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絵本(保育アーカイブ)

子どもも「いいから いいから」が口癖に・・

2023/12/22

今日はこんな絵本を読むよ、と3時のおやつの前に紹介しておくと、希望者だけが夕方の読み聞かせに集まります。選択制にすることで、聞きたい子だけが来るので私も子どもも過ごしやすく一体感のある空間になります。そういう空気感の違いに敏感なのが保育者でしょう。そこには心理的な無理がなく、面白くて楽しい空間になりやすいのです。

今日用意した絵本は2週間前に好評だった『いいから いいから』のシリーズの第二弾。温泉旅行に現れたおばけが、なんでも「いいから、いいから」と気にしないおじいちゃんに誘われて温泉にはいり、マッサージまで受けて・・・という奇想天外なナンセンスストーリー。子どもたちには、これが楽しいようです。

なんでも「いいから いいから」というようになります。読んでいて前に立ち塞がる3歳児の子に、私が「座ってみようね」と促しても、なかなか座ってくれない場面があったのですが、年長の子にすかさず「いいから いいから」と言われてしまいました。

クリスマスのお話も一つ『ねずみのフィピップ ぼくがサンタクロースだったらね』。これも「ちよだせいが文庫」の今のサンタ特集に追加しておきました。

そのあとは、年中のIRさんの強いリクエストによる『パンダ銭湯』。彼女が最も面白いと思うところは、パンダの目の周りの黒いところが、サングラスだったというところ。隠れていた、ちょっとこわい菱形の目が出てきて、その顔がおかしいらしい。そこが推しで選ばれました。耳の黒がワックスだった、というのも奇天烈で、年中ぐらいになると、そのおかしさにハマるようになるようです。

民話「とりのみじいさん」が意外と好評で

2023/12/15

絵本の読み聞かせをしていると、子どものその絵本への好みの差を感じます。読み終わった時に、前に座っている子がその絵本を「ほしい」といって、取り合いになることがよくあります。今日はめずらしく民話「とりのみじいさん」でそうなりました。

誤って飲み込んでしまった小鳥の尻尾がおへそから出て、それを引っ張ると世にも不思議なヘンテコなオナラがするというお話です。いいいおじいさんと悪いおじいさんが出てきて、いいおじいさんは宝物などをもらって幸せになるのですが、いじわるなおじいさんは、痛い目にあうという、昔話によくあるパターンの一つです。

絵本の人気度はお話の展開の面白さもそうですが、絵の力や言葉遊びの面白さなどにもよります。今日読んだのは(株)教育画劇の「日本の民話えほん」シリーズからですが、絵は長谷川知子さんで、人の表情が優しくてユーモラス。またオナラが調子のいい唱え文句になっているので、読む前からそこだけ声を出して覚えてから、お話を読んであげました。絵本の中の唱え文句や面白いリズムのある言葉は、子どもたちも大好きです。こういうものも身につけてしまう子どもたちの吸収力というものに、いつも感心します。

それにしても、昔話や民話は、語られている時間の間だけに存在する(小沢俊夫)ものだったのが、こうして絵や文字を伴う絵本として語り継がれていると言う事はありがたいことかもしれません。と同時に、それだからこそ読んであげている時間を大事にしたいと思います。

おたまじゃくしの101ちゃん

2023/11/11

絵本の読み方はいろいろあっていいのです。私の場合は、その絵本にふさわしい読み方をしています。今日10日(金)は、かこさとし「おたまじゃくしの101ちゃん」のリクエスト。事前に2歳児クラスの子も参加するというので、ざりがにとたがめが戦うところでは、読む前にさっと作った紙人形も登場させて読んであげました。

この絵本の場合は、紙芝居を読んであげている感覚に近く、子どもたちが後で劇として遊び出す可能性もあります。だんだん仲間意識が強まっていく年長さん後期ぐらい、つまり今頃になると、こういう話がちょうどいいかもしれません。また最近は散歩でザリガニ釣りに行ったり(実際にはできなかったのですが)、1階でカエルを飼っていたりしているので、少し身近な話にもなったようです。

