、これほど大事なことはないと、私は思っています。

自立の姿(その5)衣服の脱ぎ着

2022/03/05

(90度が4か所あるのが、お分かりでしょうか)

 

「先生、やって」「ああ、いいよ、向こう向いてごらん」

3月4日の子どもクッキングで、エプロンの腰紐を自分で後ろ手で結べないので、やってほしい、というのです。私は「ああ、いいよ」と、やってあげるモデルを見せるつもりで、そうしますが、先生によっては「お友達にお願いしてみて」と、子ども同士の助け合いの体験へ導くような返事をすることも多いです。

それはともかく、小学校中学年以降ぐらいになると、エプロンの紐を後ろで蝶結びできるようになるかもしれませんが、幼児では無理です。そこで大抵は、結ばずに済むようにゴムにしたり、マジックテープにしてもらっています。頭の三角巾も四角の状態から自分で被ることは、幼児ではまずできません。最初から三角形のゴム紐付きにしてもらっています。マスクも、どっちが上なのか「これでいい?」と聞いてくる子もいました。今のマスクは鼻を覆う方が少し窪んでいるデザインのものがあるのですが、その微妙な違いを見分けるのも、幼児では難しいのです。

衣服を着たり脱いだりすることができることは、衣服の着脱の自立といいます。昔、よく身辺自立といういい方で基本的生活習慣の自立のことを、そう呼んでいました。自分ものは自分で始末できる、というフレーズもよく使われました。身辺とか始末とか、けっこう強い語感の言葉が保育では使われていました。自分のことは自分で始末しなさい。生活力の鍛錬にも似て、訓練することが自立の秘訣かのように言われていました。身辺自立ができていないと幼稚園にはいけません。そんな雰囲気があった時代もあります。確かに、30人を一人担任で見るような教員配置の制度のままで(いい加減、無理な配置数はとっとと改善したらいいのに)、身の回りのことが自分でできないと、集団生活が成り立たない、そんな考えが保育の前提に横たわっていたのです。

人間が衣服を使うようになったのは、体を保護すること、体を清潔に保つこと、暑さや寒さの加減をすることなどの必要性からです。その目的を考えれば、現代では生活環境は安全なものになり、お風呂に毎日入ることができ、衣服も洗濯して常に清潔であり、部屋の温度も機械でコントロールできるようになり、衣服の役割は、この保護、清潔、保温などの役割を超えて、別の価値が付加されきました。

オリンピックの開会式などを見るのが、私は好きなのですが、何が面白いかというと民族衣装が登場する国や地域があるからです。でもウクライナのキエフの駅で戦火から逃れる人たちの報道を見ていると、怒りから胸が熱くなります。戦争は命も食糧も剥ぎ取り、衣服でさえままならない状態へおいこむ、惨たらしい卑劣な行為です。プーチンよ恥を知れ!

園児たちは、自分の服を見せてくれます。「ねえ、これ可愛いでしょ」と、今日はこれだよ、と見せてくれるのが朝の挨拶になっている子もいます。「うん、可愛いねえ」と心を通わせてにっこり。一度靴箱に入れた後で、通りかかった私に、わざわざ「待って」と声をかけて、買ってもらったばかりの靴を見せてくる男の子もいます。これらは最高の朝の挨拶ですね。このように装飾的服装つまり衣装の意匠の役割が大きくなりました。ミッキーやキティや鬼滅やシンカリオンが子どもたちの衣服に欠かせないものになっています。

そこで、話を衣服の着脱の自立の話に戻すと、これらを自分で着たり、脱いだりできることができやすいものにしていただきたいということです。頭の大きさに比べて首回りが小さいと子どもの力では頭が通らない、という光景を何度も見ます。体の大きさに比べてサイズが小さくて、右腕は通ったものの、左袖に左腕が通らない、ということもありました。夏の水着はぴっちりしすぎていて、ほとんどの子が自分では脱ぎ着できません(これは仕方ないかな)。

