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絵本(保育アーカイブ)

ドキドキ・冷や汗・絵本で涼をとる

2023/06/23

私が「せいが文庫」の本棚でバーコード入力していると「何しているの?」とよく聞かれます。「スマホでね、保育園にある絵本のリストを作ってるんだよ」というと、「ふ〜ん」とよく分かんないけど、生返事をくれます。やってみる?というと即「うん!」。まったく便利な時代なりました。絵本についているバーコードにスマホを掲げるだけで、蔵書ができるアプリがあるのです。保護者の方にアプリのダウンロードから使い方まで手取り足取り教えてもらいました。現在250冊ほどを、この2週間ほどの間に、セッセと登録。時々、何してるの?という子どもには手伝ってもらいました。

そんな時「これ面白いよ」と「これ好き」とか、教えてくれます。たいてい、そこで「読んで」と頼まれることになるのですが、そうか、この子はこれが好きなんだ、とわかって楽しいのです。というわけで、今日の絵本タイムは「子どもたち推し」の4冊。

まずは『えんそくごいっしょに』。泥棒たちが、それとは知らない刑事たちから、一緒に遊ぼうと誘われて、泥棒たちが冷や汗をかきながら付き合わされるというお話なのですが、あの遊びがまた、刑事が得意な「かくれんぼ」や「鬼ごっこ」という設定が面白いのです。すぐに見つかるし、捕まるのです。ドキドキ感が楽しみ、蒸し暑い夏に冷や汗をかきたい時にオススメ?。

こちらは子どもが「それ、怖いよ」と教えてくれた一冊。

屋上の野菜が毎日のように採れています。新鮮なうちに野菜は食べようね。でないと、野菜たちがこんなになったらかわいそう。カボチャの頭の裏側が黒くなっている場面が出てくるのですが、そういうのを見たことあるかなあ?と思って聞いてみたら、何人かから「腐ってるんだよ、それ」「黒いのはカビ」と知ってましたね。お話のラストは、実際にそうしてみるといいんですよね。食べられなくなっても、土に戻るとまた芽が出てくるということを体験してみる。

(最近はそれができないように品種改良された種が増えているので、その比較をやってみるのも面白い)

3冊目の「どろだんご」は、ビー玉のようにピカピカで固いどろだんごをどうやって作るか、子どもたちの「どろんご魂」に火をつけるために役立つ一冊。この本を薦めてくれた男子も、改めて「そうだったのか」という顔つき。こちらも泥水遊びで冷んやり感も。

最後はご存じ「かぐやひめ」。なんとなく知ってる!という子が多いのですが、5人の求婚を退けていくあたりの冒険譚は子どもは飽きるのですが、月に戻っていくときのお別れの場面は見入っていました。七夕がもうすぐですが、月にまつわるお話ではこちらも欠かせない一つでしょうね。

絵本は読んであげると「知ってる〜」と言っていた子たちが、また改めて手にしてめくっていたりする姿も。面白いですね。

ともだち・親密さ・愛情

2023/06/16

「今日は何読むの?」と午後のおやつが終わると事務室に年中のTMくんがやってきました。「新しい絵本、これまだ読んでないから、これにしようかな。ともだちや」。私がそういうと、彼は待ちきれなさそうにニコッとして2階へ戻って行きました。3〜5歳が一緒なので絵本選びと楽しみ方に工夫がいります。最初に、どの年齢にも理解しやすそうな「くまのコールテンくん」から。デパートという言葉が分かりませんでした。そうか。この絵本、今一緒に働いている20代の保育士が小さい頃大好きだったそうです。この絵本や「どうぞのいす」などが好きだったという人は、保育者に向いている気がします。

内田麟太郎のこのシリーズも、楽しい。今回はお友達がテーマのものを選びました。1時間100円、2時間200円という売り文句が最後はただになるのですが、さてどこまで通じたか?

たまごやき、となっているけれども、おはなしの中では目玉焼きです。というものめだまやきの「黄身」がおしゃべりだからね。最初のけらいが何人も挨拶にくるところは、人形劇かペープサートにしてみよう。そう思いながら端折って劇画風に展開しました。「あ、うん」と私が読むと、子どもたちは真似して、一斉に「あ、うん」というようになって、楽しかった。きっとお家でも、「あ、うん」はやりたがりますよ。

時間になったけど、もう一冊読んであげたかったのがこれ。最後まで食い入るように見入っていました。絵の表情だけで子どもに気持ちが伝わっていく絵本。子どもたちはこんな絵本が大好きです。