不安・勧善懲悪・好みの違い

2023/09/24

ちょっと古い絵本だからどうかな?と思ったけど、予想以上に子どもはシーンと話に引き込まれ、深い沈黙が続いた。しみずみちを作・山本まつ子絵『はじめてのおるるばん』。22日金曜日夕方の園長の絵本タイムのことです。

出版は1972年で、当時、岩崎書店が「母と子の絵本シリーズ」と題している絵本30冊のうちの冒頭に置いた1冊。「身近なドラマ、新しいファンタジー」と銘打っているシリーズの代表作のような扱いになっている。この絵本は3歳のみほちゃんが、一人でおるすばんするお話だが、読む前に「おるすばん、したことある?」と聞くと、6人ぐらいから手があがった。

ウェキペディアには、この絵本についてこう書いてあった。「別視点からは、日本の高度成長期に伴い構造的に変化した社会背景(核家族化、生活共同体の崩壊等)が作品を通して感じ取られ、絵本においてエポックを画した作品である」と。こども家庭庁ができ、こども基本法のもとに「こどもまんなか社会」を再構築しようとしている今、この視点から絵本を見ておくことは大事な気がします。

あと数個なっていたピーマンを屋上から収穫してきて、みんなに匂いを嗅いでもらう。さくらともこ作・中村景児絵の「グリーンマントのピーマンマン」。ジェンダーによる差別には敏感なつもりなのですが、こういう話は男の子の反応がいい。バイキンをやっつける格闘シーンには、笑いが溢れた。この手のお話は、ウルトラマンやアンパンマンのように子どもたちにウケがいいのですが、我らが正義の味方が悪を懲らしめる、という、いささか「子どもだからって、こんな単純でいいのか?」と思わないではない。たぶん、子どもなりにすでに「嘘っこの世界」として割り切れる力が働いているのでしょう。

3冊目はマリー・ホール・エッツ。といえば「わたしとあそんで」が有名だと思うけど、『モーモーまきばのおきゃくさま』というのもある。他人に喜んでもらいたくてやったけど、相手は気に入ってくれなかった。そういう経験は子どもにもあるはず。誰でも大事にしていることや好みは違う。保育園の保育目標は「自分らしく、意欲的で、思いやりのある子ども」だけど、「自分らしく」は、みんな違っていい、ということ。それを確かめ合うことも大事だろう。

この絵本を読み終わった時、キョトンとして「ぜんぜん、面白くない」と不満げだった男の子もいました。「そうか、ごめんね」と私。お話が期待していたことと違ったね。それも子どもなりのダイバーシティ。いいと言われている絵本がみんなにとっていいとは、もちろん限らないからね。

 

私は前の園で映画「こどもかいぎ」を撮影してもらった時に、状況を変えることで引き出されてくる「思っていることや考えていること」が変わるという経験をたくさん見出しました。それは当の子どもたちもそうで、いつも一緒に遊んでいるのに「こんなに考えが違うとは思わなかった」といった趣旨のことを言った子がいたのです。それを思い出しました。

最後は、これ。ハッチンスの『せかい一わるいかいじゅう」。弟くんが生まれて周りの大人の注目が集まることに、お姉ちゃんとしてはさびしい。一番を競うのも、注目を浴びたいのも、親の愛情を獲得するのも、子どもには競争になってしまう時もあるんですよね。

子どもの心に届く絵本

2023/08/18

この時間を楽しみにしている子たちが多くて、絵本の持つ力をあらためて感じます。3歳の男の子が「これ読んで」と頼まれたのは『ふたごのおばけ』。「これにしていい?」というと、大勢が「いいよ」と返事してくれたのでそうしました。小学生の男の子二人が主人公なのですが、登校すると朝寝坊してしまったおばけふたりを発見し、それ以来、二人のけらいになってくれるという話です。