ボタンホールは大きめですか。窮屈だと、それだけて「できな〜い」に、なってします。

例えば、市川宏伸さんの著書にも、次のような説明がありました。

〈・・ぜひ育てていきたいもの。そのためには人との比較ではなく「自分としてはここまでできたから凄い」と思える「成功体験」が大切です。小さな事では、自分でボタンがかけられない子なら、ボタンホールの大きな服に変えて上手にボタンがかけられたならこれも1つの成功体験です。苦手な事は手伝って、1つでも成功体験を増やす丁寧な対応が必要です。・・〉

靴の脱ぎ着も、自分でできるようになるには、自分でやりたい!という時期がきたらチャンス到来です。時間がかかっても、じっと待ってあげられる、余裕を持った時間配分をお願いします。身支度の時間というものを、生活の流れの中に確保してあげてください。できないところは手伝ってあげても、最後の「美味しいところ」は自分でやれた!、履けた!という気になるような援助がいいでしょう。

ジャンバーのチャックは下の始まりのところが難しいことが多いです。手が届かないこともあります。水筒も襷にかけることができるようになってほしい。紐が外れると自分でつけることができないことも多いですね。紐の長さの調節はこの幼児で無理なようです。また後で物の取り扱いのところでも触れますが、押して開く栓が固くて、自分では開けられない、という場合もあります。購入するときには、子どもと一緒にやってみて、自分でできそうかどうかも試していただくといいかも知れません。

これは単純に自分でできるようになることが、周りの大人の手を借りずにできるようになるから、周りの大人が助かる、ということ以上に大事なことがあります。それは実は、自信がつくのです。それが明らかに伝わってくる瞬間というものがないだけに、本当?と思われるかもしれませんが、満2歳になっていく前後から、なんでも「自分で!」という時期がきます。この頃からの発達課題にとっても、やってみてできるようになることが、生きる力そのものを育てている面があります。そう思って、排泄や衣服の自立を気長に見守ってあげてください。

幼児になると、自分でできること、お願いすればいいことの判断がつくようになりますから、もう大丈夫ですが、そこに至るまでの「自分で!」の時期は、子育ての我慢比べになることもありえます。どうぞ、大人がおおらかさと心の余裕を確保することを、セットで用意しておきましょう。(余計な話かも知れませんが、細かいところに気づけないのがお父さんですが、この場合のお父さんはお母さんの話をちゃんと聞いてあげてくださいね。)

自立の姿(その4)排泄

2022/03/04

(写真は、今日の子どもクッキング「野菜の型抜き」から)

トイレに自分で行って排泄ができるようになることを排泄の自立、といいます。いわゆる「おむつが外れる」ということです。世の育児雑誌の三大テーマは、昔から食事、トイレ、イヤイヤ期と決まっていて、それだけ親御さんの関心が高い、あるいは困っていることがある、とも言えるのかもしれません。トイレットトレーニングが子育てメディアでは盛んなのですが、トイレの空間に興味を持たせるとか、怖がらないようにするとか、この夏紙パンツに挑戦!だとか、アレコレ、いろんなアイデアが紹介されています。オマルに慣れてから大人用の便器へ、だとか紙オムツよりも布の方が外れやすくなっただとか、情報が多すぎる気がします。

排泄の自立に欠かせないことは、私は次のように伝えてきました。これが排泄の自立の姿だからです。

〜自分で「あ、おしっこ!」と気づき、ちょっと我慢してトイレに行くことができる〜

「あ、うんち!」でも同じですが、この気づいて、我慢できるというところがポイントになります。何に気づくかというと尿意、であり便意というものですが、これに気づけるようになるのは、2歳から3歳と幅があります。サインが脳に届いても、それが便意だという意味になるのにも、知的な発達がある段階にまで育たないと認識できません。さらに「あ、おしっこ」と、したくなってから、トイレに行くまでにある時間がまんできないといけないので、こちらも自分の意思で尿道をふさぐ随意筋を動かすことができるまで、身体的な育ちがなされていないといけません。