むかしばなし・なき声・想像力・仲間

2023/06/10

本当は今年度第1回の「園長の絵本タイム」で読んであげたかった絵本「だいくとおにろく」。昨日第4回でやっと登場です。松居直(ただし)さんが日本の昔話を再話した名作です。絵は「ももたろう」「スーホの白い馬」の赤羽末吉。赤羽は松居に採用されて絵本画家になったが、デビュー作は「雪国を描きたい」とのいう希望から生まれたという「かさじぞう」である。その時50歳。先週の台風の話をしながら、昔は大雨になると川の橋が流されたりしていたんだよ、この話も橋が流れて困っていたら鬼が端をかけてくれた話だよ、と言って読み始めました。

昔話をどう工夫して再話にしたのか。「めだまをよこせ〜」の台詞を大袈裟にやりました。そして森の中で聞こえてきた「子守唄」は、本当の子守唄にして唄ってあげます。そして名前をあてられて、消えてしまうエンディングのあっけなさ。そこの余韻をどう読むか。松居・赤羽コンビによる言葉と絵の共演です。

さとうわきこといえば「ばばばあちゃん」シリーズでしょうけれど、こんな絵本もあります。ピヨピヨとなくひよこが出会う動物となきごえを「ごりかえっこ」。可愛いひよこが、カエルの「ゲロゲロ」やぶたの「ぶうぶう」となくので、そこを、ちゃんと間を持たせて強調して読むと、聴いている子どもたちは、なんとも愉快そうな顔をします。その表情が可愛かった。わんわん、と吠えられて逃げ帰るネコの表情もいい。

「おうちで犬飼っている人?」と聞くと、誰も声が上がらず、その代わり「(お友達の)○◯ちゃんが飼ってる」と教えてくれました。犬じゃないけど、金魚や虫を飼っていると話し出すと大賑わいになり、それがみんなのペットなんだね。園長先生がみんなのうちのペットになったら、ちゃんと世話してくれるかなあ? 3冊目は「もしもぼくがよそのうちのいぬだったら」。いぬの「ぼく」の想像の世界の筋立てが、ちょっと難しいんので、ゆっくりと解説しながら読む。内容的には年長以上むきの絵本だけど、間違えてワニに食べられてしまうとか、伝わると3歳でも部分的に楽しい。

最後は、もっと単純に、3回繰り返しのお話の王道「とんとんとん」。年長のNさんが選んでくれました。ドアの窓越しに頭が少し見える「仕掛け絵本」にもなっているチャイルド社のオリジナル配本絵本。最後にケーキを食べるシーンになると「誰の誕生日?」と聞く子も。たくさんのお友達、大家族のように仲間と食べ物や生活を共にすることの喜び。暮らしの原点がこのようなお話の中にあります。こういうのは何歳でも楽しめる。

しりとり・図解・ユーモア

2023/06/02

グリコ!が流行っているので、しりとりもきっと好きだろうということで、聞いてみたら大好きでした。そこで「しりとりのだいすきなおうさま」。絵を見ながらクイズのように名前を当てていきながら読みました。大ウケです。この手の絵本は、私は紙芝居のように、また子どもたちと問答しながら、楽しみます。

2冊目は、幅広い年齢で楽しめるように、かこさとし作品から「あさですよ よるですよ」。最近、食事の下拵えのお手伝いで「そらまめ」の皮むきをやっていたので、そら豆くんの家族のお話にしてもいい?と聞くと「いいよ〜」と興味津々。細かい描写のひとつずつを丁寧に確かめるように見ていきました。

絵本は文字がなくても楽しめることがよくわかる絵本。かこさとしさんも私と同じ理系ですが、世界を分解してよくわかるように絵本にするという図鑑的な絵本もたくさんあって、立派なサイエンスになってますよね。

最後は、今日でお別れのお友達もいたので「げんきでなあ〜」と楽しく言いたくて、これにしました。

「かなしいはなしです」のユーモラスな感じがわかると、もう年長さんだなあ。ここにも10の姿があるんだけどなあ。面白い話です。

絵本を読んであげながら

2023/05/26

5月26日の園長の絵本ダイムには松岡享子さんと松居直さんのを用意しました。お二人が対談をした古い記事を、この園長の日記で紹介したことがあります。まだお元気なころのお二人。そのお二人がもういないことを思い出しながら、「おふろだいすき」と「だいくとおにろく」を読もうと用意しました。

このような絵本は親子で、あるいは少ない人数で読むほうが、その子の理解や気持ちがわかって楽しい。というのも、その架空の世界のなかに没頭する度合いは、それぞれだから。また、その入り込んでいる感覚をそばで感じ取りたくて。あるいは、その「ああ、どうなってしまうのかなあ」とつぎの展開へ心が奪われていく感覚をより濃く一緒に共有したくて。そして最後は・・・ああ、よかったね、と戻ってくる幸福感。その世界をいっしょに味わったという安心と満足の共有感覚。これがあるから絵本は楽しい。そう思います。