絵本を読んであげた後で、その絵本の取り合いになってしまうことがあります。今日は絵本『にじいろのさかな』でそうなりました。お話はしあわせがテーマです。銀色の鱗を身につけた虹色の魚は、他の魚たちにとって羨望の的なので、「一枚ちょうだい」とお願いされることがあります。でも、とんでもない!と拒否していたら、一人ぼっちになってしまいます。そして知恵あるタコに悩みを打ち明けると、幸せになれる方法を教えてもらえ、その通りにやってみるとー。

取り合いになった子の一人は「スイミーの時と同じぐらい(よかった)」と言い、少し頬を紅潮させて「気持ちがポカポカする」とつぶやいた子も。幼児の中でしばらくブームになりそうです。

時間が少しあったので、絵本「つきよ」。みんなも「たぬきさん」みたいに、お月様を探して見てね。形を変えて、ビルの間とかいろんなところから顔を出してくれるからね。・・・月を眺めて風流さを感じるのは日本ぐらいという俗説がありますが、きっと子ども流の風情もあることでしょう。

かっぱのてがみ・なつのおとずれ・かいすいよく

2023/07/28

千代田せいが文庫から、夏らしい絵本を3冊。「かっぱはね、水の中でしか読めない文字を書くんだって」。そんな不思議がアクセントになっているお話「かっぱのてがみ」。水につけると文字が浮かび上がるというのは、科学遊びでよくあるものですが、絵本を読みながら、実際にそれをやってみました。洗剤を溶かした水で、紙に筆で「このひと かわではくえん うみでくえ」と書いておきます。お話のその場面で、「本物を見てみようか」とかっぱの手紙を取り出して水につけてみると、あら不思議。文字が浮かんで見えました。(ちょっと薄かったので見えにくかったのですが)。

2冊目は「なつのおとずれ」。身近な暮らしの中にある、扇風機やメロンやスイカやセミやカブトムシなど、いろいろな「もの」が「夏がきそうだ」「くるね」「呼ばれてる」と感じ取り、大急ぎで夏に向かって走り出すというお話。その夏の訪れを「もの」たちが、俺たちの出番だと張り切っている、いきいきとした躍動感がガツン!と楽しい。

これ読んでと頼まれた一冊が「ぐりとぐらのかいすいよく」。浜辺に流れてきた瓶の中には、地図が入っていて、そこにいく途中でうみぼうずに出会って泳ぎを教えてもらうお話。海に囲まれた日本。子どもの頃からかいすいよくの体験ができている割合はどれくらいなんだろう?日本のまちづくりも海との接点をもう少し暮らしの中に見出したい。自然は厳しいものですが、もう少しだけ、優しく楽しめる空間にならないものか。そんな気にさせてくれる絵本です。

おとまり・くらやみ・かくれんぼ

2023/07/21

先週、年長のお泊まり会があったのですが、その余韻を楽しむべく、絵本はお泊まりにちなんだもの。まずは文・中川ひろたか、絵・村上康成コンビの絵本シリーズ「ピーマン村のおともだち」から『おとまりのひ』。子どもは意外とあっけらかんとお泊まりができてしまうものでして、等身大の保育園らしさを感じる絵本です。親が子どもを案じる気持ちが明るく描かれ、ユーモラスな園長のキャラが楽しいシリーズ。八王子市のせいが保育園では、まさにこれと同じような銭湯に入っていたことを思い出します。

 

2冊目は末吉暁子作、林明子絵の「もりのかくれんぼう」。むかし森だった場所がいま団地になっている街角で、おにいちゃんとけっこしているうちに森に迷い込むと・・・。森の中にはよく見ると動物たちがいっぱい隠れているのかも。かくれんぼして遊びたかった女の子の気持ちが、ちょっと切なく伝わってくる絵本。