他にも色々な身体的な育ち、神経系の育ちなどが相まって、排泄が自立していくようになります。でも、基本はこの二つのことが繋がって初めて排泄が自立できるのです。そしてこの発達には個人差が大きいので、いつはは必ず二つのことが繋がって、ある意味で突然、できるようになります。そうすると、この条件が揃っていない段階で、練習やトレーニングでそれが育つのかというと、それは無理です。知的発達と身体的発達が揃わないと排泄は自立しないので、どっちかができないと難しいということになります。

そこで、この自立の秘訣は、楽観的に待つこと。ただし、保育園の園児は有利です。なぜなら、その「あ、おしっこ」でトイレへ行く、という姿やモデルが周囲にふんだんにあるからです。またオムツをしている状態が普通なので、それに引け目を感じるという空気も皆無です。おむつが早く取れることが良い、と考える文化はありません。オムツはそのこのペースで、必ず取れる。ただそれを信じてあげているだけです。大人が気をつけることは、できもしない時期に無理にさせようとして、子どもにコンプレックスを持たせてしまうこと。できるはずのことが自分はできない、と思い込まされると劣等感から自信が持てなくなります。

食事や排泄は動物も行う自然な営みです。それを上手に、きれいに、という人間社会の文化的営みとしての「しつけ」に格上げしないといけないので、その文化的行為への適応には個人差が生じ、ただ「一人ひとり異なるから、それで良い」で落ち着けはいいのですが、情報化社会は、自分の子どもは遅いのかしら、とか大丈夫だろうか、と無用な心配をさせてしまうような環境になっていることが、困ったものです。

食べたら出る。当たり前です。あとはタイミングを自分で図ってできるようになること。そこにもリズムがあるので、特に大便のリズムは生活の中で作ってあげるようにしましょう。習慣にしてあげると体も意識も楽になりますから。

自立の姿(その1)睡眠

2022/03/01

新年度まで残すところ1か月。今日から3月になって「移行保育」も遊びから食事、睡眠へと移ってきました。その報告がクラスブログでなされていますが、今日から少し「自立の姿」というものを、その子どもの姿からお伝えしようかと思います。私たちは子どもの姿を5つの領域で捉えることを「成長展」にちなんでお話ししてきましたが、自立という姿を捉えるときは、生活の領域で捉えるとわかりややすいと思います。子どもの生活が、どんなことで成り立っているかというと、大体は遊びの他に、食事、睡眠、排泄、衣服の着脱、清潔、身近なものの扱い、あいさつなどからなります。これを一つずつ取り上げてみましょう。まずは、睡眠から。

生活の自立がなぜ「睡眠」から始まるのかというと、実は起きて活動するための条件を整えている時間が、睡眠だからです。睡眠がしっかり取れていないと、実は生活が自立できなんです。ですから、基本的な生活習慣や、小学校以降の「自覚的な学び」のためにも、「早寝早起き朝ごはん」が欠かせない必須条件になっているんです。意識して何かができることの前提条件のようなものです。うまくエンジンがかかるためには、ガソリンが必要なように、モーターが動くには電気が必要なように、生活が自立していくためには、夜の睡眠の質とリズムがどうしても順調である必要があるのです。

そこで睡眠の自立、というのはどんな姿かというと、まずは「無意識にそうする」ようになること。言い換えると「習慣」になることです。体が覚えていて、黙っていても、自然の流れでそうしていくようになることです。これは睡眠に限らず、食事も、排泄も、衣服着衣も、顔を洗ったり、歯を磨くことも、ルーティンの流れに沿って、毎日同じように体に染み付いていくようになることがいいのです。そのためには、まず大人がそれぞれの「自立の姿」を知っておくことが、そこへ導くためにも大事なことになります。

睡眠の場合、どんな習慣になるといいのかというと「寝るタイミングになったら自分で布団へ行き、安心と満足の気持ちの中でぐっすり眠り、朝になったら気持ち良く目覚める」ということです。自分で布団に入って寝て、自分で気持ち良く目覚める。寝つくことも、目覚めることも「自分から」という流れを作ってあげることが、本人にとっても親にとっても、ストレスのない愉快な生活づくりに繋がります。自然のリズムの中で生活することは、生活が充実してくるものです。