でも、今日実際によんだのは「おふろだいすき」と、どうしてももう一回やってほしいというので前回も読んだ「かえうたかえうたこいのぼり」。もう一冊は「電車がいい」というので「がたんごとん がたんごとん」。「だいくとおにろく」はまた今度ということに。

松岡さんは幸せな絵本の時間をとても大事にされたし、松居さんは、子どもの世界の未知への広がりを切り開いた方。その貢献は実に心からありがたい。そうだ、お二人の特集を近いうちに組もう、せいが文庫で。

園長による絵本タイムを設けてもらう

2023/05/19

今年も園長による絵本の読み聞かせタイムを設けてもらいました。子どもと接する時間を持ちたくて、毎週1回金曜日、夕方の時間に、子どもたちに絵本を読んであげます。絵本は子どもがどんな風に受け止めているのかがわかって楽しい。できるだけいろんな種類の絵本を選んで、想像の世界を広げてあげたい。

今日選んだのは、こどものとも「ケロケロきょうだい」。もうすぐ、水遊びの準備を始めるので、7人のカエルが冬眠から覚めて気持ちのいい池を探すお話から。年中向きぐらいの新作。同じく、どろんこの沼を愛するこぶたのお話アーノルド・ローベルの名作「どろんこぶた」。

こちらは1971年学校法人文化学園からの発行。ローベルのこぶりのお話シリーズは、現代に置いてけぼりを食らった感があって、影が薄くなっているけど、お話というもののバリエーションを感じてほしくて。ちっちゃい面白さ、とでもいうのか、子どもによって時々ここが面白いんだ!の発見がたまにある。どろんこぶたをはじめ、絵本は<居場所探し>のモチーフがけっこうある。

3冊目は、日本の昔話から「きつねのおきゃくさま」。このような、ちょっと意外性のある結末に、子どもは「え!」「どうして?」という表情で見入っていた。こういう絵本は、あまり解説をわたしは入れないことにしています。最後は気分を変えて、明るく石井聖岳(きよたか)「かえうた かえうた こいのぼり」。こういう言葉あそびも子どもたちは大好き。ゲラゲラ笑って、おしま〜い!

「ハリーがちょっと可哀想だった」

2021/07/21

私たちは子どもに対して、他人に優しい子になってほしいと願うことが多いわけですが、どうやったらそうなるのかと考えると、他人の気持ちを想像できることや、他人の立場になって考えることができるようになることだと、心理学では述べています。では、どんな時にそんな気持ちを想像したり、考えたりするかというと、他人のはずの相手が親しみを感じるような存在になった場合です。実生活の中では、家族や友達ということなのですが、人との繋がりが少ない幼児期には、実生活だけで親しい他者を多く保つことは難しいものです。

そこで威力を発揮するものが良質な絵本です。今日の「園長の絵本タイム」では、嬉しい感想が飛び出しました。4歳のAさんが「ハリーがちょっとかわいそうだったなあ」というのです。そうです、「どろんこハリー」が真っ黒になって、家族の誰からもハリーだと気づいてもらえないからです。ハリーは「ねえ、僕だよ、ハリーだよ」と伝えたくて、健気にもいろんな芸をするのですが、家族はおかしな犬だなあ、と行ってしまいます。そこに子どもたちは「ハリーが可哀想だった」と思うのです。

実はどろんこハリーの前に、先に「うみべのハリー」を読んであげたのですが、ハリーが最後に家族と一緒に大きなパラソルに入ることができるまでに、海藻まみれになってハリーと気づかれないどころか「お化けが出たあ」と怖がられたり、カゴで捕まられそうになってしまったりと、可哀想な目に合うのは「どろんこ」と同じです。気の毒な目にあっても最後は家族に暖かく迎えられるというハッピーエンドも同じなのです。このような物語を通して、他者への優しさが育つのだとしたら、絵本の力は大きいと感じざるを得ませんね。

絵本「ようこそ うみ」へ、ようこそ!

2021/07/14

こんな絵本の楽しみ方は、どこにも書いてないと思うのですが、今日やってみました。プロジェクターに絵本を映し出して、子どもたちと会話しながら、絵の細部を拡大して、確かめながら読み進めたのです。そしたら、かなり受けました。

どうしてそんなことをしたのかというと、絵本がそうしてほしいと訴えていたからです。絵本は、文・中川ひろたか、絵・村上康成のゴールデンコンビによる『ようこそうみ』。

大人2人と子ども8人が砂丘のような丘を駆け上ると、そこに海が開けていることに「おーっ」と驚いたり、サンダルを集めて空に放り投げたら、サンダルやビーチボールが雲に引っかかったり、それを取りに雲に乗って遊んだり・・・こんな他愛のない話なのに、子どもたちはゲラゲラ笑って大満足!ナンセンスなおかしみって、とにかく子どもの心をくすぐってやまないのでした。