その次は、こども園を舞台にした「くらやみえんのたんけん」。お迎えを待つ、つとむくんとたくくんの二人が真っ暗な園内をおばけごっこで楽しんでいるうちに・・・。嘘っことわかっていながら怖いことをやりたがる子どもの心理。どこまで本気で怖がっているのやら、そのたわいのない、その演劇的あいまいな世界を楽しめるのも子どもの特権だ!(まあ、なんと古臭いキャッチだなあ)。

さて最後は海外ものから。「ひとりでおとまりしたよるに」。こちらは、おばあちゃんのお家に3泊4日で泊まりに行く話。だから、寂しさを紛らわすための、大事な宝物を3つリュックに詰めました。リュックに詰めたものが子どもを助けると言うのはエルマーと同じですが、こちらは夜の冒険が始まります。大人がよむと子どもの家族愛にちょっと心打たれるおはなしです。

絵本の語りが夢の世界へ誘う

2023/07/07

今日はうさぎの二人がいかだを浮かべて海水浴に行く話「ピッキーとポッキーのかいすいよく」から始めたのですが、こちらは、途中でいたずらなタコが出てきて、うさぎの二人やもぐらのふうちゃんを放り投げたり、溺れそうになったふうちゃんも助かって、噴水のように水を噴き出したりするので、おかしくて笑いながら楽しんでいました。

2冊目は子どもの「これがいい」というリクエストから「ねずみのよめいり」だったのですが、「これお家にもある」という年長の女の子は「おしまい」と言って終わると、思ったよりお話は「短かった」そうです。この辺りまでは、お話に熱中していたのですが、3冊目ごろになると、だんだん子どもたちも眠くなってしまったようです。

あれ、静かなエンディングだなあと思っていたら、子どもたちはどうも眠くなってしまいました。わらしべ長者の話を聞いているうちに。そういえば、今日は昼間に水遊びをしたりして疲れていたようです。そういうお話しの聞き方(聞いていないけど・・)もまんざら捨てたもんじゃないと思うのは、昔からおじいさんやおばあさんから聞かされてきた素話も、きっと囲炉裏でも囲んでうつらうつらと、意味もよく分からず、ぼんやりと聞いていたこともあっただろうと思うからです。

落語の絵本「じごくのそうべい」ほか

2023/06/30

いやあ、今日も面白かった。恒例となってきた「園長の絵本劇場」。今日の絵本は5歳児から渡された「じごくのそうべい」ほか2冊。いずれも子どものリクエストで決まりました。3歳児からは「ねこガム」4歳児からは「コッコさんのお店」。3歳、5歳、4歳の順にやりました。

ご存じ「じごくのそうべい」は落語が元ネタですから、面白くないわけがない。軽業師のそうべえは、綱渡りに失敗して落下、地獄に落ちてしまいます。火の車で三途の川にたどり着くと、山伏のふっかい、歯ぬき師のしかい、医者のちくあんと一緒に、えんま様に地獄行きを言い渡されたて、さあ大変。昔話風の奇想天外な話の展開に子どもたちは引き込まれていきました。迫力満点の絵は田島征彦。第1回絵本にっぽん賞受賞の絵本です。

私は落語家になったつもりで、テンポ良く「とざい、とうざい。かるわざしのそうべえ、一世一代のかるわざでござあい」と、臨場感あふれる、わかりやすい解説付きで話を進めていきました。

この手の本は、子どもによってハマると、その場面を何度も味わいたくて「また読んで!」となりがちなお話ですね。リクエストした子は、にこにこしながら笑っていました。

ねこガムは、ふうせんガムの風船が猫になって反対に吸い込まれそうになっていく、子どもが思いつきそうな瞬間芸的なナンセンスファンタジーで楽しい。この愉快さを子ども共有するのは、ちょっとした共犯関係ができていくみたいな面白さを感じます。落語にしても、この手の話にしても、絵本は堂々と日常からの逸脱を許してもらえるという意味で、精神衛生上も「ええもんですなあ」・・・。

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