そのような睡眠に導くコツはどこにあるのかというと、リズムづくりの起点(スタート)は、朝7時前には目覚めるように、カーテンを開けること。光を浴びることです。これで脳の中の体内時計Aが「リリリ〜ン」と目覚めます。それだけでは、まだ本当には目覚めません。次に全身の細胞の中にある体内時計Bも目覚めさせる必要があるのですが、それはどうやったら起きるかというと、食事をとることです。朝ごはんは、しっかり目覚めるためにも大切なのです。これによって、午前中の生活、戸外活動、遊びが充実してくることになります。それが16時間後に眠くなるタイミングを誘発してくれます。

ここで、お昼寝の自立ですが、「お昼寝は夜の睡眠のための準備運動」という言い方があって、お昼寝は夜の睡眠とは意味も役割も違います。大切なのは夜というタイミングにしっかり10〜11時間の連続した睡眠が取れることにあります。そうなるために、昼の午睡があるのです。午睡と夜の睡眠の時間を足して10時間あればいい、と考えると間違えます。午睡はこの10時間の中には含めてはいけません。役割が異なるのです。午睡は真っ暗にしないで、オルゴール音がするような環境で行います。

保育園では乳児の午睡では、お昼ご飯が済んで、お昼寝に入る前に、絵本や紙芝居を読んであげて、心をもみほぐします。寛いだ気分で、あくびでも出そうな雰囲気の中で、お昼寝に入る歌を歌ってから布団へ移動します。この歌が合図になって、ちっちさんも、ぐんぐんさんも「自分で」布団の方へ移動します。さあ、寝よう、などという言葉は聞いたことがありません。ルーティーンが決まっているので、自然に体が動きていく感じです。眠りにつくまでには、個人差がありますが、少しさすってあげたり、そばにいてあげたりして、眠りに誘います。

にこにこ組になると、この寝かしつけも無くしていきます。ちょっとそばにいてあげる程度で、自分から布団に入って寝るという自立が完成していくのです。基本的生活習慣の自立、は満3歳を目安にしています。移行保育が終盤を迎えているこの時期、1年前、半年前と同じではありません。「自分で」という部分が自動化して、体が覚えているという状態にしてあげていくのです。

アキバ分室で初めての睡眠講座

2021/09/01

9月1日(水)、今年4月に万世橋にできた「子育てひろば」で、初めての睡眠講座を開きました。講師はお馴染みの永持伸子さん。子育てひろばは、基本的に毎週水曜日の午前中に開かれているのですが、そこでいつものようにZOOMでリモート講座を開きました。ただパソコン画面をプロジェクターで映し出し、音声もスピーカーで流して、そこへ赤ちゃんと一緒のお母さんたちが、一緒に講座を受けることができるようにしてみました。

会の始めに会場の方から睡眠のことで聞いてみたいことを尋ねると・・

「夜の授乳をそろそろ終わらせたいのですが、どうやったらいいですか」とか「昼間のお昼寝はどんな状態が好ましいのですか」など、いろいろな?(はてな)がいっぱいでした。

多くの人にこの講座のことを知ってもらうためにも、感染対策を講じた子育てひろばで開催してみたのですが、睡眠講座を開いてみると、はやり「対面」のよさが分かります。画面越しでは伝わりにくいコニュニケーションがあることがよく分かります。ただ、コロナ禍や距離を気にしないで済む、家から参加できる、夫婦で一緒に参加できるなどリモートの良さもあります。

今年度前期は9月7日(火)と21日(火)で一旦終了します。リピーターの方もいらっしゃいます。子どもの成長に従って睡眠のポイントも変わります。気軽に何度でも参加してみてください。お申し込みは千代田せいが保育園のメール(c.seiga@chiyodaseiga.ne.jp)までどうぞ。

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