 

 

今週の「ちょっといい話」

2021/07/10

月曜日。梅雨の長雨で被害を被られた方々は本当にお気の毒でお見舞い申し上げます。その梅雨のせいなのか、神田川側のベランダにカニがお目見え、一旦は玄関の水槽を用意したのですが、狭いところは嫌なのか出ていってしまいました。初めてカニを見た乳児もいました。また来てくれるでしょうか。

屋上のひまわりが咲きました。

和泉橋からよく見えます。このひまわり、昨年咲いたひまわりの種から育ちました。神宮司さんが、せっせと世話してくれたものです。ちょっとした清涼剤ですよね。

カブトムシくんたちも、子どもたちに大事なことを(身お挺して)プレゼントしてくれています。

私だって触れるも〜ん。(左指にご注目^_^)

季節感のある保育園にするには、生き物たちが教えてれてくる季節が一番ですね。

火曜日。アキバ分室の子育てひろば担当の松本さんが来園。永持さんの睡眠講座、アキバ分室でも開くことになりそうです。

子どもたちが作った色とりどり「風鈴」は、いろんなアート技法が取り入れられていて、和みます。

それを見つめてくださっていた親御さんたち。叶えてあげたいなあと寄り添う大人の優しさを感じました。

水曜日。7日の七夕では、笹の葉に願い事がいろいろ。幼な子の思い、きらきらと宝物のようにゆらめいて輝いていました。

絵本タイムは、『としょかんライオン』を読んであげました。

最後の「走ってはいけません」が、どう届くかな?と思ったのですが、子どもなりにウィットが理解できるようになってきたかもしれません。

木曜日。夏の水開きの日でしたが、屋上の野菜もどんどん大きくなっています。

「これな〜に」の指の先には、なす、きゅうり、すいかの花が咲いていました。

(ナスの花)

(キュウリの花)

スイカもぐんぐん大きくなってきました。

園で育てたものではありませんが、とうもろこしの皮むきを楽しんでいる様子は、クラスのブログでご覧ください。

金曜日。林修(はやし・しゅう)さんの作品「チェンソー」が玄関に展示されました。

海老原商店で展示されたものです。扉の廃材がアート作品に生まれ変わったものです。

子どもたちにも「美」の思い込みを揺さぶる「じわじわ効果」があると、いいな。

土曜日。今年1番の暑さ。東京ビエンナーレ開催。園児のMKさんと一緒に尋ねてきました。

詳しくはまたレポートします。

賞状を玄関に展示しました。6月に発表した、東京都社会福祉協議会保育部会の研究大会への貢献です。

絵本の読み聞かせ「ケロケロきょうだい」「めっらもっきら どおん どん」

2021/06/30

物語のある生活には、同時に「想像力」が働く時間が増えていきます。教育のことが話題になるとき、創造力が求められることが多いのですが、実は、その前提にあるのは「想像力」の方なのです。そして、その想像力とは、言葉の定義からして「目に見えないものを思い浮かべることができる力」のことですから、それは子どもが得意とすることであって、どんな時にそれが起こっているかというと、物語の中で自由に心と体を動かしているような時なのです。そんな思いがあって、私は絵本の世界と時間を大切にしています。どんな読み聞かせ方がいいかとか、作者の意図がどうとか、そう言うことも大切なことは私も大学の授業で学生たちに説明しているのですが、しかし、いざ実践となると、そこは相手=子どもの実態があるわけで、ほとんどが定石通りにはなりません。

今日の絵本タイムは福音館書店の「こどものとも」から3冊を選んでみました。暑い夏を前に、池を探す冒険に出るカエル7人きょうだいのお話「ケロケロきょうだい」と、出鱈目な歌をうたうと、もんもんびゃっこ、しっかかもっかか、おたからまんちんのいる世界にワープしてしまう「めっきらもっきら どおんどん」です。どちらも、代表的な物語の特徴を踏まえており、こどもたちの心は、スーッと吸い込まれてしまうのでした。

人がどこからやってきて、どこへ行くのか、という人生のグレートクエッションは、それが永遠にわからない謎であるからこそ、人間の探究心をかき立ててやまないものです。いにしえの伝説にしても神話にしても、そして現代の絵本の物語にしても、底流にあるのはそうした謎をめぐる人生の何か、なのです。それを子どもたちは、子どもや動物の主人公になりきって、襲ってくる敵や妖怪や魔物との遭遇という形で、人生の暗喩を味わっているのです。

といった話は、こちらの醍醐味であって、子どもは単純にお話を楽しんでいます。でもその距離は大人が思っている以上に「近い」という感触をいつも感じるのは、面白い実践の味です。

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